波ん堕〜最高or最低のクリスマス〜

※これは、chat storyというチャット形式でストーリーを書くサイト内で最高or最低のクリスマスコンテストに応募するため書いた作品です。

テキスト化していただきこちらに載せる事にしましたが、チャット形式のまま特に編集を加えていないため読みにくいかもしれません。


12月3日日曜日の昼さがり、中村家の居間にて。

中村パパ「こほん。」

中村パパ「今からありきたりな話をする。」

中村さき「改まってなあに?パパ」

中村パパ「お前も10歳。いろいろと話が分かるようになってきた。」

中村パパ「そこでだ。」

中村パパ「クリスマスというものが世間で行われているな。あれは本当は外国の行事だということを知っておるか?」

中村さき「知ってるわパパ」

中村パパ「じゃあ知っているな。サンタが日本にはいない、ということを」

中村パパ「いや、日本にはおろか、アメリカにもいない。」

中村パパ「それどころか、地球上にいない。」

中村さき「知っているわ。」

中村さき「サンタはパパって、マライヤキャリーが歌っていたもの。」

中村パパ「それは勘違いじゃ。」

中村さき「間違えた。高村みこちゃんだったわ。」

中村パパ「そうじゃ。そこまでネタバレしていても日本人というものは自国の行事をわすれ腐ってやれハロウィンだ、クリスマスだなどと抜かしておる!!」

中村パパ「まあそれはよい」

中村パパ「とにかく。うちはうち。よそはよそ。ここは日本。という理屈で、今日限り中村家ではクリスマスを撤廃しようと思う!!!」

中村さき「…」

中村さき「…」

中村さき「分かったわ。パパ」

中村パパ「しかしだ。周りがクリスマスを祝っていてプレゼントもクラス全員が貰っているのなかで中村家の子どもだけプレゼントがないというのも可愛そうじゃ。」

中村パパ「わしはそういう家庭の子どもを成長過程で見てきた。」

中村パパ「じゃから今からこの家族会議で「クリスマスに代わる中村家の行事」を話合おうと思う。」

中村ともよ「パパ〜、お姉ちゃん、何話してるの?」

中村パパ「良いところに来たな。ともよ。」

中村さき「うちからクリスマスが無くなったのよ。サンタさんはいないの。サンタさんはパパ。そこにいるひげ面のじじいよ。」

中村ともよ「えっ?!」

中村ともよ「うそ!!」

中村さき「うっさいわねえ〜!とにかくそうなったものはなったのよ!泣くんなら部屋で泣いてこい!」

中村さき「このチビ!」

中村パパ「さき。」

中村パパ「ともかくも妹に対する鬱憤が溜まり過ぎじゃ。」

中村ともよ「しくしく」

中村ともよ「わかった。」

中村ともよ「実はわたしも、もしかしたらって思ってたんだ。だって364日間は超現実主義で過ごしているのにクリスマスだけ不思議なことが起こるはずがないもんね」

中村パパ「うるさい!!」

中村パパ「ハッ」

中村パパ「つい、夢見る大人の心が出てしまった。」

中村パパ「すまんすまん」

中村ともよ「ぐすっ」

中村パパ「そこでだ。」

中村パパ「クリスマスに代わる行事を考えてほしい。」

中村パパ「思いつかないのならパパが取り急ぎ23日までにまとめてくるがどうだ。」

中村さき「ちょ、分かったわ。」

中村パパ「とりあえずだ。プレゼントとケーキは良しとする。だがクリスマスツリーとクラッカー、それから「きよしこのよる」は駄目だ。」

中村パパ「「クリスマスを祝う」という名目を忘れてくれ。」

