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貴方か、それ以外か。(天使/山岸健太)

朝なのか、夕方か分からないぼやけた光の中で
時計を見ても、4時を指していて
アナログ時計は16時なのか28時なのかは教えてくれなかった。
16時かと思ったけど、新聞配達のバイク音で朝だと気づく。


24時過ぎに見た、私に背を向けて眠る貴方のなだらかな肩が
暗闇の中やけに鮮明に瞼の裏に張り付いている。
私より遥か先に眠り、目が覚める前に姿を消して
いいように使われてるのか、使っているのか
自分でもわからないまま日々が過ぎていく。

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「許されるように生きろ」

今よりもうんと寒くて、うんと孤独だと思い込んでいた時に言われた言葉を
1人ベランダの柵から身を乗り出して反芻している
私はもうずっと、許されることなく生きなければいけないのか
許されたいのか、もうわからないまま漂っている。



「少しはまともな恋しなさいよねえ」
深夜まで営業しているカフェでため息とともに言われた。
背徳感満載なケーキをつつく25時、こんな時間に説教されているのに
私の頭の中は
「なんだか大人みたい」と考えてた。



20歳過ぎになっても門限は23時
外泊禁止、そんな家で育てられた私は30歳手前にしてようやく家を飛び出した。
どこからどう見ても、何をしても大人なのに
私はいつでもどこか18歳のままな時がある。
いつになったら私はこの渦中から抜け出して「大人」になれるだろうか
「大人」になればすべてを諦めて両手を振って「幸せよ」と笑って言えるのだろうか

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もうずっと、「貴方か、それ以外か」で立ち止まってる
腕を絡めて歩くその人も、指を丁寧に撫でるあの人も
頬から耳へ手のひらを滑らすこの人も
目の前で元素記号を話す、どの人も
「貴方以外、貴方ではないので、全ておなじ」
最低だ、と思いながら私はどの人にも微笑む。
もうこれは呪いだ。
どれだけ言葉を尽くしても、何をしても、手のひらから滑り落ちる。
別に掴もうとしていないからたちが悪い。
失ってから気づくなんて、そんな当たり前の言葉で片づけれないから
人々は、もちろん私も例外ではなく
失ってから気づくのでしょう?

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当たり前のように、忘れてしまう事の方が多くて困る
忘れていいだなんで誰が言ったの、深夜にあてもなく歩きながら誰に言うわけでもなく声に出す
きっとこの夜の事も忘れてしまうのでしょう。

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何度も思い出した瞬間はなぜかスローモーションばかりで
もうこの世の時間ではないみたいで
過ぎ去る前になんとか、触れないものかと項垂れても


隣で笑う人は
「貴方以外のだれかでそれはフィクションだ」



※この言葉と話たちはフィクションとノンフィクションです。
どこから何処までが誰と誰で私と君なのかは架空の場合もあります、たぶん。※


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