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"間違いを認める勇気 : ジェイミー・リード氏の内部告発...その後" (翻訳記事)

私がトランスジェンダーのクリニックを内部告発したとき、一部の人々は、私が『右派に洗脳された』と暗示した。
いや、私は科学に従う進歩的な人間だ。
"Jamie Reed: The Courage to Admit You’re Wrong"

2024年1月1日配信 (掲載紙:ザ・フリー・プレス "The Free Press" )
By  ジェイミー・リード(元・ワシントン大学付属小児病院トランスジェンダーセンターのケースマネージャー) 

ジェイミー・リード氏が、ワシントン大学セントルイス小児病院トランスジェンダーセンターで4年間ケースマネージャーとして働くうちに知った未成年者への虐待について内部告発したことで、今年初め、私たちの紙面(ザ・フリー・プレス)は注目を浴びた。彼女の暴露は、ミズーリ州司法長官による同クリニックの調査に火をつけ、ミズーリ州や他の州の議員たちが未成年者の医療的ジェンダー移行を禁止する法律を可決するきっかけの一つとなった。

11月上旬 (2023)、リード氏はコロラド州ゴールデンで開催された、未成年者の医療的ジェンダー移行を阻止する団体「ジェンスペクト(genspect) 」の米国初のカンファレンスに招かれ、スピーチを行った。彼女の発言は、たとえそれが自分の政党の深い信念であっても、権威を疑うことについてであり、ジャーナリストとして、また市民として、私たち自身の使命を思い起こさせる重要な内容だと感じた。そこで、彼女のスピーチを編集したものを以下に掲載する。

私が2023年2月に内部告発者となり、ジェンダー違和(Gender Dysphoria)を持つ未成年者に対するひどい医療行為を明らかにした後、一般の人々から困惑するような反応を受けた。最も衝撃だったのは、私が自分の進歩的な信念に対する裏切り者だというものだった。

多くの批評家やメディアは、私だけでなくトランスジェンダーの若者の問題全体を、右派と左派の対決として描こうとした。"トランス男性" と結婚したクィア女性である私は、生涯にわたる左派の一員として、明らかに保守派に洗脳されたか、あるいは買収されたか、おそらくその両方だという。私には "明確なイデオロギー的偏見" があるとされる。私の故郷の左寄りの新聞でさえ、私の主張の内容や科学性よりも、代理人弁護士の政治的所属に関心を持っていた。

ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)のライター、エイズィーン・ゴレイシ(Azeen Ghorayshi)に会ったとき、彼女は私が根本的に変わったと主張し続けた。本紙ザ・フリー・プレスが初めて私の告発を報じた後、NYTの彼女の記事は8月に発表され私の説明をほぼ裏付けるものであったが、私のことを自分の核となる価値観を置き去りにした人間として描いていた。ゴレイシの言葉を借りれば、クリニックに入職してから私の考え方は "より硬化し、政治的になった" というのだ。

私は、その見解には丁重に同意しない。私はこれまで以上に政治的になったわけではないし、政治的でなくなったわけでもない。変わったのは、左派の多くの賢く善意ある思いやりのある人々と同じように、私自身が間違っていたことに気づいたことだ。

自分が間違っていると認めるのは最悪だ。謙虚になるだけでなく、他人を惑わすことに自分がいかに加担していたかをよく見なければならない。私は小児ジェンダー産業に熱心に参加し、何千人もの若い人たちを迷わせ、彼らの多くが主にカウンセリングを必要としていたにもかかわらず、薬学的に彼らの違和感を治療してきたことを全く良いこととは思っていない。しかし、私の進歩的な信念が間違った道に導いたのではない。実際には、その信念こそが、私が最終的に光を見るのを助けてくれたのだ。

私は民主党(米国)の基本原則を信じるように育てられたが、その中には、集団社会の利益のために個人の欲求を犠牲にするという意思も含まれていた。大学時代、私はラディカル(急進派)になった。反資本主義、反グローバリズムを掲げた。ノーム・チョムスキーハワード・ジンデリック・ジェンセンといった左翼のヒーローの本を読んだ。アナーキストのコレクティヴ(集団生活体)で暮らし、2000年のブッシュ対ゴアの大統領討論から2003年のイラク戦争・侵攻まで、あらゆる抗議デモでペッパー・スプレーを浴びた。私は何十年もの間、ラディカル左派に深く組み込まれたままだった。憶えている限りずっと当初から、私はトランスジェンダーの権利を信じ、闘ってきた。私と仲間たちは、厳格なジェンダー役割分担やジェンダー適合の考え方に反発していた。男と女はこうあるべきだという古い考え方は時代遅れで、抑圧的だった。しかし、私たちは自分の体を決定的に変えようとするのではなく、文化を変えようとすることでこれらの問題に取り組んだ。