中村さき「「何を祝うのか」ってことなのかしら。」

中村さき「ちょっとまって。今ある、クリスマスツリーはどうするの?パパ」

中村パパ「あれはレンタルじゃ。」

中村パパ「町内会の五反田村さんの家から10年間一年500円で借りておった。あそこは六つ子だからな。クリスマスツリーも飽和状態じゃ」

中村さき「よく意味がわからないわ。」

中村さき「でもとにかくわかったわ。」

中村ともよ「てんのうへいかを祝うのはどう?」

中村さき「よく知ってたわね、ともよ。」

中村ともよ「えへっ」

中村ともよ「カレンダーに書いてあったもん」

中村さき「でも、駄目よ。」

中村ともよ「どうして?」

中村さき「それはそれ、これはこれだからよ。」

中村パパ「さき。」

中村さき「なに?パパ」

中村パパ「とにかく妹にやさしくしなさい」

中村パパ「まず」

中村パパ「サンタさんという存在を歴史上での発生理由など全く考えず、既に日本という土壌に溶け込んだ時点から考えてみるに、あれは単に気のいいおじさんでしかないのかもしれないな。」

中村パパ「日本にいないのか。そういうおじさんは」

中村さき「…」

中村パパ「秀才のさきよ。」

中村パパ「いるかそういうおじさんは」

中村さき「島田紳助?」

中村パパ「もういないだろ!!」

中村パパ「いや、いるけど!!」

中村パパ「見えない!ここからは見えないところにいる!!」

中村ともよ「コマネチ!コマネチ!」

中村さき「うーん!うーん!」

中村さき「西郷隆盛…?」

中村さき「ちがう!」

中村さき「小4のわたしには難し過ぎるわ!分かるわけないじゃない!」

中村パパ「わかった。」

中村パパ「中村家ではサンタさん改めおじさん改めそれを想像上の生き物とすることにしよう。」

中村さき「そ、想像上の…?」

中村パパ「そうじゃ」

中村パパ「「獏」のようにな。」

中村パパ「そもそもサンタクロース自体想像上の存在じゃ。問題はない。ただ、日本名にしなければいけない。」

中村ともよ「(想像上の…?」

中村パパ「それから、その生態。」

中村さき「ちょっと。パパ。そこまで考えなきゃ駄目?パパは暇かもしれないけどわたし、宿題やってないのよ。それに友達とも遊びたいわ。」

中村さき「ねえともよ?」

中村ともよ「うん。」

中村ともよ「(鼻をほじりながら)」

中村ともよ「「虎」とかそういうのでいいんだよね?」

中村ともよ「波ん堕(ぱんだ)でいいんじゃない?夢のある動物っていみで」

中村さき「(ぱ、波ん堕?!波ん堕から、あたしたちはプレゼントを?!)」

中村ともよ「鼻をほじりつづけるともよ」

中村パパ「波ん堕だな。よし。(カキカキ」

中村さき「ハッ!メモをとってるわ!」

中村さき「はっきりと意見を言わなければ、発言順に中村家のクリスマスが体系だてられていってしまう!!」

中村パパ「よし。で、波ん堕の生態は…」

中村ともよ「クリスマスケーキが主食、ってことでいいんじゃない?」

中村さき「ちがう!波ん堕はクリスマスケーキを作るのが好きなの!家にかまどがあるのよ!お菓子づくりが好きだからいっぱい作って、それからあまらしちゃうの!」

中村パパ「さき、やる気が出て来たな!」

中村パパ「いいぞ!」

中村パパ「家族会議とはこういうものだ!」

中村パパ「世間の流行に流されない!意味のあることをする!だが、行事は大事じゃ!日本国民という源流を分かち合い、家族の絆を確かめ合う!それがにっぽんのぎょうじ!!」

