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官能小説「ナルキッソスの咲く丘に」4

青い瞳に黒く長い髪。赤く塗られた大きな唇。黒い爪。
garbageは理沙子にそっくりだった。
魂の双子がこの世に存在するのなら、それはgarbageかもしれない、と理沙子は感じた。
けれど、目の前の男は薬中なのか、ずっと手が震えている。受け答えもまともな成人男性とは思えなかった。

「わたしと寝ない?」
理沙子が単刀直入に言うと、
「ここで!?」
と驚いた顔をした。
「ここでは寝ないわ。でも、何処でもいいの」
garbageは困った顔をして笑った。
困らなくてもいいのに、と理沙子は少し残念に思った。
するとgarbageは突然、顎を掴んで唇を重ねてきた。痺れたように動けなくなる。理沙子は息を止めた。
行動に何の脈絡もないけれど、怖くなるほど理沙子は骨抜きだった。もはや虚勢を張る事もできやしない。

「うさぎがいるんだ。ハムスターもいっぱい」
garbageはホテルに着くなり、着ていた服を一気に脱いだ。首にある蛾は解き放たれたかのようだ。背中一面に蛾が飛んでいる。
「いまはうさぎが抜け毛の時期で」
優しい手つきで理沙子の服を脱がし始めた。
「黒い服にいっぱい真っ白な毛がつくんだ」
下着まですべて脱がせるとやっと少し驚いた顔をして、すごいタトゥーだね、と言った。
「獅子よ。強いものが好きなの」
理沙子の背中には一面に唐獅子図屏風と同じ絵が彫ってある。初めて見るひとはたいてい怯む。絵が強すぎるのだ。弱い相手は食いちぎってしまう。
garbageは興味深げにタトゥーの筋をなぞっていく。理沙子は少し身震いをした。
「どうして蛾なの?」
garbageはニカっと笑うと理沙子の肩にかぶりついた。はずみで床に倒れ込む。すると何かのスイッチがはいったかのようにgarbageの目つきが変わった。
「教えてやろうか」
驚いて理沙子は顔をあげる。garbageは理沙子をベッドに押し倒すと半ば強引に下着を剥ぎ取った。
「知りたくなくても、思い知らせてやるよ」
garbageは首筋に噛み付いた。身体を拘束するかのようにきつく抱きしめられる。蛇のようだ、と理沙子は思う。首筋の蛾は浮き出た血管でさらに醜悪さを増していた。garbageの身体から女物の香水と汗が混じった匂いがする。
「もう、引き返せない」
garbageは理沙子の乳首を舌で転がした。ピアスをしているのか、金属的なものがときどき触れる。理沙子はもどかしくなりgarbageの腰に腕を回した。
「いつもそうするの?」
理沙子の顔が思わず凍りつく。
garbageはにやりと笑うと自分の下着を脱ぎ捨てた。すでにペニスは上を向き、濡れていた。

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