短歌 雪ー白詰草

(十二月)
目を覚ます気分で朝は降り始め眠り忘れて降り積もる雪

もうこんな、降ったんだなあ 菜の花の装う白さの中皆息を

みっくすじゅーす飲んだコップに朝付いた初滑り跡のような笑顔

布こすれ町そこかしこ 火傷する音たてながら非常勤職員

あふれ出る仔猫の白い腹の毛に梅の実三つ程の膨らみ

冬道で折れた骨白くレントゲン モノクロームの雲のようである

剥き出しにされたのか涙ばかり出る一日限り生に遠くなる

初めての受容のように「労災になります」という報告届く

(一月)手術のため入院

透明のマスクの下起こされてからこの日は唇ばかりを舐める

病室の眠りってまるで逃避旅行 名を呼ばれ元気装うあたり

ちちははもあねも遠のき 消灯後サカナクションイヤホンから流れ

殴られたい部分が時に顔を出しその何倍も助けられたい

「整形は元気でいい」と聞き一人 トイレ片手で行ってみる

レグホン、白色レグホン泣く時の理解され得ないこの胸を見せたい

カルシウムビタミンDから 包帯を巻いて引く当たりくじ侘しいな

ぽつぽつ、と書き始めてる文章がつまらないもっと本を読みたい


(二月)なんてったって春

グーグルの地図から降りた膝小僧つどーむ会場寂しいシャトル
風に舞うビニール袋 番号ふだ 三月九日歌い出すような
長過ぎる序章を一年待っている春を知らない北海道民
空駆けるだろう市民農園の上タオルケットはにかむ曇り日続き
曇りだけで一日呼ぶ駅前のカラオケ店で冬と別れる
景観に脱ぎ散らかした服もない車内の人ら冬の呼気だね
屋根があるから篭るって言うけれど一匹の群れとなります暑さ
人の事思い出すなんてああ熱いホットミルク湯上がりに又飲み
物わかり良いふりばかりの小走りで、骨折しきっと私だからだ
穴ぼこはうなぎの目のよう腕見られ転がる蒙古タンメン拾う


口内にあな見つけたりとりとめもないまま今日をま昼とよべり

熱中はいらいらに似て累を踏む間のベースボールまだらに人立つ

ひと舐めのコーヒーの味誰それが口にするじゆう二つともうなく

ジャケットの革の下少し騙されているようなシャツの真白きうねり

まだ慣れていない朝手に折り畳み傘ひとつ中で打ち合うかばん

舌を出しわらう子供のつむじありたんぽぽ見る時ほど背の低く

おとこ達呼ばれて行きたりひと部屋は川原の寒さを思わせて笑む



三月

自転車の轍はいずれ跡かたもなくなる雲とともにあるカーブ

へその緒の縮こまるような気持ちするま広い朝から始める初夏は

背に負うるリュックサックは森へ行く人束ねたるカラフルな季節

岬とは人の名であり身ひとつで人びとを受くることの切かなき

ヘアピンはこっそり落ちる圧込める指先の硬さ忘れたかたちに

はじめから終わりを思うように射す逆光とともに人の居る部屋





人生にイージーモードはあるかしらシロツメクサを踏んで「やあ、」って

四つ目の車窓閉めたら雨の音 花ってこんな気持ちで咲くの

目的地どこって未だ言い出さず友人の手握るハンドル重たげ

夏めいてみな洗髪後の子供達遠くの栗の花も萌え立つ

遊牧の終わりに雨が降りつづき皐月は心臓憎いほどの愛

阿部さんに恋人が居てもいいような、ダース入りのお茶運び込む日々

無限大なる心地のする自転車だサンカンビコトシマイニチハレだ

誕生日ケーキの飾りブラジャーと思うよこんなにおっぱいあふれて

六月が僕の背丈を超えたそうなんだ煙管を蒸して僕を

ペペロンチーノ・パスタのもつれ美術館出たあとドラマに仕立てないこと

ポエム、詩、短歌などを作ります。 最近歴史に興味があります。