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聖杯戦争候補作

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つのが某所に投下した亜種聖杯戦争の候補作。落選多数。 鯖や鱒はご自由にお使い下さい。
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#人が死ぬ

【聖杯戦争候補作】Underworld Refuge

曇り空の朝。京都市内の、とある公園、のトイレ。 ボロボロの自転車に薄汚い大量の荷物が積まれ、地面にまで散らばっている。毛布、衣類、空き缶、空き瓶、カラの弁当箱、雑誌や本。近くにはダンボールとブルーシートで作られた、小さなねぐら。典型的なホームレスの棲家だ。 この町にも、ホームレスが多少はいる。大概の場合、市民は彼らを無視する。時にはお役所から「支援施設に入りなさい」とのお達しも来るが、入る者も入らぬ者もいる。 ねぐらには何枚かの毛布が敷かれ、男が一人くるまって、イビキを

【聖杯戦争候補作】Neo-Yakuza for Sale

「なかなか風情があって、ええとこじゃのう」 夜。ネオンきらめく歓楽街の真ん中を、一人の酔漢が歩いていく。 年齢は二十代前半。中折れ帽にティアドロップサングラス、ダボシャツにダボズボン。腹巻きに雪駄履き。口には爪楊枝代わりのマッチ棒。黒髪の短髪にゲジゲジ眉毛。背丈はそれなり、筋骨もしっかりした男だが、その顔たるや兇悪そのもの。口から出るのは広島弁。三百六十度どこから見たって、昔の任侠映画から抜け出てきたような、完全なヤクザである。しかもチンピラや三下ではない。強烈な殺気が全身

【聖杯戦争候補作】Hungry Ghost

はっきり言っておく。人の子の肉を食べ、その血を飲まなければ、あなたたちの内に命はない。                      ―――『ヨハネによる福音書』6:53 ◇ 腹が減った。 子供の頃から、空腹は慣れっこだ。訓練も兼ねて、何日か食事ができないこともザラにあった。あの世界ではそれが普通だった。飢えて死ぬ奴も大勢いた。体が資本のあの組織に入って、ようやく毎食にありつけた。一宿一飯の恩義というには、随分と仇で返してしまったけれど。 この空腹は、そういうのとは違う。

【聖杯戦争候補作】ホーリー・グレイル・ヴァーサス・フューリー・ソウル

◆◆◆◆◆◆◆ 010001010110月11010010下10100010101検101101001閲01 「こんなのってないぞ……聖杯戦争いい加減にしろよ……」 痩せて小柄、黒髪でショートボブ。永久脱毛した眉毛の代わりにイバラめいたタトゥー。テックジャケットにジーンズ、エンジニアブーツ。首には「地獄お」とレタリングされた赤いマフラー。彼女の名は、エーリアス・ディクタス。今、彼女に生命の危機が迫っている! 「■■■■■■■■■■■■!」 ナムサン!狂乱の叫びと共にエ

【聖杯戦争候補作】兆し

モンスター【英:monster】 怪物、化物。語源はラテン語「monstrum(不可思議なもの、奇怪なもの、正体不明の怪物、驚異)」で、動詞「monere(警告、忠告、予兆)」に遡る。 古代人にとって、驚くべき出来事や奇怪な生き物の出現は、神々から人間への警告であり、何か異常なことの前兆であると考えられていた。 monition(警告)、premonition(予告)、monitor(忠告者・監視者)、monument(記念碑)なども、同じ語源から派生している。  ◆ ◇