2008年に27歳で母親になったとき、私は急進的なエクストリーム主義から離れ、より中道的で主流派のリベラリズムへと向かい始めた。しかし、当初の基本的な理想を手放したことはない。

2018年にセントルイス小児病院で働くことになったのも、私の信念があったからだ。センターが行っていることは重要であり、私たちは必要のない苦しみを防ぎ、若者がようやく本来の自分になれるよう手助けしているのだと固く信じていた。

地獄への道は善意で舗装されている。

私たちは善意を持っていたが、誤った知識を持っていた。私たちは2011年から2014年にかけて発表されたオランダの研究(オランダ・プロトコル)をよく理解しておらず、多くの左派と同じように、ジェンダー違和(GD)のある10代の若者に医学的介入を行うことで、こうした子どもたちの生活が大きく改善されることが証明されたと思っていた。英国で唯一の子どものための性同一性クリニックであるタヴィストックで何が起きているのか、私たちは知らなかった。
同クリニックはその拙速な手順に基づいた医療問題が報じられ、次の年に閉鎖されることとなった

私たちは、自分たちが取り返しのつかない医療被害を与えていることに気づいていなかった。しかし、私たちが次第に賢くなり始めたとき、私のリベラルな世界観全体が蒸発して消えたわけではなかった。どちらかといえば、私の見解を補強しただけだった。

自分が間違っていることに気づいたとき、これまで教えられてきたことがすべて嘘だったというような結論には即座に至らなかった。むしろ、もっと警戒し、情報を得たいという欲求を掻き立てられた。私は自分自身を教育するため、多くの研究を読み、ざっと流して読むだけでなく、深く勉強し、自分のバブルの外にいる人々、賢い人々の意見に耳を傾けるようになった。

私の知る左派は、科学は現実であり、本物だと信じている。たとえ政治的な主張と矛盾していても、科学的な証拠(エビデンス)を受け入れる。私の知る左派はいじめや攻撃に屈しない。だから私のような内部告発者が存在するのだ。Dr アンナ・ハッチンソン(訳注:英タヴィストック・クリニックを告発した臨床心理学者の一人)が存在するのも、Dr リイッタケルトゥ・カルティアラ博士(訳注:フィンランド・タンペレ大学の思春期精神医学教授)が存在するのもそのためだ。

私は自分のルーツに戻った。権威が間違っていることが明らかなときには、権威を疑うことをいとわないアナーキスト・パンクに戻ったのだ。幼い頃から私を導いてくれたコアとなる価値観に立ち返った。それは、「左派が常に善なる人々である、と思い込むこと」ではない。私は世界を、誰にとってもより安全で健全な場所にしたいと思った。

大人になるということは、責任を受け入れることであり、学ぶことを止めるべきでない事実を理解することだ。政治的に極端なものや他の何かを見つけて自分の立場を貫くことではない。私たちは皆、もっと聞く耳を持つ必要がある。「自分がすべてを理解している」と確信した瞬間に、それは明らかに間違っている。

私には2歳から15歳までの5人の息子たちがいる。私が歩んできた道とは違うかもしれないが、子供たちには自分の信念に情熱を持ち、闘う価値のある理想を見つけ、答えを探し続ける姿勢を持ってほしい。子供たちには世界を探求し、あらゆることに疑問を抱き、心の底から震えるような本を読んでほしい。

そして何よりも、間違いを犯したとき、それを認める勇気を持ってほしい。
「間違っていた。次はもっと正しく行動できるし、必ずそうする」

私たち全員がそれを言う優しさを持ち、それを本心で言える世界を想像してみてほしい。

By  Jamie Reed(ジェイミー・リード)
ジェイミー・リード氏は、経験を持つ医療ソーシャル・ワーカーであり、元・ワシントン大学付属小児病院トランスジェンダーセンターのケースマネージャーである。

原文掲載紙:ザ・フリープレス("The Free Press")
"Jamie Reed: The Courage to Admit You’re Wrong"
https://www.thefp.com/p/whistleblower-jamie-reed-courage-admit-wrong

(The Free Press は ニューヨーク・タイムズ出身ジャーナリストのバリ・ワイスによって2021年に設立された独立系メディアである)

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