青色アクエリアスと小さなアルデバラン2

②僕が僕であり続けること

(アクエリアスの場合)
ぼくはおおかみ
地を這うことしかできないぼくが好むことは数限りなくある
破壊、血なまぐさ
生かされるのではなく
生きているという感触
僕らもあるいは満ちるのを待っているのだ。
やり方は違えどもそれが僕なりの正義
きょうぼうせいを
こめかみにただよわせ、
わがままを声にして吠える。そうすれば天地に潜む神様でさえ、だれもが俺を受け入れざるをえなくなる
君が泣く。
ぼくはただ、傷口が広がっていくのをながめている。
君は、泣き続ける。
ぼくらはからだを抑えつける全てのものを呪う。
身震いするほど飢えていて、何が欲しいか分からなくて僕は喚く。
美しさについて。
けどきみもそのことを知らないのだろう。
愚かさに取り憑かれたぼくは、
たったひとつ
血を流すことでしか
うつくしいことを知る方法はないのだと思いこむ。
打ち上げられた深海魚
持って帰るなと 咎められた流木
死 あるいはやすらぎを求めない終局
それらはぼくに似ている
きみは知らない、本当の僕を知らない
愚かで惨めで浅はかで
未だ憐れみを知る前のきみ
僕の許せなさを思い出させないでくれよ

☆★☆★


(アルデバランの場合)

むかし、台所にはいつも母がいて、そこにある揺るぎない秩序みたいなものが好きだった。

朝、目を覚ましてから聞いている雨の音みたいに、わたしはそこに居ないあいだも台所って場所を想っていた。
か細いひかりや静寂が、日常のほそぼそとした煩わしさをかっこたる力で収束させてしまう。
「母」それから「台所」っていうのはそういう場所で、口に出すまでもなくわたしはつまり台所のあるわたしだった。

今、台所はそんな場所ではなくなり、あーそこには、もう誰も居ないからだわって考えるのである。秩序まもるための番人はもういなくなり、わたしは大人になってしまった。

ーーーーー静寂。

わたしは家に居る間、そういう場所を思う。
図書館、公園、コンビニ、本屋、何か求めて歩き回る家無し猫が、ひなたを避けて移動していく。
だいどころ。しずかなところ。
答えを求めようとして話しかけると、それはふっと消えてしまうが、べつに不安になることはない。日常という大いなる波はわたしのことをいつも離さない。

何かを失ったとしても、それは。

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ポエム、詩、短歌などを作ります。 最近歴史に興味があります。