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【FGO EpLW ユカタン】結尾 到着(アライヴァル)と出発(デパーチャ)

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チクシュルーブ・クレーター。白亜紀末の恐竜絶滅をもたらした、巨大隕石の衝突痕だ』

ダ・ヴィンチの説明に、キャスターが補足する。
『普段は地層の底に埋もれてて、こンなふうには見えねえだが、ウォッチャーだか神々だかが「門」として開いただな』

そんなもんが、ここにあったとは。そういやテレビかなんかでやってたような記憶が、なくもない。つっても、ここが門だってぇなら、またダイビングでもしろってのか。俺あんまり泳げねぇんだよな……。
と、船は向きを変え、南へ……陸地へ向かう。視界も通常に戻ってきた。海と陸の半円の中心、つまり、大穴の中心だ。

「おーい、こっちこっち」

その中心地の浜辺に、馬に乗った仮面の男が一人。……また、あいつか。
「や。あいつは倒したようだね、諸君。流石だ」

セイバーの野郎だ。馬でユカタン半島を横断して、あるいはセノーテを使って、ここまで移動してきたようだ。アサシンとランサー、シールダーが肩をすくめ、アーチャーが微苦笑する。

船は滑るようにそっちへ動き、停まってタラップを下ろす。ここで降りろってか。一応シールダーを先頭にして、全員でぞろぞろと降りて行く。セイバーの背後には漁村があり、村人が恐る恐る窺っている。

「おかげさんでな。お前の宝具は魔力の燃料になって、消えちまったが」
「まあ、役に立ってよかった。今更あいつの下につくのも癪だったし、これでいいさ。あいつが欲しがっていた新世界も、その住民も見れた。こんな立派な文明世界を、私の子孫は随分と蹂躙してしまったようだね」
「そうね。いろいろあったけど、アタシは別に謝罪は求めないさ。魂もたっぷり食えるようになったし、イヒヒ」

意地悪そうに笑うアサシンの答えに、セイバーは爽やかに笑う。どっちが悪党だかわかりゃしねぇ。ま、こいつがここへ来れたんなら、地元の神々に受け入れられたってことだろう。悪いヤツじゃねぇんだろうが……。

『おはよう、セイバーくん。えーと真名は「エル・シッド」だったね。よく知ってる。私はカルデアの責任者になってる「レオナルド・ダ・ヴィンチ」だ。よろしく!』
「え、あ、ああ、よろしく。セニョール……セニョリータ?」
『ふふ、どっちで呼んでも構わないが、「ダ・ヴィンチちゃん」とでも呼んでくれ給え! ところで、その仮面は……』

ダ・ヴィンチがセイバーをからかって笑う。まぁストレス発散してくれ。

セイバーが苦笑し、話を戻す。
「ええ、いろいろあったと思うが、ここが終点、クレーターの中心だ。ウォッチャーからの伝言では、ここから次の特異点に行けるそうだ」
『ここでもウォッチャーか……しかし、特異点から特異点へ移動するなんてねえ。カルデアの存在意義が……』
「……ついてくるサーヴァントが多いと、有り難ぇんだがな」

そう言って、サーヴァントたちのツラを見回す。次もどうせ、ひでぇ戦いになるんだろう。いっぺんに出せるのは少なくても、予備戦力は多いに越したこたぁねぇ。
『シールダーとキャスターを含めると、アサシン、ランサー、アーチャー、セイバーで六騎か。充分な戦力だね』

ダ・ヴィンチが明るく告げるが、セイバーとアーチャーは首を振った。
「いや、私はここでお別れだ。一度『英霊の座』に還らないと、宝具が再生できないっぽいしね」
「儂もだ。結果的に負けたとはいえ、お前たちの仲間に加わるつもりはない。……まあ、召喚できたら仕えてやってもよいがな」
アーチャーが薄く笑った。ま、しょうがねぇ。こいつらはもともとカルデアとかにもいねぇ、野良だしな。
「ああ、無理強いはしねぇ。じゃあキャスターとシールダーと、後は……」

ランサーとアサシンが進み出る。
「拙者は、一応正式に主従契約を交わした身。斃れるまでは、お供致そう」
「アタシは……んー、本音を言うと残りたくもあるけど、ついていくのも面白そうかなァって。契約はめんどいから、今はナシね」
「おう、よろしく頼まぁ。あんまり頭数増やすと、俺もきついしな」

