3/10日記「おもちゃの病院」

今日は派遣の仕事で
品川区の区民センターにて
おもちゃの病院の受付をやって来た。

おもちゃの病院というのは不定期で開催され、
壊れたおもちゃをボランティアの方が
無料で修理するというものだ。

おもちゃの病院という名前につられてか
おもちゃを持ってくる子供達の顔はひどく落ち込んでいる。

ボランティアの方も名前につられて妙な空気感がある。

名前を変えた方がいい。
病院というワードはあまりにも強すぎる。

次の番の男の子がナースっぽい人に
カバのおもちゃを渡すと

「財前先生急患です!」
とナースが叫んだ。

「早く手術台へ!何をモタモタしているんだ!」
と財前先生も声を荒げる。

財前先生の名札を見てみると鈴木と書いてあった。

「財前先生、僕のカバ顔は助かりますか?」
「絶対に、、、助けてみせる」

そう言って財前先生は手術に入った。
最初こそ順調に思えたが、突然財前先生の手が止まる。

カバ顔の腹部から溢れ出す綿を見ながら
手を震えさせてしゃがみ込んでしまった。

「く、やっぱり俺には無理かもしれない、」
「先生!いつまで過去に囚われてるんですか!」
「雨宮くん、、、」
「ほら、先生のライバル一条先生も見てますよ」

完全に2人とも僕の方を見ている。
首をくいっとさせて参加を促している。
もちろん僕の名札には渡邊と書いてあるのだが

「財前!あのミスはお前のせいではない!仕方なかったのだ!」
「一条、、、」
「思い出せよ研修医時代に2人で誓ったろ?」
「あー、2人で、な」
「あの帰りの河川敷でさ!」
「あぁ、あのやつね、」

ちょっと待ってくれ、
財前そりゃないぜ
そっちに合わせたやん
合わせた上で設定乗せただけやん
もっと上手く返せるやろ

「一条先生も昔、財前先生に助けられたのよね?」
「あぁ、1年目の時に」
「一条先生が学界から注目され始めた4年目の頃よね?」
「そうだ、あの時は本当にありがとう。」

ちょっと待ってくれ、
雨宮そりゃないぜ
めっちゃ押し付けてくるやん
自分の中にありすぎるやろ

なんの勝算があって僕を参加させてん

ちょっと待ってくれ、
子供のためと思って参加したけど
端っこのモニターでアンパンマン見てるやん

そりゃないぜ

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