道草の家のWSマガジン

エッセイ、小説、詩、etc. を書く「道草の家のワークショップ」のウェブ・マガジンです…

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エッセイ、小説、詩、etc. を書く「道草の家のワークショップ」のウェブ・マガジンです。作品もあれば未完成の素材もあり、メモや、何になるのかサッパリわからないガラクタも置かれているかも。気楽に読んで & 書いてください。

最近の記事

道草の家のWSマガジン - 2024年4月号

春に - 橘ぱぷか みててよね儚いだけじゃないからねバーンと夜に桜のランウェイ 毎度のことながら慌ただしい毎日がはじまって、嘘みたいな速さで時間が過ぎていく。意味わかんない意味わかんないゆっくりしたい、けれどできないが続く中、気づけば桜が満開になっていた。咲いたそばからすぐにひらひらと散っていくのがかなしい。でも綺麗。 昼間は控えめ、夜はまばゆく月やライトに照らされて、なにやら溜まった鬱憤を晴らしてるみたい。 華やかな風景やゆるんだ空気に心が追いつかず、今年もうまく春に

    • 道草の家のWSマガジン - 2024年3月号

      ミモザによせて - UNI わたしの母は仕事・家事・育児に頑張る女性だった。お昼休みにスーパーに買い出しに行って、それを職場の冷蔵庫に入れていたという。帰りは電動なんてまだ無い元祖ママチャリぶっ飛ばし、すぐに夕飯の支度にとりかかる。 わたしには弟への嫉妬心が密かにあったんだろうと今は思うけれど、母に誉められたくて、洗濯物を取り込んで畳む係を小学校に上がる春に立候補した。母が喜んでくれた顔を鮮明に覚えている。 「えっ、いいの? 毎日?」 「うん、小学生になるんやもん」 それ

      • 道草の家のWSマガジン - 2024年2月号

        ゆき - カミジョーマルコ 白い影に ふと目をあげると 外は雪がふっていた ふわりふわり ひらりひらり 隣のアパートで子どものはしゃぐ声がする すごいね すごいね お姉ちゃんと妹と すごいね すごいね その上の階に住む若い母親は きっと 産まれてまもない赤ん坊を抱いて 窓の外をみてる はじめてみる白い世界を 赤ん坊にやさしく語りかけている その先に一人で住んでるおばあさんは カーテンを閉めながら きっと ねこのことを考える この雪の中 寒さに震えてるんじゃな

        • 道草の家のWSマガジン - 2024年1月号

          短いようで長い道のり - maripeace 先月はWSマガジンの原稿を送れなかった。途中までしか書けなくて、送らなかった。たぶんRTさん主宰の「壁の花の会」に参加した時のことを書いたと思う。会が終わった後に見た、ムクドリの大群のことだ。あれから何度か、同じ場所でそれを見た。 去年の夏、北海道を楽しむことに夢中になり、秋に東京に戻る直前に風邪をひいた。帰ったら、自分の部屋の窓から見える風景にものすごく退屈して、それまで過ごした二ヶ月間の高揚感との落差にがく然とした。夏に

        道草の家のWSマガジン - 2024年4月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年12月号

          12月 - のりまき放送 降車する停留所を間違えたくなかったので、電光掲示板が見える前方の席に座った。緩やかにバスが振動し、動き出す。町中を抜けて山側へと進んでいく。ちらりと前に座るおじさんを見ると、スマホでアダルトサイトを見ていた。画面が目に入ってきて、自分のほうが恥ずかしくなった。思わず窓の外へ視線を逸らす。降車ボタンが鳴る音。この人は絶対に滝行に行くだろうな、と思っていた人はいつの間にかバスを降りてしまった。しばらくバスに揺られる。停留所から数分ほど歩き、お寺に到着

          道草の家のWSマガジン - 2023年12月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年11月号

          沖縄の花 - maripeace 花を一輪買った。時々相談するお坊さんに、自然が足りてないから部屋に切り花を飾るといいよと言われて、花屋さんに選びに行った。デンファレという種類の蘭の花。淡いピンクと白のグラデーションがいいなと思ったのと、香りがないのがよかった。蘭に親しみを感じるのは、沖縄でよく見かけたからかもしれない。住んでいたアパートの前にお花屋さんがあって、一度だけお店の人と話をした。内地では贈答用のすごく値が張る蘭の鉢も、産地だからか手頃な値段のようだった。職場に

          道草の家のWSマガジン - 2023年11月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年10月号

          琥珀色 - 田島凪  きみから私をゆっくりと引き剥がし、その背中に枕を添わせる。夜が終わったことを、きみに気取られないようにそっと。腹筋に力を込めて上体を起こし、糸よりも細く息を吐く。目覚めはじめた呼気が、眠りの海に波紋を描かぬようにすっと。 
 猫の足の運びで部屋を後にし、仄かに薄荷の香る台所に向かう。夜を見届けた鏡の前に立ち、時を告げる鳥のように身繕いをする。置く前に心で三つ数えれば、ブラシは音を立てない。  推定十七歳の、この世でいちばん美しい犬は、病と老いの冷雨に

          道草の家のWSマガジン - 2023年10月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年9月号

          果実の話 - UNI  フルーツ。fruit. 実を結ぶ。果実が成る。  果実はすべて、人間のためにあるのではない。果実は動物に食べられ、糞として落とされることで種子を運ばせた。果実は動物に選ばせるために自らの色を変えた。果実は時に毒を持ち、自らを守った。  ひとが一人生きる。それは果実である。  ひととひとが生きる。果実が成る。  日々が過ぎる。この日々は果実を実らせるために過ぎるのか。実らないのであれば日々はなぜ過ぎるのか。  少し前にはメロンの小玉を、そして数日前に

