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【FGO EpLW 殷周革命】第十節 大聖羅刹闘佛契

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(あらすじ:平天大聖蚩尤将門公VS羅刹王メーガナーダ! 仏契[ぶっちぎり]の大魔王同士が激突!)

ウシミツ・アワーの夜空に、稲妻が走る。天地が鳴動する。東南から、東北から、二柱の魔王がやってくる。どちらも、まずはここ、孟津の三つの鼎を狙うだろう。シールダーは覚悟を決めた。
「先輩、わたしに力を……――――?!」

その目の前に、四匹の大蛇が牽く二輪戦車が瞬時に降りてきた。その上に乗るのはキャスター・チャーナキヤ、水晶髑髏を被ったマスター、そして。
「貴方は……!?」
見下ろすは赤褐色の輝く魔神。額には眼と角。手には大きな弓と、投槍めいた異形の矢。つまり。

「小娘。お前がシールダーか。何者か知らぬが、あのライダーの攻撃を押しとどめたこと、少しは褒めてやる。おれはアーチャーだ。ひとまずは、お前らに加勢してくれる。その鼎を貸せ」

シールダー、アサシン、セイバー、周王は困惑する。魔王の一方が我々に味方するなど。どういう気紛れか、それとも策略か。しかし、マスターたちが、そこに。

「シールダー! つべこべ言うな、この御方に味方しろい! もうそれしかねぇ!」
「彼を説得し、一応味方につけました。ライダーと戦って下さるそうです」

マスターとキャスターズが雲の戦車を降り、シールダーたちに事情を説明する。信じがたいが、あのメーガナーダが。周王、セイバー、アサシンが順に頷いた。ダ・ヴィンチに諮る時間もない。ならばもはや、何をか悩まん。
「分かりました! 感謝します! 存分に力を振るって下さい!」
シールダーはタフに笑い、鼎との接続を一時解除。そして右掌を掲げた。
「なんだ」
「ハイタッチです! 選手交代!」
アーチャーはきょとんとした後、その掌に真顔で掌を軽く当てた。それから三つの鼎に両手をかざし、真言を唱えて魔力回路を接続する。

「オーム・アー・フーム……ダルマ・サムボーガ・ニルマーナ・カーヤ!」

三つの鼎が飛来し、アーチャーに吸収される。戦車がすーっと上昇し、上空の暗雲を貫く。その暗雲全体が一度に輝き、夜の闇を真昼のように照らす。雷がアーチャーに集まる。一瞬遅れて、百万の戦車が一斉に走り出すような轟音。

雲間に巨大な、山より巨大な、光り輝くアーチャーの姿が垣間見える。荒振る神だ。雲の戦車を踏まえ、十一の顔をあらゆる方角に向け、一千本の腕で各々弓を引く。開いた口からは恐るべき咆哮。

「「「『降雷蛇索箭(インドラジット・ナーガパーシャ)』!!!」」」

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ゴウランガ……。東南へ無数の雷が走り、暗雲と濃霧を切り裂く。一千の太陽が一度に出現したように、東南の空が燿く。そして、雷鳴が炸裂。

『『『―――――!!!』』』

孟津まで百数十km、現代で言えば河南省許昌市禹州。淮水流域を泥海に沈め潁水を遡って驀進してきた蚩尤の魔軍が、百万鬼夜行が、ここで食い止められる。上空から一斉に落雷。雷の一筋一筋が無数の雷蛇に分裂し、妖怪たちを縛り上げ、一匹残らず焼き滅ぼしていく。まさに天羅地網、アビ・インフェルノ・ジゴク。孟津にいる一同の目の前には、その様子がありありと映写されている。アーチャーの幻力(マーヤー)によるものだ。

「凄い……!」「ワオ……」「ヤバ……」「ム……」「……」「……」『……』
一同、言葉もなく呆然と立ち尽くす。神話の神々の戦いが、目の前で繰り広げられているのだ。
『……えと、マシュに呼ばれて急いで回線開いてみたけど、何、これ』
ダ・ヴィンチもモニタの向こうで呆然としている。アーチャーが幻力で孟津周辺の磁気嵐を鎮めたため、回線が開けたらしい。シールダーとキャスターズが事情を短く説明すると、顎を外さんばかりに驚いた。

だが。

「「「ほう………通じぬか。面白いな」」」
アーチャーの声が天空に轟く。爆煙が晴れた後には、山の如き三十七騎の蚩尤だけが堂々と立っていた。盾で防いだ、というだけでもない。

『『『……金剋木……或イハ菅公、天満大自在天神ノ加護カ……イズレニセヨ、我ニ最早、雷ハ通ジヌ』』』

グググググ、と蚩尤たちが嗤う。彼らにも原理はよく分からぬようだ。青褪める一同に、ダ・ヴィンチが推測を叫ぶ。
『ダメだ……アレはおそらく「ビースト」……もしくは、それに限りなく近い何かだ!』