中村パパ「死ね!!!ハロウィン!!!」

中村ともよ「…」

中村パパ「で、プレゼントをなんと解く?」

中村ともよ「そりで持ってくるのよ。」

中村さき「それじゃサンタと同じじゃない。」

中村ともよ「なんで変えなきゃならないの。」

中村さき「だったらサンタ=波ん堕になるじゃない。波ん堕はサンタクロースの源氏名なのか。あほめ」

中村さき「「は〜イ波ん堕でえ〜す!ドンペリいれまあ〜す!」かい」

中村ともよ「ともよ、なんの話か分からない。」

中村パパ「お姉ちゃんは形而上の話をしておる。」

中村パパ「じゃが一理ある。」

中村パパ「波ん堕=サンタであってはならない!」

中村パパ「「そもそも」の話、クリスマス=サンタクロース=な〜んでプレゼントじゃいって気もするが、まあそれはいい。ようはどういう理屈なのかと頭が違和感を感じない程度の収まりがつけばいい。」

中村パパ「そうすればパパもママも、気持ちよくプレゼントを買って来られる。」

中村パパ「な?!」

中村パパ「昔はな、クリスマスなんてものそれほどメジャーじゃなかった。家も裕福でない家庭が普通にあったし」

中村パパ「父さんのクリスマスプレゼントなんて、みかん3個だったぞ。」

中村さき「(みかん…?枕元にみかん3個…?)」

中村パパ「今の子どもは恵まれ過ぎておる。」

中村パパ「そこが、不幸の始まりなのかもしれんじゃて…」

中村ともよ「何歳だよ。」

中村さき「ちょっとまって。まず、中村家の予算的に一年に二回、大型のプレゼントを子ども二人に配分する余地はあるのかしら?」

中村パパ「ある」

中村さき「だったらパパとママからのサービス、ってことでいんじゃないかしら?」

中村パパ「成る程。」

中村パパ「小難しく考えないという事じゃな。」

中村ともよ「パパとママは波ん堕と友達なのよ。本当に仲が良いの。」

中村パパ「なるほど!ともよ、良いぞ!」

中村パパ「想像力じゃ!」

中村さき「仲が良いから何なのよ。」

中村ともよ「一緒にお祝いをしたくなるくらい仲良いのよ。分かるでしょう。」

中村ともよ「わたしたちに当たるプレゼントはそのおこぼれなのよ。ねえパパ?」

中村パパ「まとめると、パパとママの親友である波ん堕というえらい坊さんを祝うための日である二十四日は、たまたま世間のクリスマスイブと同じ日じゃった。」

中村パパ「波ん堕はよく、ケーキを焼きすぎるので、それをパパが二十四日にもらってくるという設定に決定じゃ。」

中村パパ「プレゼントはそのお零れじゃ。」

中村パパ「ん」

中村パパ「待てよ」

中村パパ「母さんはどう言うかな…」

中村パパ「これはいかん!家族会議なのにママを抜かしておったぞ!」

中村さき「いきなり思い出したのね。パートで毎日忙しいママを。」

中村パパ「ママにもクリスマスを楽しんで貰わんといかんぞ。」

中村ともよ「プレゼント額の10パーセント分をママへお年玉としてあげるってのはどう?」

中村さき「いいわね!ともよ!」

中村さき「それもサプライズがいいわ!きっとママ、涙を流して喜ぶわよ!」

中村ともよ「えへっ」

中村パパ「よし!!」

中村パパ「それでいくか!!」

中村パパ「クリスマスは家族みんなで楽しむ行事じゃ!「パパもママもいつもありがとう」の気持ちを忘れてはならん!」

中村さき「(あれ、パパは?と思ったが、だまっているさき)」

中村パパ「…」

中村ともよ「鼻をほじるともよ」


クリスマスイブ(12月24日)当日


中村ママ「はーい。ごちそうよ〜」

中村パパ「はい。ママ、お年玉だよ。」

中村ママ「は?!」

中村パパ「二十四日、特に意味もなくおめでとう。」

中村さき「おめでとう」

中村ともよ「おめでとう」

中村ママ「ありがとう。」

中村ママ「ガサッ」

中村ママ「150円かい!!!」





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ポエム、詩、短歌などを作ります。 最近歴史に興味があります。