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【雑談】私の津軽旅行記

今回は、数年前に行った旅行の記録でもさらしてみようかと思う。
妹とともに、EXOというK-POPグループのフィルムライブコンサートin青森にいったときの話。


8/14 4:30起床
当日7:50羽田発の飛行機だったため、妹宅に前泊し、早起きして準備した。
久しぶりの飛行機で、いろいろな場所に行った時の思い出がよみがえってくるが、国内だったので朝食の空弁を食べ終えるや否やすぐ到着してしまった。

青森空港は小さな空港だった。風が冷たかった。
駅までのリムジンバスからの風景は、寒々しく寂しい風景だった。
山から平野に下ってすぐのあたりで、刑務所と県立図書館・文学館が並んで建っていたのが印象的だった。
青森駅に着くとさらに風が冷たいうえにかなり強風で、想像以上に寒かったため、念のため持ってきていた薄手のセーターをホテルで着込んでいった。それでも足りないくらい、真夏とは思えないほど寒かった。

ライブは18時開演で、まだまだ時間があるため、まずは三内丸山遺跡あたりへ観光することにした。
日本史の授業で散々名前を耳にしていた三内丸山遺跡に、とうとう行ける日が来るとは。
実は三内丸山遺跡を含む北海道・北東北遺跡群が、つい最近世界遺産に登録されたということもあり、(というか元々世界遺産登録に向けていろいろ注力していたのだろう)現地はかなりきれいに整備されていた。
三内丸山遺跡はとても広かった。
そして、博物館がかなり充実していた。しかもとっつきやすいし、わかりやすい。
また、三内丸山遺跡が発掘され、現在の形で保全されるまでの経緯も分かりやすく展示してあったり、修復作業等を行う部屋や収蔵庫が一般に公開されていたりするなど、博物館活動そのものに関する展示があったのもよかった。

三内丸山遺跡の近くには県立美術館があり、空港で調べた感じおしゃれでよさそう、ということで美術館も行くことにしたのだが、ここもいって正解だった。
金沢の二十世紀美術館を彷彿とさせるような、シンプルだけどどこかおしゃれなデザインの建築で、常設展も様々な展示が行われていた。
中でも印象的だったのは、シャガールの絵が飾られているホールだった。広い空間の中央にはさまざまな色の椅子がおかれており、その四方の壁にはシャガールの作品が1枚ずつ壁いっぱいに飾られている。何かと思えば、それは「アレコ」というバレエ作品上演時の背景画であり、実際の舞台のように暗闇の中で背景画に光を当てたり、実際のバレエの様子をアニメーションにして写したりして、解説を行うという上映会を、日に何回か行っているのだった。

上映会の様子

それぞれの作品を、当時制作されたときと同じように追体験することができるこの試みはとても面白いし、美術館として生き残るための戦略として、とても上手いと感じた。(注:この作品は当時海外の美術館から借りていたものであり、その借用権があと数ヶ月で切れるというタイミングだったため、現在は行っていないと思われる)

また、当美術館を建築した青木淳、そしてその建築を写真に写した鈴木理策の『「原っば」に立って』というプログラムも面白かった。展示作品のみならず、当の美術館の建築自体も俎上にあげることによって、こどもが何もない「原っぱ」で何かを発見するように、作品がなくても来館者にさまざまなことを発見してほしい、という意図の特集らしい。この写真展に足を止める人はあまり多くなく、その中で一生懸命意味を考えている私賢いという選民思想にともすればとらわれてしまうが、人が何かに視線を向ける意味、その先にある面白さや実際にそれが起こっていることの意味に考えをめぐらすということを、久しぶりにすることができて、面白かった。
実は最初に訪れたのはミュージアムショップだったが、そこもグッズが充実していて、いいミュージアムショップだった。友人にプレゼントしてもらったお香もほとんど全種類おいていたので、思わず一つ買ってしまった。実際に匂いを嗅いで買えるというのはお香としては素晴らしいことだ。

気が付くといい時間で、青森駅まで帰って開演するまで少々ギリギリの時間だったが、うまいバスの乗り方をしたおかげで何事もなくホテルへチェックインしたうえで、会場へ向かうことができた。こういうときの妹の判断の的確さはいつもすばらしいものがある。
EXOのコンサート会場では、公式ペンラも売っていたが、結局買わなかった。
山梨の時(注:山梨のコンサートにも行った)と同様、大音量・大画面で流れるライブ映像はとても迫力があって、彼らの迫力あるダンスパフォーマンスや、ファンを愛おしげに眺める視線に感動しながら、なぜちゃんとこの子たちの活動を追ってこなかったんだろう、なんでライブに行かなかったんだろうという淡い後悔を抱いていた。