それを聞いてシールダーが脂汗を垂らす。ダ・ヴィンチは興奮して続ける。
相剋。人類悪の顕現たるビーストは、人類によってしか……人類史から生じた英霊によってしか、討つことは叶わぬ。彼は、すでにそれに近い。人類とは別種の羅刹族であるメーガナーダでは、どうあがいても倒せないのだ。

「……だ、そうです。アーチャーさん」

「「「そんなものか。まあ、その手の頓智問答は、神話にはよくあること。
我が父ラーヴァナも『人類(マーナヴァ)からの攻撃に対する不死』を願わなかったゆえ死んだのだしな」」」

アーチャーは特に動じない。なにしろ彼は神話世界の存在であり、神々にも一度は勝利した大魔神。神霊ではないにせよ、根本的に人間ではない。今ここにいる彼はその記憶から再現された、紛い物の切れ端に過ぎない。今の恐ろしい攻撃も、本来の、かつての彼からすれば、もどかしいほどの力不足。

「「「では、少しやり方を変えてみようか」」」

雲間のアーチャーが、その巨大な姿のまま、七十二体に分裂した。各々の一千の手には武器を執り、飛行して蚩尤たちに襲いかかる。

「「「孟津の三鼎は、既におれが手にしたぞ。おれが五鼎、お前が四鼎だ。後は、力競べと行こう!」」」

アーチャーに応えて蚩尤たちが咆哮し、腕を数千に増やして、各々武器を振るう。互いに眼や口や掌から光球・光線を放ち、斬り合い、取っ組み合い、殴り合う。天地が鳴動する。

……と、アーチャーが元の姿で地上に降りてくる。息も切らしていない。
「倒せぬにしても、幻力(マーヤー)は効くようだな。まやかしゆえ、足止めにしかならぬが。……その女は誰だ」

じろりと三つの眼で睨まれ、モニタの向こうでダ・ヴィンチがビビった。
『あ、はじめまして、カルデアの責任者のレオナルド・ダ・ヴィンチです。改めてご協力を感謝……』
「礼はよい。観ていたな。あのライダーは、どうなったというのだ。あれは、なんだ。正体を言え」
ごくりと唾を飲み込み、ダ・ヴィンチが告げる。
『牛の頭、四つの眼、六本の腕、八本の脚…………その姿からして、あれこそはエンシェント・チャイナの神話における最大の魔神「蚩尤」だ。戦の神。戦争と武器の創造者にして、天帝への反乱者。もし本物なら、ビーストとしか言いようがない。けど……』
一拍置いて、
『ライダー・平将門公が中核となり、他の英霊と四つの聖杯を取り込んだ、というのなら……将門公の異相、アルターエゴ、と言うべきだろう』

言い終え、ダ・ヴィンチが下唇を噛む。用意された答えが、頭の中に吹き込まれ、喋らされているような奇妙な感覚。これもウォッチャーの仕業か。
「なるほど。では、あれを倒す方策はあるか。人類でしか倒せぬと言ったな。ここに人類がおるか」

セイバーが腕を組み、苦々しげな顔をする。他の者も眉根を寄せ、顔を見合わせる。
「……あのようなもの、余になんとか出来ると思うか。口惜しや」
「アタシは一応神霊だし……下っ端だけどさ」
「わたしもデミ・サーヴァントとはいえ人間ですが、聖杯の力を借りても、アレをどうにか出来るかと言えば……」
「生身の人間があんなもんに突っ込んでったら、津波や火山噴火に生卵投げつけるようなもんだぜ。ぜってぇ無理。俺、さっき死にかけたし」
「となると、私ですか。騙すのは得手ですが、アーチャー殿の幻力に匹敵するような力は……」
チャーナキヤが首を傾げる。物理的にどうにもならない相手なら、搦め手でどうにかするしかあるまい。

「あー……倒せないつっても、足止めは出来るんだろ。それと、ランサーがあいつの中に取り込まれてる。だったら、あいつからどうにかランサーをひっぺがしゃァ、ちったあ効くんじゃねぇか……」
マスターの提言に、アサシンが妙な顔をする。
「どうやってさ。あの大怪獣の腹の中に人間砲弾で飛び込めってのかい。生卵さん」
「んー……ひょっとしたらな。勘だ。勿論、俺が飛び込む気はねぇ。お前らがやれ。けっ」
『どうするにせよ、一人ではどうしようもない。総力戦で挑むしかないね』

一同の発言を受けて、マスターが……否、彼が被っているエピメテウスが身震いする。何か、思いついた。念話でそれを一同に伝える。
『……ほしたらアーチャー、おらたちを雲であっちまで運んでくンろ。ここでこうしてても、どっしょもねえ』
「よかろう」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「「「キリがないな。お互い、一対一でやるか」」」
『『『グググ……ヨカロウ。勝チテ九鼎ヲ揃フルハ、我ヨ』』』

幻力で創られた巨大なアーチャーが、一体に纏まり、三面六臂のシンプルな姿となる。蚩尤たちも合体し、さらに巨大となる。アーチャーは武器をしまい、六つの手の指先から鋼の爪を伸ばす。

「「「『羅刹鉄扇抓(シュールパナカー)』!!」」」

六本の腕で、掬い上げるような爪での斬撃! 蚩尤は無造作に大盾を突き出して防ぐ! しかし!

