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(会話文)くっつくorくっ付かない?

※こちらは、数年前にchat storyというchat形式でつくる小説サイトで作ったお話です。




おっす!俺はN田たかし。いたって普通の高校生だ。

でも、普通じゃないとこもある。それは、君たちの住む地球と比べてっていうところなんだけど…

月曜日。朝

N田「ああ〜眠い」

N田「昨日寝落ちするまで三時間はN Nチャットやっていたからな…」

N田「あっ」

N田「メッセージきた」

ススキ「おはよ〜N田」

N田「あ、おはよう」

N田「…」

ススキ「…」

二人は、三メートル弱の距離を開けて歩く。

二人は決して仲が悪いわけではないが、これが地球から300億光年離れたアヌビス星では空気を吸うくらいお馴染みの光景だった。

N田「あっそういえば!」

ススキ「…」

N田「ススキお前!よくもあんな書き込みしてくれたなあ。」

N田「クラス中が見てるんだぞ!◯◯◯◯とかおまえ、ふざけんじゃねーぞ!」

ススキ「ははは」

N田「はははじゃねーぞ!」

N田「くそ!」

N田「おりゃああああ〜!」

ススキ「!!!!」

ススキ「おまえ、やめろ!」

ススキは思わず両手であたまを抑え…ではなく、周りを見回した後で近くに生えていた小高いコスモスのいっぽんに捕まろうとした!

しかし、次の瞬間…

ぶちっ(コスモス)

ススキ「あああああああ〜!」

ススキはNの磁力に吹き飛ばされて、空を飛んでいた。

ぶお〜ん!

ススキ「だから、やめろって言っただろ〜」

だろ〜(だろ〜…だろ…)

※こだま

N田「だはっ」

N田「つい、やっちゃうんだよなあ。」

N田「おっといけねえ。ススキには悪いけど学校へ行かないと。」

N田「遅刻する。」

アヌビス星、アヌビス国アヌビス高校1年1組の教室。


ススキ「さっきはさんざんな目にあった。」

ススキ「おまえはいいかもしんないけど、俺は電車通だからよ…」

ススキ「満員電車で隣のおじさん、おばさんとやっと改札口で引き剥がされて、毎日、まいっにち…」

ススキ「やっと一人になれたと思ったら、これだぜ…」

N田「だはっ」

N田「わりいわりい。」

N田「中学生以来喧嘩ってものをしてなかったから、なまってるんだよなあ。体が。不意に動くんだよ。こう。」

ジャブをするN田

ススキ「やめろって。」

ススキ「俺はN極。お前もN極。俺たちは死ぬまでお互いの間に反発力を感じ続けてなきゃならない。」

ススキ「お前みたいな筋肉バカが動くとなあ!」

ススキ「俺みたいなスリムな奴は毎日風に吹かれてくる号外新聞みたいに飛んでっちゃうんだぞ!!」

N田「はははは〜」

※ちなみに、二人が座っているのは大理石で出来た移動不可能な重量の椅子と机である。

このクラスは、アヌビス星の「磁力人間」が互いにくっついたり、飛んでったりしないよう計算し尽くされた配置で席割りをされているのだ…!


N田「はあっ重っ」

N田「おまえ、毎日あのマイナーチェンジ浴びてきてるの?」

ススキ「あたりまえだろ。」

N田「どんな感じ?」

ススキ「それは…」

※ススキの回想

N極の知らないおじさん「…」

S極の知らないおばさん「…」

N極の知らないおじさん「…」

S極の知らないおばさま「…」

ススキ「………」

ササミ駅へ向かう電車内。それはまさに、「だんご状態」といえる様子で人々はくっつきあっていた。

プシューっ!

「ササミ駅ー!ササミ駅ー!」

「駅員は直ちに、マイナーチェンジまで乗客を運んで下さい!」

ススキ「…」

マイナーチェンジというのは駅の改札口に設置された「磁力人間を無効化させるゲート」のことを言う。

マイナーチェンジをくぐった磁力人間は、互いに作用し合わない、「クリアな人間」になれるのだ。

そうしてやっと、電車や映画館のような「かたまりになって見る」場面の磁力から解放され、ほぐれた一つの個体に戻れるのである。

イッツ、サイエンス。←作者



ススキ「(くぐるぞ。今日も…)」

プシュ!キラーン!ワオン!シャラリーン!



