ロシアによるウクライナ侵攻の宗教的背景
24日未明、ロシアがついにウクライナへの軍事侵攻を始めたとの報道がなされた。現地メディアによると、既に、民間人を含む多数の犠牲者が出ているとされており、刻々と明らかになってくる緊迫した情勢に予断を許さない状況となっている。
ウクライナの首都キエフは、9世紀後半から13世紀半ば頃に栄えた「キエフ大公国」を源流とする都市であるが、実は、ウクライナのみならずロシアもまた、このキエフ大公国を地政学的なルーツとして捉えている。実際、「ロシア」という名称自体も、キエフ大公国に由来する名称だと言われている。
さて、このキエフ大公国を作ったのが、カトリック教会でも聖人として崇敬されているウラジーミル一世である。彼がキリスト教を国教として導入し、信仰を基盤に据えた国政改革を行ったところから、キエフ大公国の権威が大きく上昇し、最盛期には、北は白海から南は黒海、西はヴィスワ川の源流から東はタマン半島まで、東スラヴ民族の大半を束ねたと言われている。
そんな、ウラジーミル一世が洗礼を受けキリスト教を国教と定めた場所が、2014年にロシアがウクライナ領土を侵攻し、併合したクリミア半島である。ロシア人にとっては「聖地」といって過言ではない場所であり、自国の領土としたい背景もこうした宗教的な理由にある。そして次に狙われているのが、国家のルーツたる「首都キエフ」である。
ロシア・プーチン大統領は、こうした宗教的にも地政学的にも、国の源流にあたるウクライナが、徐々に欧米寄りになっていくことがどうしても許せなかったのかもしれない。
しかし、言わずもがな、紛争を解決する手段として戦争や武力の行使に訴えることは許されざるものである。国際社会は結束して、こうしたロシアの暴挙に対する制裁を加える必要がある。今後の動きを注視していきたい。
(text しづかまさのり)
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