pointblank,darkmatter /state1998
中央自動車道のどこまでも長く長いオレンジモノクロームをくぐり抜けるころには
僕はもう何もかも忘れている
未来から背中を向けたままで迫る忘却
近づいてくるのか近づいていくのか
どっちにしろその顔をうかがうことはできない
目でものを見ようとすればするほど
僕らは光しか見ていないことに気付く
光を集めて輝くきみ
いまではすっぽり自分を覆い隠している
かつてきみが見せてくれたのは
光のなかでもがく影
それは羽ばたき、吠え、横歩きする黒
イメージはいつだって光の届かないところにこそ生まれるもの
暗黒を手探りしたときに初めて形を取るもの
僕の暗黒に指を突っ込んだとき
きみは初めて僕の問題に首を突っ込む
シミ・ソバカスが増えていくきみの皮膚は
光と闇の戦場みたい
でも生きるってそういうことなのだろうから
メラニンの爆発のさなかに僕は思わず笑ってしまう
ペプシカラーのクレーン車を追い越し
ブレザーを着た坊主頭の男子高校生が二輪の黄色い花を手に持って
自転車で駆け抜ける
贈られたのか贈るのか
どっちにしろ彼の願いが届くことを祈る
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