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B'zはどのようにコロナ禍を乗り越えたのか

 2023年、デビュー35周年を迎えたB'zはライブツアー『B'z LIVE-GYM Pleasure 2023 -STARS-』を開催、多くのファンがライブ会場へ足を運びました。2020年〜2022年の3年間は新型コロナウイルスが世界中で大流行、今までは当たり前にできていたことができなくなり、エンターテイメントの世界もその影響を大きく受けました。当然、これまでライブツアーが活動の中心だったB'zも例外ではありませんでした。多くのアーティストが活動の仕方に悩む中、B'zはコロナ禍でも新たな挑戦を続け、ファンはもちろん、同業者の人達にも勇気を与え、コロナ禍における音楽・エンタテイメント活動のモデルケースを作ったと私は思っています。今回はB'zがコロナ禍でどのような活動に取り組んだのかを振り返っていきます。

◯B'zが2020年に本来予定していたこと

 B'zは2017年〜2018年に『B'z LIVE-GYM 2017-2018 “LIVE DINOSAUR” 』を8ヶ所18公演、2018年に『B'z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI- 』を12ヶ所23公演、2019年に『B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE-』を16ヶ所36公演、精力的な活動を続けていました。

 B'zの2020年は当初、2人のソロ活動からスタートする予定でした。松本さんは6月16日から6会場8公演、稲葉さんはINABA/SALASとして4月27日から8ヶ所17公演のライブツアーを予定していました。しかし、2つのライブツアーは全て延期→中止となりました。

 ライブやイベントの中止はエンタテイメントの世界で生きる人達にとって非常に大きなリスクで、中止になった場合、会場のレンタル費や準備のために掛けていたお金が全て返ってくるわけではありません(ライブやイベントが中止になった場合の保険などもあると思いますが、それでも本来生まれたはずの利益を得ることはできず、損失は出てしまいます)。この時期にライブツアーを予定して、既に会場を抑えていたアーティストはライブの中止によって、大きな損失を抱えたはずです。さらにコロナがいつ明けるか分からない状況だったため、ライブを予定すること自体が大きなリスクになってしまい、活動をすることが難しくなりました。

 2020年、B'zはソロ活動以外にB'zとしても大きな活動を予定していました。それはZepp Hanedaでのレジデンシー公演(長期間に渡り、同じ会場でライブを開催すること)です。期間は1ヶ月間を予定していたと思います。しかし、これも当然、予定していた通りの開催はできなくなりました。予定していたことが何もできなくなってしまいましたが、ここからB'zはコロナ禍におけるエンタテインメントの在り方を示していきます。

◯Zepp Hanedaで5週連続セットリスト総入れ替えの無観客配信ライブを開催

 B'zはZeep Hanedaを1ヶ月間抑えていたため、何もしなければ1ヶ月分の会場の使用料がそのまま損失になる可能性がありました(レジデンシー公演はZeep側からのお願いで予定していたため、ある程度は融通が利いた可能性もあります)。そこでB'zは32年間を5つの時代に分け、5週連続(2020年10月31日・11月7・14・21・28日(土
))で無観客の配信ライブ『B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820-Day1〜5 』をZepp Hanedaで開催しました。このライブはセットリストを総入れ替えして(5回のライブで合計77曲を演奏)、演出やステージもライブごとに変更するという無観客の配信ライブとしては異例の規模で開催されました。

 配信チケットは1公演3500円、B'zのファンクラブサイトやU-NEXTなど8つのチャンネルで配信されましたが、チケットの販売枚数は私が調べた限り公表されていません。参考にできる数字として、2020年6月25日に横浜アリーナでサザンオールスターズが無観客の配信ライブを開催しましたが、この時は約18万人が3600円の配信チケットを購入したそうです。B'zは5回のライブを開催したので、少なくとも30万枚以上は配信チケットを売り上げたと予測します。

 その後、ライブの模様はBlu-rayとDVDでも販売され、売上枚数の合計金額が約30億円、ライブグッズの販売も含めると、B'zは無観客の配信ライブで少なくとも41億円以上の売上を達成することができたと思います。これはエンタテインメントを仕事にする多くの人に勇気を与える出来事だったはずです。

◯B'zが主催してMr.Children・GLAYと共演したRock Project

 5週連続セットリスト総入れ替えの無観客配信ライブを成し遂げたB'zでしたが、2021年になってもコロナウイルスが社会に与える影響は収まらず、コンサートやスポーツなどのイベントも観客制限が設けられる状況が続いていました。

