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 ハンチバック 著:市川沙央

 裕福な家庭に生まれた主人公はハンチバック(せむし)と言う難病を抱えてた。

 ミオパチーと言う筋繊維の病気で背骨が曲がり、カニューレでの痰吸引が必須なのだ。両親の残した自宅兼グループホームの施設で通信大学のカリキュラムを熟し、コタツ記事を書きながら、慈善機関に寄付をすると言う生活なのだが、普通に育っていたら子供を産んでいただろうと、性に関して捻れた願望を持っていた。産む事は出来なくても堕胎する事なら私の身体でもできる。

 そして、ここからはネタバレになるが、慈善にお金を費やしてる主人公を恨めしく思うグループホームの従業員の田中が主人公のTwitterアカウントを読んでいたのだった。性に対しての歪んだ渇望を知っている田中に入浴をさせられる事になってしまった。コロナで人手不足になったので異性である田中に渋々お願いする事になってしまったのだ。

 ぶっきらぼうな田中にでも、田中君にも欲しい物はあるでしょ?と主人公は問い、田中はお金が欲しいと言った。一億くらいと。それを笑ってしまえる程、裕福な資産を持っていた主人公は性欲を満たす代わりにお金をあげると提案する。

 ハンチバック(せむし)な主人公はコタツ記事の活字媒体で性の知識や男性の願望には一通り目を通していた。性飲しかけて気道が塞がり、カニューレで吸引しきれなかった田中の精子は誤嚥性肺炎となり、主人公は入院する。

 その一件で田中はグループホームは辞めてしまった。

 エンディングはハンチバックじゃなかったらこんな風に生きてたのかなと言う主人公の別の娼婦としての素顔を対比して終わりだった。93ページとかなり短めの作品での芥川賞受賞となっているようだ。

 文章の隙間に垣間見るリアリズムが胸に食い込んで来るようだった。健常者であるのがどれだけ救われる事か、どれだけ日本は障害者に冷たく遅れているか、健常者でもどれだけ乾いた世界を生きてる事か、一点に見つめられて心の中を透視されたような読後感覚は芥川賞ならではだし、市川さんにしか書けなかった佳作なのだろうと思う。

 以上

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