ペイっペイ....!

ススキ「!!!!」

ちなみに、マイナーチェンジをくぐり抜けた効果は五秒しか持たない。

ススキ「これが、マイナーチェンジ…!(1978回め)」

しかし、その時を皆口ぐちに言う。「NでもSでもない瞬間、自分はまるで何ものでもないような、それでいて何かであるような、なんとも言えない心地がするんだ…』と…

ススキ「はあああああ」

ススキ「って感じかな。」

ススキ「なんとも言えないなあ。俺はいつも、NにもSにも近づき過ぎないようにしてるのが普通だから、普通がなくなる瞬間…っていうのは…パラダイス…いや、無…うぬぬぬぬ…とにかく「マイナーチェンジ、する!」としか言えないなあ…」

N田「ふうん」

マイナーチェンジが開発され、駅に設置された時は特に用事もないのにそこを通り抜けようとする小学生があとを立たなかったという。

N田「(まあ、俺は小学生の時死ぬほど通り抜けてるけどな)」

キーンコーンカーンコーン

N田「やべーっ。今日、学力テストじゃん。」

ススキ「俺はちゃんと範囲復習してきたぜ。」

N田「俺だって…」

せんせえ「はい、静かに静かにー」

せんせえ「今日は5時間目までずっとテストだからな。皆、こころしてかかるように。」

シーン…と静まり返る教室

全員が、ガチガチに固定された定位置に付いてプリントに鉛筆を立てている。

カリカリ…コリコリ…

N三田「…」

N三田「あのっ」

N三田「先生、わたしトイレに行きたいんですけど…」

ざわざわ…

せんせえ「N三田…」

せんせえ「本気か?」

N三田「…っっ」

N三田「しくしく」

N田「先生!N三田さんは休み時間ずううーっと自分のN Nチャットを見ていたのでトイレに行く暇がなかったんだと思います!」

N三田「うっさいわねえ!」

せんせえ「N三田。皆に迷惑かけるの分かってるのか。」

N三田「は…はい…すみません」

せんせえ「まあ、おんなのこに圧力をかけてたって仕方がない。」

せんせえ「男子生徒だったらペットボトルにしてろ!!っていうけどな!」

せんせえ「ハハハ!」

N田「先生!それはさすがにセクシャルハラスメントだと思います!」

ススキ「…」

せんせえ「全員!「コの字型配置」に移動だ!中心はN三田!」

せんせえ「さん、に、いち、」

せんせえ「はい!」

ザサーッ!と皆が配置に付く。

そうして教室から出る生徒を見送るのである。

小田エス「う…うく…」

ちなみにいっちばんはじにいる生徒は、大理石の机にしがみ付き、N三田の磁力にくっついて行かないようにこらえている。

N田「(トイレくらい行っとけよな)」

ススキ「(やべっ、なんかちょっとおしっこしたくなってきた…)」


これが、アヌビス星の磁力人間の日常である。

集団行動!一人は皆のため!皆は一人のために!!!

何故ならそれが「互いが安全に、心地よく暮らすため」の必要最低限の掟だと、身を持って体感しているからである!!

