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ChatGPTの力で欧州に海外転職した話

かつてのサッカー日本代表監督、イビチャオシムは言った。
「ChatGPTを走らせろ、ChatGPTは汗をかかない*」

これは、転職準備ほぼゼロの状態から誰でも使える AI ツールだけを使って英語オンリーの選考を潜り抜け、海外企業への転職を果たした私の実体験の記録 & それを元にした海外就職マニュアルです。海外だけでなく国内の外資系転職にも使える内容になっているかと思います。

私はプロのヘッドハンターでもなければ、絶大な採用権を持つエグゼクティブでもなく、AI 関連の驚き屋でもバイリンガルでもありません。あくまでイチ日本人応募者の視点で読んでいただければと思います。



0. 準備編 - さいきょうの職務経歴書 - 

はじめに「ぼくのかんがえるさいきょうのしょくむけいれきしょ」を作ろう。
用意するもの: Google Doc, ChatGPT, DeepL, LinkedIn。

まずは Google Doc の職務経歴書(CV)テンプレートを使い、下書きする。
英語で書くことになるので、不安な点は DeepL も併用して文法と語彙をパーフェクトにしよう。ChatGPT は最強に空気を読めるので、適切な動詞を選び、洗練された英文にするのに非常に役に立つ。

ある程度できたら、経歴のサマリーを ChatGPT に書いてもおらう。
「Summarise my job history in 5 sentences」みたいな感じだ。これが後々生きてくる。

CV の大枠ができたらそれを LinkedIn に転写しよう。LinkedIn は次の段階でフル活用することになるので、プレミアムプランに入るのをオススメする。

さらに LinkedIn は他者からの推薦を表示する欄があるので、ここを活用しない手はない。説得力が増すし、自分では書きづらい人柄などのソフトスキルもアピールできる。プロフィールのファーストビューで表示されるのが 2 件分なので、最低 2 人から推薦文をもらっておこう。

また推薦文は Give&Take を意識する。リファラルを書いて欲しい人に自分からまずはリファラルを書き、そのお返しで書いてもらうのだ。どんな仕事を探してて、どういう角度から紹介して欲しいかも明確にするのがいい。

例えば「マーケティングの仕事を探しているから、あの時のプロジェクトで消費者分析を担当したことに触れて」とか「複数部署と協業するPMの仕事に応募するから、リーダーシップを強調してほしい」とか。日本人からでも必ず英語でもらおう。

こうやって改良された LinkedIn と CV が自分の分身となって、今後の選考を助けてくれる。

1. 応募編 - ポジションは歩いてこない - 

だから歩いて行くんだよ...。さて、いよいよ実際に応募を始める(すでに受けるポジションが決まっている場合はこのパートを読み飛ばしてほしい)。

ここでも LinkedIn を使う。まずアカウント設定で「#OPENTOWORK」 に設定する。あとは目を閉じてアルゴリズムの神様に任せ、求人が自動的にフィードされるようにしておく。さらに検索機能を使えば、行きたい国、職種などでスクリーニングできるので、応募先はいくつも見つかるはずだ。

そんなに沢山出てこないって?おお勇者よ!転職活動においては自分で無理と判断 (Self rejection) するのが一番もったいない!

ここでは JD (募集要項) の条件に半分ハマってれば OK としてしまおう。例えば、8つ条件が求められている場合、4つハマっていた時点で GO だ! 採用側も完全無欠な候補者などいないとわかっているし、途中で条件が緩和することもある。何より、どれだけ応募しても無料である。

もし応募先に元同僚や近しいキャリアバックグラウンドの人がいたら、臆せず申請してメッセージを送ってみる。もしかしたら相談に乗ってくれたり、場合によってはリファラルしてくれるかもしれない。これも無料だ。

2. 選考序盤 - 初めて見たその日から - 

LinkedIn 経由であっても、実際には自社の採用サイトにCVを送らせる形式になっていることが多い。
ここでは、CV を裸で送らずにカバーレターも添付しよう。
Chat-GPT に「I'm applying for (職種) position at (会社名). Please make a cover letter based on my CV」とでも入力すれば一瞬だ。

ここからいよいよ面接の準備に入る。
まず、応募先の JD と CV を ChatGPT に両方読ませよう。それを元に、次に面接でアピールすべき点は?弱みとなりそうな点は?それぞれ洗い出してもらうのだ。
「Now I share it's JD and my CV, then find out which areas/experiences would be my advantage for the interview」とか入力すれば良い。

「あなたの応募する会社の xxx の製品はビジュアルによるブランディングを重要視しているので、あなたが yyy で経験したクリエイティブディレクションのスキルは役に立つはずです」などと指摘してくれる。AI というフェアな第三者視点から、意外な発見が出てくるかもしれない。