          道草の家のWSマガジン - 2023年9月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年8月号

          「藤橋」覚え書き - スズキヒロミ  昔々、あるところに、一本の橋がありました。その橋は藤の蔓を編んだ吊り橋で、村人から「藤橋」と呼ばれていました。  藤橋は、その村と向こうの村の境にあった沼を渡り、そしてその先の道は中山道の宿場に通じておりました。そのため行き交う人は多く、荷を積んだ牛や馬も通りましたが、なにしろ藤蔓の吊り橋なので、渡るのに難渋する者が多かったといいます。  ある時、そこに一人の旅人が通りかかりました。小平次というその旅人はいわゆる「六部行者」で、全国六

          道草の家のWSマガジン - 2023年8月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年7月号

          慟哭 - カミジョーマルコ 月が泣く。 星が笑う。 風がこの世の終わりを告げる。 やがて空はガウガウと鳴き 足元の地はバラバラと揺れ 私は恐れをなしておのずから宙に浮いた 砂塵となる。 地に降りて一つの塊になることができず かといって 風にもまれてみじんもなく消えてしまうこともできず 小さく小さく 削られながらもまだ存在しており そして夢みているのだ。 嗚呼、いつまで夢みているのだ。 砂塵が星になれるなんて。 いつかは月の欠片になれるなんて。 空は私を笑ってい

          道草の家のWSマガジン - 2023年7月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年6月号

          犬飼愛生の「そんなことありますか?」⑦ そこのけそこのけ、あたしが通る。ドジとハプニングの神に愛された詩人のそんな日常。 「リサイタル、前夜」  私の母は以前、自宅で近所の子供たちにピアノを教えていた。実家がピアノ教室だったので私も一応、ピアノが弾ける。私は母の期待を一身に受け、隣町の有名なピアノ教室に通わせてもらったが、そこの大先生は黒柳徹子と塩沢ときを混ぜてスパイスを足したような風貌で迫力があり、なおかつめちゃくちゃ怖かったのでピアノがへたくそだった私はさらにピアノ

          道草の家のWSマガジン - 2023年6月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年5月号

          麻績日記 「おとずれ」 - なつめ 「わが心 なぐさめかねつ更級や をばすて山に照る月を見て」(よみびと知らず、『古今和歌集』 ) 私にとって傷ついた心を慰めるのは歌である。 そう気が付いたのはウクレレで弾き語りができるようになってからだ。ウクレレで歌うことは、その歌の歌詞が私の心にすっと入って来て、そっと寄り添ってくれるようだ。そのことに気が付いてから以前よりもさらに歌をよく聴き、歌うことも増えた。主に自分と息子を慰めるために歌っている。たまに友人の前で歌い、ウクレレの

          道草の家のWSマガジン - 2023年5月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年4月号

          今日という日がもうすぐ終わる - スズキヒロミ 明日にはもう故郷に帰るのだ と ずいぶんとまた 急な話 そういえば 昔 それとは知らず 君の故郷を 旅したことがあった 境を越えると 行く手には はるか 山の壁 後ろにもまた 山の壁 右を向いても 左を向いても ぐるりと囲む 山の壁 あれはまるで お釈迦様の手のひらだ ああそうか だから君は 故郷を出ようと 思ったんだね お釈迦様の その手のひらに 君が 帰る 私には わかる 君の前途は 洋々だ 今日という日がもうすぐ終わる

          道草の家のWSマガジン - 2023年4月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年3月号

          だれかの話 - UNI 車、西へ進む。 四日後、オホーツクに着く。 一旦、西へ進む。 富士の宝永火口、右眼に流れる。 春の空、霞む。 静岡、とにかく長い。 愛知、あっというまに流れる。 工場、「ランクルのふるさと」だという。 車、西へ進む。 空、黄色に霞む。 LINE、「それは黄砂」。 LINE、母からの。 四日後、オホーツクに着く。 一旦、西へ、着いた。 犬飼愛生の「そんなことありますか?」④ そこのけそこのけ、あたしが通る。ドジとハプニングの神に愛された詩人

          道草の家のWSマガジン - 2023年3月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年2月号

          今日の空の色は - RT 1月27日 寒い波 射金色 思えば朝から不思議な日だった。仕事場のパソコンのお絵描きソフトを突然使えるようになったのだ。今まで何回やってもできなかったのに。 仕事場の部屋に結構広いプレイルームがあって、コロナが流行りだしてからおもちゃや絵本などを撤去してがらんとしていたのだけどこのごろ少しずつ子供が遊べるように戻ってきていて、元気のいい声が耳に響きすぎる日もあるくらいなのだ。そこに飾り気がないのでRTさん何か作ってみたらと言ってもらった。 そ

          道草の家のWSマガジン - 2023年2月号

          道草の家のWSマガジン - 2023年1月号

          滴がひとつ落ち、私は倒れました。──つまり、あるひとつの経験が完結し、そこから私は抜け出たのです。(ヴァージニア・ウルフ『波』より/森山恵・訳) どんなことを書いてゆこうか - なつめ  2023年が始まった。2022年は私にとって激動の一年だった。別居、離婚、退職、転職、息子の転校転入、都会から過疎への移住、一気に生活が一変した。今思えば私も息子もとても大変だった。そんな一年を終えた今年、どんな一年にしよう。色々思うことはあるのだけど、少しペースを落としてゆるやかに過ご

          道草の家のWSマガジン - 2023年1月号