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「心を騒がせない」ということ〜英国女王エリザベス2世の訃報に触れ

9月8日、英国女王エリザベス2世が96歳で亡くなった。在位期間は1952年の即位から数えて、英国史上最長の70年。これは世界の歴史を紐解いても、フランスのルイ14世(在位1643年〜1715年の72年)に継ぐ記録となる。しかも健康状態が悪化していたとは言え、亡くなる2日前まで公務を全うされていたとのことで、その突然の訃報は全世界に驚きと悲しみをもって伝えられた。

葬儀は、英国王室とも関係が深いイングランド国教会(聖公会)のウェストミンスター寺院において執り行われ、TV中継されたその模様を2,800万人ものイギリス国民が視聴したという。また、エリザベス2世が亡くなる直前となる9月6日に英国首相に就任したリズ・トラス新首相による聖書の朗読も話題になっている。彼女が朗読したのは「ヨハネによる福音書第14章1~9節」の「心を騒がせるな。神を信じなさい」から始まるエピソードである。

「あなたがたは、心を騒がせないがよい。神を信じ、またわたしを信じなさい。 わたしの父の家には、すまいがたくさんある。もしなかったならば、わたしはそう言っておいたであろう。あなたがたのために、場所を用意しに行くのだから。 そして、行って、場所の用意ができたならば、またきて、あなたがたをわたしのところに迎えよう。わたしのおる所にあなたがたもおらせるためである。 わたしがどこへ行くのか、その道はあなたがたにわかっている」。トマスはイエスに言った、「主よ、どこへおいでになるのか、わたしたちにはわかりません。どうしてその道がわかるでしょう」。イエスは彼に言われた、「わたしは道であり、真理であり、命である。だれでもわたしによらないでは、父のみもとに行くことはできない。もしあなたがたがわたしを知っていたならば、わたしの父をも知ったであろう。しかし、今は父を知っており、またすでに父を見たのである」。ピリポはイエスに言った、「主よ、わたしたちに父を示して下さい。そうして下されば、わたしたちは満足します」。イエスは彼に言われた、「ピリポよ、こんなに長くあなたがたと一緒にいるのに、わたしがわかっていないのか。わたしを見た者は、父を見たのである。どうして、わたしたちに父を示してほしいと、言うのか。(新約聖書/ヨハネによる福音書第14章1~9節)

これは、ユダによる裏切りにより祭司長に引き渡される際、イエス・キリストが語った言葉である。「どんな苦難があっても、心を穏やかにして、信じているものを、信じ続けていくこと」、弟子達がその言葉に大きな勇気を与えられたのと同じく、大きな支柱を失い不安や悲しみに暮れるイギリス国民にとって、これほどまでに勇気づけられる言葉は他にはない。「国葬」という場に相応しい聖句によって、エリザベス2世を見送る事が出来たのではないだろうか。

他方、日本で予定される安倍元首相の「国葬」は、心を穏やかにするどころか、世論を二分するような泥沼の様相を呈している。なんとも残念な話である。「国葬」の是非はさておき、ひとりひとりが「心を騒がせない」で、故人を偲べるようにと願いたいものである。

尚、今年6月にエリザベス2世在位70周年を記念して公開されたドキュメンタリー映画が、現在各地で追悼上映されている。この機会に是非、映画館に足を運んでみてはいかがだろうか。

映画「エリザベス女王陛下の微笑み」
詳細:https://elizabethmovie70.com/

(textしづかまさのり)

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