では、恋愛、結婚については一体どうなるのであろうか。

今この星で、そういった密なやりとりは「SSチャット」「 N Nチャット」というインターネット上の掲示板で行われていた。

何故なら、外は話してる間にも見えない磁力の風が吹きまくっていて、中断させられまくるからである。


以下、N Nチャット内プライベートルーム

ススキ「はあ。俺…」

ススキ「好きな人出来ちゃった」

N田「マジで?!」

ススキ「返事はやっ」

ススキ「おう…」

N田「だれ?!だれ?!同じクラスの女子?!」

ススキ「いや。部活のおんな」

ススキ「しかも N極」

N田「マジで〜?!お前ばかwww」

N田「結婚出来るわけないじゃんwww」

ススキ「だって、好きなんだ。」

N田「でも、いくら好きになっても死ぬまで反発力と戦うはめになるぞ。」

N田「歴史上でもオヌダ・マサムネとオノオノ・エヌコが N極同士で結婚したっていうけどな。そういう奴は幸せになれなかったっていうぞ。」

ススキ「知ってる。」

ススキ「おれ、聞いたんだ。父さんが製薬会社に勤めてるんだけど」

ススキ「「マイナーチェンジ」を増幅させる装置を開発したらしい。」

N田「ほお…」

ススキ「それによると、性転換…じゃない。磁力人間である俺たちは、極転換出来るらしいんだ。」

N田「へえっすごいな。」

N田「それさえあれば歴史的悲恋なんて怒らないし、もうお見合いしなくても、自由恋愛で相手を見つけられそうじゃないか。」

ススキ「ああ。」

ススキ「N田」

N田「なに?」

ススキ「俺…」

ススキ「S極になってもいいか?」

ススキ「……」

ススキ「……」

ススキ「……」

N田が退出しました。

ススキ「なんでだよ!!!」

ススキ「なんだか、なんだか恥ずかしいっ」

一時間後、N田のメールより。「ススキへ。思い詰めるのも良いけど、僕たちはまだ学生です。Nとか、Sとか、小説に書いてあるようなことはとりあえず置いておいて、まず勉強をしてください。それから、先走ってSになる前にその女の子の気持ちをまず確認してからにしてください。教科書とか名簿の書き換えを一人でするのはすごく虚しいと思います。僕はS極になったススキくんと、仲良くできるかどうか、まだ、分かりません…」


ススキ「あいつ、ふざけたふりしてめっちゃ考えてやがる。」

ススキ「…」

ススキ「N田には悪いけど、でも俺…」


◯三日後

N田「ふああ〜」

N田「ねむっ」

ススキ「N田」

N田「あ。」

N田「おはよー。」

N田「お前ずっと、休んでたけど風邪かなんか?」

ススキ「違うんだ。」

N田「あれ?!」

N田「何そのリボン?!」

ススキ「あっこれは…」

頭のリボンを取るススキ

ススキ「ちゃうのよ…」

N田「お前、話し方へんだぞ。」

N田「どうかした。」

持ち前のカンで、何か警戒しだすN田。

ススキ「ちゃうのんよ。」

N田「…」

ススキ「俺、やったんだ。「マイナーチェンジ」でなく「フルコンボ・チェンジ」ってやつを。」

N田「はいいいいい?!」

N田「やったの?!」

N田「え??!」

N田「じゃあ、お前今S極?!」

ススキ「うふっ」

N田「え?」

N田「待って、あの告白とかは?」

N田「お前…勢いあまって孤独死とかするなよ?!」

ススキ「しねえよ、ばあか。」

ススキ「いや、まずN田。俺に近づくなよ。」

N田「近づかねえよ。いつもの通り。」

N田「それはNにしたってSにしたっておなじだからな。」

N田「で?」

N田「その、愛しの彼女とはどうなの?」

N田「とりあえず、二人のSNチャットを開設できたわけ?」

ススキ「俺は…いや、俺たちは文字通り、ひとつになっちまったんだよ。」

N田「ひとつに????」

回想、二日前

プシューーーーーーッッ!!!

ススキ「はあっ」

「フルコンボ・チェンジ」から出てきて、光り輝くススキの体…

ススキ「変わった…?」

ススキ「分かるぞ!何か、いつもと違う…」

ススキ「マイナーチェンジの後とも違う!」

ススキ「これが、Sのパワー!」

ススキ「いや違う!引っ張られない!それに、押し付けられもしない!自らが地点となり、自と他を区別する「フルコンボ」パワー!!」

ススキ「俺はフルコンボススキだ!!」

ススキ「マル本さーん!!」

マル本「きゃああああああ!!!」

そして、二人はひとつになった!!!!

地球が、いや、マグナムメテオがひとつになった!!

フルコンボN極はとS極は互いに強力な磁力で引き合い、もう二度と、離れることはなかった!

ススキ「というわけなんだ。」

ススキ「なあN田」

N田「俺に近づくなあああああーーーーー、!!!!」


終わり

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ポエム、詩、短歌などを作ります。 最近歴史に興味があります。