8/15 11:00起床
前日の夜、時間は少ないが山向こうの弘前城へ観光しようという話になり、そのために8:00には起きようとアラームをかけていたのだが、私自身は4時近くまで眠ることができず、そのあとようやく眠りについたと思ったら、起きたら11:00だった。
アラームが鳴らなかったのか、私が止めてしまったのか、何もわからないが、チェックアウト時間をすぎて居座ってしまったため速攻で支度してチェックアウトした。

朝ごはんも食べておらず、おなかが減ったため、魚市場直営のような、よくある観光客向けの飲食店に入ったのだが、妹が注文した中落丼も、私が注文した煮干しラーメンもなかなかおいしかった。
また、店内にはステージがあり、夜に何か公演を行うのかな?と思っていたら、突然ライトアップされ、袴をはいた初老の女性が三味線を持って中央に座り、津軽三味線のライブが始まった。最初の曲目は忘れてしまったが、2曲目が新民謡として作られた労働歌のりんごうた、次に盆踊りの曲、そして最後にじょんがら節と演奏されていった。生演奏は初めて聞くが、力強い節で音色が奏でられ、東北のリズムはこんな感じなんだな、と思いながら聞き入る自分がいた。目の前で同じように聞く家族の女の子が、じょんがら節の時に、力強いリズムに合わせて演奏をまねしているのがとても微笑ましいとともに、こういうリズムを聞くと体を動かしたくなるよな、という共感を覚えた。

結局時間がなくなってしまったため、弘前にはいかず、物産館で買い物などをして時間をつぶすことにした。
前日にいった物産館とは別に、A's Factoryという新しめのモールがあり、そこでおおかたの土産物を買った。
外に出て海も眺めたが、信じられないほど風が強く、前日より日があるとはいえやはり寒かったため、桟橋に出ることはせず、カフェラテを飲んだりアップルパイを食べたりしてのんびりしたあと、駅ビルへ向かった。

駅ビルでは、帰りの新幹線が東京まで4時間近くかかるため、そのときに時間をつぶすための本を探したいと思い、書店へ寄った。
最初は新書を読みたいと思い新書コーナーを見たが、面白そうなタイトルがなく、次に文庫コーナーをぶらぶらしたが、ぱっと引き付けられるのはブレイディみかこの私小説くらいだった。
素直にそれだけを買うのでもよかったが、何か重厚な、読んだ後に何かが残るものが欲しいと思いなおぶらぶらしているときに、それを見つけた。
それは、太宰治の『津軽』という作品だった。
へぇ、こんな作品あったんだ、という思いと、面白い、青森土産にちょうどいいじゃないか、という思いで、作品を手に取ったら、そのまま離す気になれず、買うことにした。
そうすると、本格的にこの地の歴史的な本も読みたいという思いが頭をもたげ、世界遺産登録記念ということか縄文コーナーに置いてあった『縄文とケルト』という本も買うことにした。これは歴博の教授が書いた本ということだ。
3冊か、と思いつつ、こういう時は勢いが肝心だとすべてレジに持っていくと、何かのキャンペーンなのか、何かしらの小説のセリフらしきものとイラストが描かれた、少し面白いブックカバーをかけてくれた。青森駅60周年記念のものということだった。

新幹線に乗って、まず『津軽』を手に取って読み進めていくと、ブックカバーに乗っているセリフと同じ言葉が作中に出てきていた。
実は太宰は津軽出身で、故郷のことを含め、3週間ほど旅行したときのことを書いたのがその『津軽』という作品であり、しかもそれは太宰の代表作の一つであった、ということは全く知らずにその本を手に取っていたのだが、どうやらブックカバーのキャンペーンは、そのあたりに注目して構成されていたらしい。そのことに気が付き、めぐりあわせに感動した。

『津軽』は少しずつ読み進めているが、今回の旅行で初めて知った地名が次々につながっていくのが面白く、新幹線で半分くらいまで読み進めた。
久しぶりに文字を読むのが面白かった。

きっかけはEXOだったが、初めての青森旅行で、得るものが多く、いい旅行だった。


太宰治の『津軽』では、当地がたびたび冷害に見舞われたことが書かれていたが、そのことが体感として納得できる旅だった。お盆の時期に最高気温17度である。
それでも津軽を再訪したいと思ったし、そのときには行き損ねた弘前城にぜひリベンジしたいものである。
ちなみにこの時買った『縄文とケルト』という、縄文時代の遺跡とケルトの遺跡を比較するという新書は、いまだに読み終えていない…。

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