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 波打ち際の蛍 著:島本理生

 川本麻由と植村蛍のラブストーリーでした。麻由は性暴力を受けた事のある恋愛遍歴の持ち主で蛍に好意を抱いていても、その先に容易には進めない足枷があります。蛍の優しさと麻由のジレンマが最後お互いに手紙を書いて昇華してエンディングでした。

 ほとんどの描写は麻由のトラウマとの葛藤です。背の高い従兄弟のさとる君に助けられ、蛍に見守られ、楠本さんの紹介で仕事にも復帰しますが性暴力からの回復には余程の神経が必要な女性の繊細さを書き連ねています。

 痴漢に遭った女性教師が結婚後も旦那さんとの行為の中で痴漢がフラッシュバックして性行為に臨めないと言うドキュメンタリーを見た事がありますが、それと同じで麻由には作家になった元恋人から酷いDVを受けていてカウンセリングに通っていました。OD(オーバードーズ)して病院で胃洗浄して繋ぎ止めた命だったからです。

 その病院で知り合った蛍は海と山で壮大な景色の中で二人とも好意を抱いて麻由は感動します。その描写はとてつもなく美しかった。島本理生さんもあとがきでこの作品は充実した作品になったと自信を深めているご様子です。

 早く『Red』と『シルエット』と『ヨル』で島本さんの原風景が色濃く残る作品を読みたいと思いました。

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