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鶏の唐揚げにレモンをかけるかどうか問題の結論

インターネット上で議論になることがあるこの問題だが、僕の中では結論が出ている。
最初に、結論を述べよう。
一口食べてから検討するべし

どういうことか?
当たり前だが、鶏の唐揚げといっても色々だからだ。
鶏の唐揚げはハズレが少なく、どこで食べても概ねおいしいという指摘もあるが、本当にそうだろうか?
実は鶏の唐揚げってとても難しい料理で、外国産の安くて水っぽい鶏肉を使っている店が9割以上。
柔らかくてジューシーなので唐揚げに適しているからだ。
つまり素材より調理の割合が高い料理なので、料理人の腕に応じて旨さの差が大きくなるのだ。
もちろん、高品質の国産鶏肉を上手に調理すれば、素晴らしい鶏唐ができるはずだが、そういう鶏肉を扱う店は鶏唐を出さない。
理由は簡単で値付けが低くなるからだ。
鶏の唐揚げごときがなぜこんなに高いんだ!と言う客を相手にしなければならない店ではリスクが高い。
そんな野暮が来ない高級店では客が望めばいい肉といい油を使い、高いけれど旨い鶏唐を作ってくれるが、今回は検討から除外する。

さて、調理によって味に差が出る料理なので、それをどう食べれば最もおいしくなるかは食べてみなければわからない。
例えば、高品質ではないけれど新鮮な鶏肉をキレイな油で揚げてあれば、クリアな鶏の肉汁が感じられるはずだ。
そういう鶏唐にレモンが必要か?と問われると、僕なら不要と答える。
レモン果汁は酸味が強すぎるからだ。
ただし、たくさん食べるなら、途中で味変に使うかもしれない。

しかし、鶏肉が冷凍焼けしていたり、油が悪かったりした場合はどうか?
そんな鶏唐は残せばいいと言われるかもしれない。
だがランチタイムに頼んだ鶏唐定食がそんな状態だったら、なんとか食べるしかない。
目の前の鶏唐を少しはマシな味にして食べないと午後からお腹が空く。
僕は何度もそういう経験をした。
その時、レモンは大いな救いになる。
レモンの強い酸味が悪い油の匂いを誤魔化してくれるからだ。
さらにウスターソースを加えるとスパイスが風味の悪さを隠してくれる。
要は鶏唐次第なのだ。

まず食べてみて、レモンが必要かどうかを判断する。
必要なら搾ればいい。
不要なら使わなければいいし、なんなら口直しに齧ってもいい。

皿の上に添えられているのだから使うべきだと主張する人がいるけれど、ワサビだって多すぎたら全部使わなくていいし、醤油皿の醤油を全部使い切るよう刺身をヒタヒタにして食べる必要はないし、うどんやラーメンの汁だって全部飲み干さなくていい。
むしろ使わない自由を尊重するため添えてあるのであって、搾ることによって料理が完成するのであれば、搾った状態で提供するべきだろう。
つまりレモンの要否は食べ手に委ねられているのだ。

ただし、この問題には別の切り口がある。
合コンやデートで鶏唐が出てきた時、すぐにレモンを搾ることによって気が利く人アピールをしたいという場合だ。
いかに素早くアピールするかの勝負なので、僕のようにまずは味を確かめて…とか言ってたら変人扱いされる。
料理じゃなくて、自己アピールにフォーカスしているので視界がまるで違うのだ。
僕のような面倒くさい人がいなければ、気が利く人だと思われるかもしれない。
逆に料理の味も、各人の好みも確認せず、全ての唐揚げにレモンを搾るなんて気が利かない人だと思われるかもしれない。
これもまた、同席者に応じて検討するべしということになる。

ちなみにこの技はアジフライや牡蠣フライにも応用できる。
最高レベルにおいしい海鮮フライには醤油が最も合うと僕は考えている。
少量の醤油をサッとかけて、サクッと食べれば醤油の香ばしさと油のいい香り、そして内側から海鮮の豊かな味と香りが立ち上がってくる。
刺身を醤油で食べるように、海鮮と醤油の相性は最高なのだ。

その次に使えるのはタルタルソースだろう。
タルタルソースはそのものがおいしいので、フライのおいしさがちょっと足らなくても補ってくれる。
醤油では物足りないと感じたら、タルタルに逃げれば大丈夫だ。

このフライはちょっとイマイチだと思ったら、ウスターソースを使うべし。
先にも書いたがスパイスと酸味が素材や油の悪さをいい感じに誤魔化してくれる。
もちろんレモンが添えてあれば搾るべし。
どうせなら少しでもおいしく食べたいではないか。

ちなみに塩は料理の味を上げもしないし、下げもしない。
醤油もタルタルもウスターも、料理の味を引き上げるが、塩はフラットだ。
海鮮に加える塩は、素材にデフォルトで含まれる塩分を人間の心地よい味覚に合わせて引き上げるだけ。
だからプラスにもマイナスにもならない。
ただ難しいのは適量を見極めることで、小皿の出された塩にちょんづけして食べる場合、量の加減が難しい。
僕のように日々料理をする者ですら難しいのだから、料理しない人が適量の塩を料理に付着させるのは困難に決まっている。
それなのに時々「塩でお召し上がりください」という店があるので、僕は心の中で「適量の塩を振ってくれればいいのに」と考えている。
特に天ぷらは料理人が振り塩したほうが適切な塩加減になるはずだ。

さて、色々書いたが、大切なことは目の前の料理に向き合うことだ。
概念としての鶏唐に対して、レモンの要否を検討しても答えなんて出ない。
目の前にあるリアルな鶏唐を食べ、最もおいしく食べるにはどうしたらいいのかを自分のアタマで考えるのだ。
こんなことを書くと嫌われるが、普段から考える訓練をしていないと思考するための体力は育たない。
肉体を鍛えていないと動き続ける体力が得られないように、普段から考え続ける習慣がないと思考継続力という体力は得られない。
脳も身体も鍛えていなければ衰えるのだ。
脳の体力がないと思考が面倒になるので、用途が明示されていない薬味などの変数を考えることができなくて、全部使ってしまえという思考放棄になる。
面倒くさがらず、今日のご飯をもっとおいしく食べるにはどうしたらいいのかを考える癖を身に着けてほしい。
これは仕事やプライベートを充実させるスキルでもあるのだから。

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