「「「『五火七禽掌(アグニ・サマーディ)』!!」」」

火生三昧! 掌から三昧火を発し、盾を鎔かす! 火剋金!

『『『「霧露混元盾(ウールーフンユェントゥン)」!!』』』

盾が三昧水に変化! 金生水にて水剋火! そのまま盾を捨てて下がり、六本の腕を構える!

『『『「袖裏乾坤拳(ショリチェンクンチュエン)」!!』』』

ロケットパンチ! 一発一発が核ミサイル級の重爆拳! 喰らえば爆発四散必至!

「「「『袖裏乾坤術(マーヤー・デーヴィー)』!!」」」

アーチャーも六臂を突き出し、ロケットパンチを掌で受け止める! 直撃直前に次元が歪み、全てを吸い込む! 蚩尤の拳はすぐに修復!

「「「還すぞ! 『梵天神火砲(ブラフマーストラ)』!!」」」

六つの掌を花弁めいてあわせ、青白い巨大プラズマ球を発射! 空中に留まったままの水の盾を蒸発させ、蚩尤に襲来!

『『『「盤古開天珠(パンクゥカイティエンチュウ)」!!』』』

蚩尤は六本の腕を回転させ、廻し受け! 電磁波を纏う球状の高速回転力場が次元を歪ませ、プラズマ球を倍加して跳ね返す!

「「「電漿(プラズマ)は好物だ!!」」」

食(ショック)! アーチャーは跳ね返されたプラズマ球を呑み込んだ! ここまで僅かゼロコンマ二秒!

盾一つと、拳六個分を失った蚩尤に対し、アーチャーは無傷、ばかりか魔力(まりき)満載!兇悪に嗤うや、六連続バック宙で距離を取る! 満身に漲る電圧! 大技の予兆!

「「「闘戯(たたかい)は愉しいな、戦神よ! 三界が我がものと成るが如き心地よ!!」」」

『『『解ルカ、羅刹王ヨ!! イカニモ、戦コソ至上無二ノ遊戯ヨ!』』』

小高い山の上に立つアーチャーは六臂を二臂に収め、三面を縮めて一面に戻す。全ての魔力を叩き込む、必殺技(ヒサツ・ワザ)を放つ気だ!右掌に超圧縮プラズマ球出現!それを左掌で覆い……右肩の上に振りかぶる!背中を向け、片脚をほぼ真上、垂直に高々と上げる!この構えは!

「「「我が魔球、受けてみよ!!」」」

『『『応!!』』』

蚩尤が呼応! こちらも六臂を二臂となし、巨大な鋼鉄の棒を形成、それを握って大上段に振りかぶる。プラズ魔球を両断ないし打ち返し、その衝撃波で山と大地ごと、アーチャーを粉砕せんとする恐るべき構え!両者の肩に縄めいた筋肉が盛り上がる!

「「「『乾坤一擲賽(カリ・ユガ)』!!」」」

『『『「葬乱(ホウムラン)」!!』』』

暴!!!!

竜巻(ツイスター)と稲妻(サンダーボルト)を纏った恐るべき威力の魔球!電磁バリアでも防ぎきれぬ! 同時に蚩尤が大鉄棒を軌道上へ振り下ろす!魔球が曲がる!瞬時に大鉄棒も直角に軌道を変え、横に振り抜いて打ち返さんとす!魔球を大鉄棒が真芯で捉えた、その時!

蚩尤の四つの眼が大きく見開かれる!

『『『コレハ!?』』』

ALAS!アーチャーが投げたのは……鼎!鼎だ!その周囲にプラズマ球を纏わせ、あろうことか蚩尤目掛けて投げつけたのだ! ナムサン!狂ったか!?このままでは大鉄棒で粉砕重点、若しくは蚩尤に取り込まれて、みすみす力を分け与えるに等しい! 蚩尤の思考が一瞬止まる!だが!

『『『アナヤ!』』』

ゴウランガ!魔球は鼎を包み込んだまま大鉄棒を螺旋状に這い上がる!このまま顔面を急襲する死の球だというのか!? 否、しかしストライク!鼎が蚩尤の牙をすり抜け口蓋に命中!KRAAASH!そのままぶつかりながら胃袋の中へ!

鼎の中には……マスター、シールダー、キャスターズ、セイバー、そしてアサシン! 信じ難い方法で、彼らは敵の体内へ潜入した!

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