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人魚姫のお話

頭を撫でられたり、手を繋いで、繋いだままでいること。それが、わたしみたいな日陰者にとって赦しだった。初めて触れられたとき、ゆるされた、と思った。人間として存在することを。

昔から生身の人間に触れることが苦手だった。小学生の頃から図書室に逃げ込んでいた。逃げ込んだ図書室の中でも、本の中、知らない人間たちの愛が展開されていた。
思えばこの段階で、自分が一生愛されないかも知れないことを自覚していたのかもしれない。教室に居られないとかそんな狭い範囲での話じゃなくて、世界に居られないように感じる孤独があった。その世界での孤独からの逃げ場所を、私は世界に見つけることが出来なかった。

大人になってもそれは消えてくれない。言葉を使って貴方に寄り添おうとしても、言葉じゃどうにもならない距離があって、それを飛び越える方法が分からなかった。目を逸らそうとして逃げて逃げて、もっともっとひとりぼっちになってしまった。

水の中では音がくぐもって、外の音がよく聞こえない。生きること自体が水の中に一人沈んでいるような感覚で、小さな頃に読んだ御伽噺を思い出した。

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