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【ラップは対話だ!】「レペゼン母」を読んでラップの魅力を知る

ドラマ・映画好きのキャリアコンサルタント xyzです。

先月、映画「母性」を観てきました。この映画については、別の記事で紹介しようと思っていますが(現在鋭意執筆中)メインテーマとなっている【母性とは何か】の他にも、【親子のコミュニケーションとは】【対話とは】など気になるテーマがたくさんあって、まだまとまらない……。

あれこれと考えるうちに、以前読んだ本「レペゼン母」のことがふと思い出されてきました。この本のこと、10月に書きかけたまま下書きに入ってた……!
ということで、今回は小説「レペゼン母」について書こうと思います。

本の概要はこちらからどうぞ。

タイトルにある「レペゼン」とは、英単語の represent から派生したヒップポップ用語。

言うなれば オカン代表 ってところでしょうか。

しゃかりきオカンとチャランポラン息子

主人公はアラ還の深見明子。
夫に先立たれてから女手一つで梅農家を切り盛りし、必死に働いて一人息子の雄大を育ててきました。そんな気丈な明子に対して、息子の雄大は離婚、借金、定職につかず(逮捕歴ものちに加わる)、と絵に描いたようなダメ息子……。その雄大は、再婚した年下妻、沙羅のことを置いて失踪中(ヲイ!)。

残された沙羅は、姑・明子と暮らしながら、明子の右腕として梅農家を手伝っています。ハタから見ると、仲の良い実の母娘のような明子と沙羅。

ラップバトルの全国大会に雄大が出場することを知り、息子と対決するために、明子は大会に参加することを決意して……果たして親子のラップバトルは実現するのか?!

独りよがりにのらりくらり

親の明子からすれば、雄大は子供の頃から問題行動の多い子で、常に心配の種でした。
「ちゃんとした」息子に育てたいと頑張ってきたのに、過保護に育てまいと甘やかさずやってきたのに……負けず嫌いな明子はなんでも全力投球、父がいない分も……と息子を厳しく育ててきたけれど、それも息子のため……それが明子の息子への愛の形。
明子はずっと雄大に対して「親の心 子知らず」だと思ってきました。

息子は、そんな母からの「圧」をかわしつつ、のらりくらりと生きている……。

対決と対話 解決より会話

雄大とのラップバトルを控えて自信をなくした明子に、ラップの先輩でありコーチ役である沙羅がかけた言葉です。

「対戦するって、相手のことを想像して、相手の立場になりきることなんだと思う。本当の勝負って相手を理解することじゃないかな」

「レペゼン母」より

息子を理解する……。

明子は改めて雄大との日々を思い返します。動機はラップバトルで息子に勝つため(笑)ですが。

高校の頃、小学生の頃、夫が亡くなる直前のまだ4歳の頃の息子、初めて喃語が出た時のこと、生まれたばかりの息子……。

時を遡っていきながら、当時の自分と息子の関わりを振り返る明子は、ハッと気がつきます。

息子を丸ごと受けとめていなかった母。
生きることに必死で余裕のなかった母。
そんな母に必死で訴えかけてきていた息子。
母の期待に応えられずひとり苦しんでいた息子。

「私は何を見てたんや」
明子は独りよがりだった自分の子育てを悔いて独り言ちました。

もしかして、雄大に恨まれているのかもしれないーその新たな窓から記憶を眺めると、思い当たる場面は無数にある気がした。

「レペゼン母」より引用


「新たな窓」という表現……ここに明子のハンパない内省力を感じます。
自分は息子の思いをわかろうとしてきただろうか……そう思うと同時に、明子は自分が思うほど息子に愛が伝わっていなかったことに気づき、愕然とします。雄大が明子にとって愛おしくかけがえのない存在だったにもかかわらず。

言葉にしなくてもわかってもらえていると思っていた母と、母にわかってもらうことを諦めてしまった息子。一番近い存在だったのに、いつの間にか遠い存在になってしまった親子。切ない。親と子の間に横たわるわかりあえなさよ……!!

かなしくも鈍感な生き物

期待しても裏切られるの繰り返し。息子は何もわかってない。そんなふうに思っていた明子。

親ってすごく鈍感な生き物だよ。自分の言動が子供にどんなに消えないインパクトを与えるか、わかろうとしない

「レペゼン母」より引用

親に面倒をかけ続けてきたのは子から親へのひそかな復讐だったのでは……沙羅の言葉がきっかけになり明子はさらに内省を進めます。
(親の立場でこの言葉を受け取るとつらいしやるせない……)

わかっていなかったのは自分の方だったかもしれない。

「親の心子知らず」から「子の心親知らず」へ、さらなる視点の転換が明子の中に生まれます。明子はとても聡明で、素直で、自分で考えを深められる人なのです。

これまでの息子とのコミュニケーションは一方通行だったことを明子は思い知ります。伝えたかどうかよりも、相手に伝わったかどうかが大切なのですよね。

相手に届く形で思いを伝える。
言葉にして伝える。
そのためにヒップポップという息子の土俵に立つ。だからこそラップバトル対決のステージに立たなければならない。
明子は再び戦意を取り戻します。

さて、前代未聞の母子ラップバトルの結果は如何に?(ネタバレ回避)

ヒントがわりにわたし作のリリックを^^

♪燃やすへその緒 融かす煩悩♪

(おそまつさまでした)

 ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

わたしはこの小説がきっかけで、ラップの面白さを知りました。ラップバトルはただの攻撃や罵り合いではなく、小節数、リズム、ライム(韻)といった様々な制約のなかで、相手の言うことを聞いて即興で返す。当意即妙のやりとりがスリリング!

ラップバトルは和歌の返歌にも似ているなと思ったら、とっつきにくかったラップに親近感が一気に増しました。

「レペゼン母」是非多くの方に読んでいただきたいです。

【おまけ】寛容ラップ

ラップバトル?!
突飛な設定に思いますよね。

ラップバトルとはどんなものなのか想像もつかない方へ。

TVで見たことある方もいらっしゃるかもしれませんが、ACジャパンのCMをどうぞ。

CM中のラップはディスり無し攻撃なしの優しい世界のラップ(「寛容ラップ」というCMタイトルが付いてます)なので、安心して見てみてくださいね!

アイスをマイクがわりにラップしているのが、現役ラッパーの呂布カルマさん!
ラップ界の絶対王者!!

ラップバトルというと、海外のMC達がゴツいコワモテで、容赦ないディスり(人格攻撃や罵り言葉を多用など)を連投するような、相手に言葉の刃を向けるイメージでしたが、ただのディスり合いではなく、語彙力、即興力、瞬発力、想像力など多くのスキルを競い合うものだとわかり、今ではすっかりラップに引き込まれています。

目指せ、キャリコンラッパー!(小声)

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