 そのような状況下で2021年9月に開催されたのが『B'z presents UNITE #1』でした。9月18・19日(土・日)は大阪城ホールでMr.Children、28・29日(火・水)は横浜アリーナでGLAYとの共演を果たしました。このライブは当初、もっと多くのバンドに参加を募ることも考えていたそうですが、コロナ禍真っ只中でイベントの終了時間などの制約も多かったことから、対バン形式にして、最終的に松本さんがGLAYのTAKUROさん、稲葉さんがMr.Childrenの桜井さんに直接オファーを出して、実現に至りました。

 UNITEは2021年8月1日に開催がアナウンスされたため、前々から準備をしていたわけではなかったと思います。最初のアナウンスの際に松本さんは「コロナで大きな打撃を受けた音楽業界復興に向けて」、稲葉さんは「新しいときめきが生まれるようなライブ」という言葉を使われています。また、この時はコロナ禍でライブを開催することへの否定的な意見が世の中で多く、アーティストがライブを開催することに前向きになれない状況でした。その状況を変えるために「コロナ禍でも有観客のライブをこうすればできる」ということを示す使命も松本さんと稲葉さんの中にあったはずですし、稲葉さんはGLAYのTERUさんとの対談でUNITE開催までの思いを話されています。

 UNITEは実際、多くの制約がある中での開催になりました。以下はライブを開催するにあたり、設けられた制限やルールの一部です。
・観客は会場内で常にマスクを着用する

・座席は前後左右を空けた配置とする

・歓声はNG

・飲食はロビーのみ

・入場の際に同伴者を含めて本人確認

・ワクチン接種証明書等や公演当日72時間前までのPCR検査陰性証明の持参
※これに関しては任意で、協力した方にステッカーをプレゼント

・公演参加者のメンバー・スタッフは公演期間中毎日PCR検査を実施

 これらは本当に一部で感染症対策の項目は全部で50項目もありました。しかし、多くの制約がある中、B'zはライブの開催によって利益を出すことも忘れてはいませんでした。それぞれの公演の配信チケット(大阪公演は2021年10月4日(月)〜10日(日)、横浜公演は10月11日(月)〜17日(日)に視聴可能)は4500円で販売、少なく見積もっても20万枚(9億円)は配信チケットが売れたと思いますので、多くの制限がある中でも確実に利益を出したはずです。

 そして何より、UNITEはコロナ禍における有観客でのライブやイベント開催のモデルケースとなり、エンタテイメントに関わる多くの人がイベント開催に前向きになれたことは間違いありません。

◯コロナ禍でB'zが示したこと

 B'zは2021年11月16・17日(火・水)に『B'z presents LIVE FRIENDS』を東京ガーデンシアターで開催。バラード曲を中心としたセットリストが組まれ、コロナ禍以降ではB'zとして初めてキャパシティ100%で実施、2022年には『B'z LIVE-GYM 2022-Highway X-』を13ヶ所32公演、この時もキャパシティ100%でライブは開催されましたが、マスクの着用や大きな声での声援の制限などの制約があり、2023年の『B'z LIVE-GYM Pleasure 2023 -STARS-』でようやくコロナ禍前の状況に戻ることができました。

 今回、B'zのコロナ禍での活動を振り返って思ったのは、B'zは常に挑戦を続けているということです。B'zはデビュー以来、活動休止や長期の休養はなく、新しい作品をリリースして、ライブツアーを開催することをずっと続けていたため、挑戦というよりも安定や継続というイメージがありました。しかし、B'zが35年間、安定した活動を継続できたのは、常に挑戦を続けてきたことの裏返しだと思います。そして、B'zは時代が合っていたから多くの人に応援されているわけではなく、どんな環境にも対応ができるから、たくさんの人に愛されているのだと思います。


◯出典
・B'z Official Website 2023年12月7日
http://bz-vermillion.com/index2.html

・『be with! Vol.125〜139』

・日経XTECH サザンの公演は50万人が視聴、台頭するライブ配信サービス 配信 2020年7月31日
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00160/070800196/


 ・ORICON MUSIC! B’z、昨年開催の配信ライブ映像作品が3部門同時1位に【オリコンランキング】 配信 2021年9月2日
https://www.oricon.co.jp/news/2205526/full/

・『稲葉浩志(B”z) x TERU(GLAY) 特別対談』 配信 2021年10月26日
https://youtu.be/XWrq_GlX4ZA?si=tN0Vq3MjzfiU09TQ


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