続いて、キャスターとシールダー。
『おらは、前も言ったが人類を救いてえでよ。事態が解決するまでは、お前さンをサポートするだ』
「わたしも当然、先輩を奪還するまでご一緒します。あくまでも仮のマスターとして、ですが」

無言で頷く。あんまり信頼はされてねぇようだが、こいつらがいねぇと、俺じゃどうしようもねぇ。ちと軽口でも叩いとこう。
「そういやよぉ、お前さんの大事な『センパイ』とやら、アレか、いい仲なのか」
シールダーが頬を赤らめ、顔を俯ける。ああうん、まぁ彼氏持ちの女を寝取る趣味はねぇが……

『えと、いい仲はいい仲だけど、藤丸立香は女性だよ。言い忘れてたっけ』
ダ・ヴィンチの補足に、少しよろける。なんだ、そういう趣味か。別にいいけどよ。

「―――で、次の特異点は、どうやって行くんだ」

セイバーが頷く。
「我々が送り出す。ライダーが残したこの船を魔力に戻し、二騎のサーヴァント―――つまり私とアーチャーが、穴を開くんだと。行き先がいつのどこなのかは、我々には知らされていない。行ってのお楽しみってことだね」
「儂もか。まぁここまで付き合ったからには、無事送り出してくれよう」
アーチャーが笑い、セイバーと相談する。じゃ、こっちも準備しとくか。つっても、荷物はねぇが。

「んー……ダ・ヴィンチさんよ、行き先がいつのどこだか、そっちじゃわからねぇか……」
『ああ、行き先は―――カルデアスをウォッチャーが戻してくれないと、ちょっとね……こちらからは助言しか出来ない。すまない』
「仕方ねぇさ。あんたが悪ぃわけじゃねぇ、俺もあんたらも、ウォッチャー野郎の被害者だ。ま、行ってみりゃわかるだろ」

ウォッチャーか。あの野郎の言いなりになるのもシャクだが、なんか考えがあってのこったろう。普通に世界を滅ぼそうってんなら、別に俺をマスターに立てる必要も、サーヴァントたちに護衛させる必要もねぇ。俺たちをサポートしてくれるんなら、せいぜい有難く乗っからせてもらうだけだ。命あっての物種よ。

「歴史にゃ詳しくねぇが、要は歴史上の事件でゴタゴタしてるとこに、今回みてぇにサーヴァントどもが出てくるんだな」
『基本的にはね。例外ばっかりで怪しくなってきたし、なにせイレギュラーずくめだ。何が起こるかは……』
「ウォッチャーのみぞ知る、ってか。……お、準備ができたみてぇだぜ」

セイバーが合図をし、全員に呼びかける。アーチャーは浜辺に立ち、セイバーはやや離れ、海に入ってアーチャーと向かい合う。
「よし、準備ができた。私とアーチャーの間に入ってくれ。転送する」
どやどやと俺&キャスター、シールダー、アサシン、ランサーが集まり、並ぶ。シールダーの近くにダ・ヴィンチのモニターも浮かんでいる。

「んじゃま、頼まぁ。……ところでアーチャー、お前さんの真名を聞いてなかったな」
アーチャーが片眉を上げ、訝しむような顔をする。いや、他意はねぇんだ。
「……そうだったか。ふん、儂を召喚するのに名を知らぬではできまいな。よかろう、土産に名乗ってくれる。儂の真名は『冒頓単于』。なぜか女になっておるが、本来は男だ」

ダ・ヴィンチとランサー、シールダーは驚いてるが、俺は全然知らねぇ名だ。サーヴァントになると女体化することもあんのか。
「ありがとよ。ま、縁がありゃ会おう。次も女の方がいいな、俺は」
「やかましい、次は男で喚べ。儂は、そこのダ・ヴィンチとやらのように、女になりたいと思ったことすらないぞ」
『サーヴァント召喚システムって、わりといい加減だからねぇ……興味深いが、まぁ努力するよ』

「おーい、そろそろいいかな、アーチャー」
「ああ、待たせた。いつでもいいぞ」

気を取り直して、転移に備える。バラバラにならねぇように、ひっついてた方がいいのかね。
しかしランサーはごついし、シールダーはアッチだし、アサシンは……頬が腐ってなけりゃ、いいんだがな。

