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SS 必要とされる事【アクセサリ_0%_コミュニケーション】三題話枠

「このアクセサリでいいのか? 」
 無骨ぶこつな男が少女を見つめる、私はうなずいた。街の夕暮れ時に屋台の店で指輪が売られていた。拒絶きょぜつの指輪だ。

(こんな代物がまだあるのね……)

 禁忌の時代に使われた魔物からの攻撃を防ぐ指輪。魔力を遮断するが弱点もある、加護がすべて消えてしまう。すべての魔法を100%防ぐ、ただし他の呪いや即死や石化の加護が0%になる。

「もらうわ」
「使い道はないよ……」
 それなりの値段だが、アクセサリの値段としては格安だ。私はこれをもってダンジョンに入る。

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「これが最後だからな」
「あんたなんて器用貧乏で使えないのよ」

 PTの仲間が私に不満をぶつける、中途半端な力はダンジョンの最深部では使えない、精鋭になりたいPTに私の居場所は無い。

「魔法防御は完璧です」
「あんたは防御だけは得意よね」

 女魔法使いは私を軽蔑するように見ている。私は新人の少年と一緒に6人で最難関さいなんかんダンジョンに突入した。精鋭を目指すPTは、敵を蹴散けちらしてラスボス手前まで無傷で潜入できる。

「ここからはお前の出番だ、マジックドラゴンは範囲魔法攻撃を使う、だから無効化してくれ」

 私はPTの仲間ときちんとコミュニケーションが取れなかった、口下手で理屈で話す事が出来ない。新人の少年が心配そうに私の腕をつかむ。

「僕も魔法防御耐性があります、一緒にいきましょう」
「大丈夫よ」

 黒髪の少年剣士は、希望と自信に満ちていた。私は彼の手に触れて頭を横にふる、最後の仕事くらいは成功させたい。

 他のPT仲間が馬鹿にしたように私を見る、お前は使えない、お前は足手まといだ、お前はイラナイ……

 私は拒絶の指輪をはめてラスボスの前に立つ、想像を超えるような大きなドラゴンは頭の高さが城の尖塔せんとうくらいある。まるで建物が動いているようだ。ここまで大きいと非現実的に感じる。私は指輪に詠唱えいしょうを与えて起動させた、マジックドラゴンが即座に範囲魔法で巨大な氷を作りひょうを降らす、だが拒絶の指輪は魔力で作られた物理現象をキャンセルする。

「大丈夫です! ドラゴンを倒せます! 」

 ふりむくと、PTの仲間達が逃げ出していた、あの少年剣士だけが叫んでいるが、彼もPTの仲間に引きずられるように連れて行かれた。精鋭を目指していたPTは自分たちの実力不足を即座に理解して私を置き去りにした。私は捨て駒だ。

「そうね、私は不要だった」

 マジックドラゴンが魔法が通じないと判ると属性攻撃に切り替えた、石化ブレスが私を襲う。石になりながら、少年剣士が帰れますようにと祈る。

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「大丈夫か?」
 意識がどれくらいなかったのか判らない、四十歳くらいの男が私を抱いていた。私を助けて地上まで戻る。マジックドラゴンは彼が手にしたドラゴンキラーで倒していた。

「あなたは?」
「あんたを置き去りにしたPTに参加してたよ」

 彼は私を助けるために技量を高めた、何十年も修行をしてやっとソロでマジックドラゴンを倒せるようになる。彼の魔法防御力は生来のものだった。ドラゴンの力を自力で防いだ。石化した私を戻す高価なアイテムも購入している。

「もう忘れてたと思った」
「あんたが好きだ、自分だけ犠牲になって俺たちを助けた。俺はあんたを助けるために力を手に入れたんだ」

 彼の傷だらけの顔は晴れやかで嬉しそうだ、私は誰かに必要とされていた。


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