青色アクエリアスと小さなアルデバラン5

⑤夕暮れ、帰宅

(アルデバランの場合)

夕暮れ時になるとやっと、帰るべき家があるのだということを思い出す。

ぱたぱたと小鳥が降りる場所を見定めるかのような動きで皆が家へ戻っていく

男の子は孤独を抱えている

怖いものが沢山ある

父親が母親を殴るときのこと

父親がいつか家を壊してしまわないかということ

母親が目の前から去っていくこと

それからそれを誰にも言う術を持たないこと

娘はただ歌って踊る

鬱陶しいくらいにかき回して居なくなる

そのわりに世界の理を全て知っているかのようなことを言っては皆の目を覚まさせる

実際にそうなのだろう。

それぞれがそれぞれの不幸と苦悩を抱えて

じいっと深い目の色をしている

わたしはそれをどういう立場で見ているのか分からなくなる。

ぽん、と誰かに肩を叩かれてやっと思い出すのだ。いつも

そうして取ってつけたようにその役割を演じる

わたしもまた孤独と不幸を抱えている

皆、皆、おなじだ。おなじなら同じになれ

混ぜれば混ぜるほどにいらいらする

そうしてちんっと全てのものがおさまるべきところにやっとおさまり、世界は真っ暗になる。

夜になる。
何もかも解決したよ。

わたし、誰に話してるんだろう。

それから、また明日は新しい1日になる。


(アクエリアスの場合)

空を見上げてみると漆黒で
僕はそれに意味を付けたくなった
この世の中が永遠だということに気づくときの名前を僕は考える
人は皆そして怖くなる
なにも見えなくなるから

その人の内部だけが自分にとっての洞窟だと知った僕は
そこへ向かって投げかけてみる
一体自分はどれほどの物なのか
一体絶望はどれくらいの深さなのか

僕は何も知らなくてやり方も知らなかった
僕は若すぎて
ほぼそれに対して怒りの感情を向けていた
それにへんな感触しかなかった

押し問答の末
残ったのは自分が愚かだったという感触と、それから待ってもらえる義務なんてのはないということで

僕は手段を選ばなければならなかった。

時々考えるのは、人生って一体なにを見つけるためのゲームなのかと思う。
「片割れ」
そんなふうにも読めるのに、けど僕はそれを認めたくなかった。僕は、若いということはあまりに洗練されていないということかもしれないと思う。
僕は自分を知るためにだったらだれかをも殺しかねない一人の男なんだと思った。
僕は確かにあの時、こんなもの壊れちまえと考えていた。
あの時感じていた憎しみが、どこで蓄えてきたものなのかよくわからなく、幸せそうな人を見ると感じるものとよく似ていた。僕は洗練されなければならなかった。こんなふうに血を血で拭うような夜は最悪だ。誰かに構ってもらって、慰めてもらわなければ、ぼろぼろになった心が、成長しきったときに最悪どうなるか目に見えていた。

僕は僕のための洞窟を飼う

それは少しも目に見えなく、僕はその為に一人で泣いていた。


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ポエム、詩、短歌などを作ります。 最近歴史に興味があります。