「アスタ・ラ・ビスタ、カルデアの諸君。縁があればまた会おう!」

シールダーとアーチャーが両手を掲げ、ライダーの船を魔力に還元し、転送ゲートを開く。空間が歪み、地面が揺らぐ。
次の特異点もこれをやる必要があるのかは、まあ行ってから調べるとしよう。ウォッチャーがなんか用意してく10100101011100110

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まあだだよ


目の前に、でっけぇ髑髏。なんだここは。転送途中に、どっかに迷い込んだのか。

『迷い込んだ? ノン。オレ様が連れて来たのさ、◆◆◆。周りを見てご覧なさぁい』

髑髏がカタカタ嗤う。この声は、あれか、ウォッチャーの野郎か。なんか言ってやりてぇが、声が出てこねぇ。
言われるままに周りを見回すと、暗い、昏い、水の中。声が出ねぇわけだ、肺の中まで水で満たされちまってる。気泡すら出ねぇ。下を見れば、髑髏、髑髏、また髑髏。なんだ、オイ、俺はさっきの水の底で溺死してたのか。顔の周りにキャスターはいねぇのか。他のサーヴァントたちは、どうした。ウォッチャーの野郎がどうにかしたか。今から何をやろうってんだ。

『んー、どれから答えてくれようか。ああ、声出す必要はねえぜ。あんさんの思考がダイレクトで読めるから、オレ』
そりゃ便利だ。何から答えさせてやろうか。ええと、俺は死んだのか……。
『そーね、死んだようなもんだが、オレ様が生かしてやってるのさ。感謝しな』
そうか、ありがとよ。じゃあ、ここはどこだ。お前は、まぁ悪魔だとして、俺をどうするつもりだ。

髑髏は莞爾と微笑んだ。髑髏のアルカイックスマイルなんか見たくもねぇ。
『ここはね、海の底さ。天使野郎がくたばって、水が溢れ出して、今は特異点全部が水没してると思いな』
そんじゃ、さっきまでの船の上とか、シールダーとかキロスとかダ・ヴィンチとか、セイバーやアーチャーのあれは、なんだ。
『いろいろ説明しとこうと思って、めんどくせえから並行世界からヴィジョンを引っ張って来て……まあ、あっちもこっちも本当さ』

なんだかわからねぇ。俺はこのまま、死んじまうのか。
『いんや。次の特異点へ送り込むのさ。サーヴァントたちは一旦預からしてもらって、いろいろ弄ってから返してやるよ。ここは要するにだ、オレがお前に補足の説明を行うための、控室。そういう世界』
俺が溺れ死にそうな控室なんかあるか。なんでもいいや、結局俺は無事なんだな、ならいい。次も死なねぇ程度にサポートしてくれや、悪魔さんよ。

『はいはい。ところで無知なアメリカ人よ、「カスタ戦争」って知ってるかい?』
知るかよ。カスタード・クリームを巡って戦争が起きたってのかよ。
『カスタ、カースト、血統、階級。お前さんは知るまいが、社会にゃ人種の壁がある。19世紀中頃にな、さっきのユカタン半島で先住民の大反乱があった。それがカスタ戦争さ』

髑髏の頭頂部から、なんか巨大な柱が伸びた。これは……十字架だ。髑髏の上の十字架。

『ゴルゴタ。カルヴァリオ。アダムの頭蓋骨……イヒヒ。奴らは独立を目指し、半世紀もの間戦い続けた。その時、一つの啓示があった。偉大な啓示だ。この十字架(クルス)の下に集い、千年王国を樹立せよ、と』
なんだ、おい、何を見せようってんだ。俺はキリストじゃねぇぞ。カルトに興味もねぇ……。
『薄ぼんやりと、頭の片隅に覚えておきゃいいのさ、◆◆◆。十字架の下には、死体が埋まっている……そういうことを。詳しくはググってみなさい。 それじゃあアディオス、逝ってらっしゃいNEW特異点。ゴートゥー・シンギュラリティ!!』

十字架が回転する。髑髏が回転する。白い立方体が目の前に……

亜種特異点 A.D.1000 新聖至福千年紀 ユカタン

定礎復元

To be continuied…

◇□◇

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