次に、ChatGPT に面接用の自己紹介文を作ってもらう。30-90秒程度で話せる分量がベストだ。プロンプトはカバーレターの時とほぼ一緒。これをとにかく丸暗記して、画面に向ってにこやかに話す練習をする。

なぜなら英語での面接は緊張するからだ。それはそれは、とても緊張するからだ。

3. 選考中盤 - 本番は練習のごとく - 

そして練習は本番のごとく。そう、一次面接から最終面接までは、とにかく練習、練習、練習である。それが緊張と言語能力の壁を破る一番の方法だ。その練習の質を飛躍的に高めるために、やはり ChatGPT を使う。

実は ChatGPT は面接の想定質問も考えてくれる。
「I'll be interviewed by (相手のタイトル) in 45 min meeting, please come up with possible interview questions」等と聞いてみよう。箇条書きでドバドバと出てくるはずだ。

面接相手やそのフェーズ(何次面接か、ケース面接がありそうかなど)もしっかりプロンプト上で伝える。その後 ChatGPT にロールプレイをお願いし、ランダムに質問してもらって、いかに素早く反応できるか練習してもいい。必ず発声しながら応えよう。疲れない AI を相手にしつこく練習を繰り返していると、不思議と本番であまり緊張しなくなる。

ちなみに面接後のフォローアップメールも ChatGPT と DeepL で完璧である。どうしても表現できなかった部分、正確性を欠いた部分などを、綺麗な英語ライティングでカバーする。もちろんツールは Google 翻訳でもいいが、ビジネスシーンでのニュアンスや機微の理解といった部分では DeepL に軍配が上ると思う。

5. 選考終盤 - カウンター戦略 -

終盤。これ以降は役員など、シニアレベルとの面接を想定する。

最終に近い面接ではケース質問より、相手の話をしっかり聞いて、自分なりの意見や質問を返す、という流れになることが想定される。相手にボールを持たせ、カウンターとなる質問を入れる。基本的には守りのゲームである。

ここで使えるのが Google 検索。おそらく人事から次の面接官の名前が伝えれらているだろう。Web 上に本人のインタビューなどが載っていることもが考えられる。なければ LinkedIn で本人の投稿を探してもいいし、面接官でなくてもそこの CEO のインタビューなどでもいい。もし見つけたら、それをまるっとコピペして、またも ChatGPT に考えさせよう。

「What would this person care the most as business challenges?」「What would you ask him/her a question if you were a job applicant?」とかである。こちらからの質問の弾をいくつも用意しておくのだ。

こうするとよりハイレベルな視点での会話ができるようになるし、何よりシニアは応募者の話を聞くよりも自分語りをする方が好きなので、この質問攻め戦略は役に立つ。

あとは内定を待つばかり。もしダメでも、また1に戻ってやり直せば万事 OK である。自分は凹んでも、ChatGPT は凹んでいないからだ。

6. まとめ - 知と熱 - 

準備段階から始まり、選考の序盤、中盤、終盤と、AI たちが躍動する転職活動をお見せできたと思う。

最後にあえて触れたいのは、AI 時代の転職活動は「人工知能のパワー」と「人間の泥臭さ」のハイブリッドになるということ。

ドキュメントや Q&A を生成する部分はもちろん AI に頼ればいいのだが、リファラルを頼み込んだり、面接官と LinkedIn で繋がっておいて他のポジションも紹介してもらったり、面接の発声練習をできるのは人間の自分しかいない。

私は ChatGPT で作った想定質問をオンライン英会話のレッスンに持ち込んで何度もロールプレイしたし、解答集を付箋に書き込んでオンライン面接のモニターの横に貼ってカンニングもした。目線や声調、ボディランゲージの練習も録画しながら行った。

こうやって「知」の部分を AI に任せ、「熱」の部分は自分自身に委ねよう*。テクノロジーに代替されるのではなく、テクノロジーを味方につける。この使い古された AI 常套句は、転職活動においてもまた真なのだ。

それではみなさん、幸運を祈る!



ということで、自分の昨年の海外転職活動の経験を元に、長々と書かせていただきました。もう一度言いますが自分は AI の専門家ではないですし、日々進化を続ける AI の力を使えばこれに限らず色々と応用できると思います。

転職を通して言語や距離というバリアを超えていく皆様へ、この投稿が何かしらのヒントになれば幸いです。

*1 もちろん元ネタは「ボールは汗をかかない」です。
*2 『知と熱』参照。こっちはラグビーの話ですが面白かったです。


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