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24篇の私小説

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時間と音楽をテーマに24パターンの短編私小説を書いています。どれも10分程度で読めますので暇なときに是非どうぞ。 「僕」の一人称語りの小説です。毎回テーマを変えて書いてます。
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記事一覧

ノスタルジアと南風。

沖縄で昔の友達に会った。飲み友達だったやつで、7.8年前はよく朝まで一緒に飲んだ仲だ。いつのまにか会わなくなって、風の噂で故郷の沖縄に帰って店をやっていると聞いていた。
生意気な僕は定期的なLINEのアプリを消してしまう。人間関係にひどく疲れてしまうから。別に消す必要なんて全くないんだけど、なんとなく孤独でいることが自分にとって重要だと思える時期がある。でも孤独は自ら帰らなくても、いつも傍に存在し

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野垂れ死ぬ、その日まで。

ほれ、カッポレ、カッポレ

カッポレ、カッポレ、カッポレ、ぐいぐい、カッポレ、カッポレ、カッポレ、ぐいぐい

出鱈目な音頭に手を叩き、出鱈目に積まれた酒を飲み続けた。なんでこんなことやってるかは、とっくに忘れていた。

おぼろげな視界でスマホに目を落とすと6:00だった。朝なのか夕方なのかもよく分からん。なんだっていい。ただ出鱈目だ。出鱈目。カッポレ、カッポレ、ほいほい、酒だ、酒だ、ほれ、カッポレ

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立派な人間になれるまで、

もう飲めませーん!けど飲みまーす!いぇーーい!

今宵も白痴が叫んで、カラオケが響いて、酒で喉が焼けていた。毎度毎度の毎度の展開。飲んでも飲んでも何も変わらない。良いことなんて一つもないのに今日も飲んでいた。酒を。酒を。

ノリ悪いじゃーん。と付き合ってはないけどヤッた女が覆いかぶさってくる。対面座位のかっこう。目の前に現れた赤ら顔は完全に目が座っている。僕が、飲み過ぎだよ。と言うとあんたが飲ませ

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やがて終わる今。

けたたましいベルの音が脳の奥にまで響き渡り、驚きと共に目覚めた。

ヒステリックアメリカンレディのようにキリキリとわななく目覚まし時計のストップボタンに寝起きのエアダンクをぶち込み止める。静寂に包まれた朝。時計は4:00を指していた。

まだ脳は寝ている。身体も思うように動かない。それでも微かな意識がこれから起きる楽しみを連想させると、僕はなんなく布団から出ることができた。学校にいこう。

東雲ま

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もう一度眠ろう。

お楽しみ中のところすみませーん。間もなく閉店時間なのでラスト1曲ずつでお願いしまーす。

カランと水割りの氷の落ちる音をかき消すようなオカマのアナウンスで僕は時計をチラッとみた。

3:00ジャスト。なんだかんだで飲みだしてから7時間近く経過していた。

ごめんねー。今日は平日だから3時なのよー。とコの字カウンターの中でオカマはシャンパングラスの残りをクイッと飲み干した。

あぁ別に良いよ。他にも

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もうすぐ夜明けがやってくる。

この時間に車に乗ってデジタル時計の2:00の表示を見るとたまに思い出すことがある。

あれから、なんだかんだで5年くらい経つんだなぁと思い出す。そして、ちょっとだけアンニュイな気持ちになり、カーステレオであの時に聞いた曲をかける。そして、予定もないからと意味もなく高速道路を一区間だけ走ってみたりする。

深夜の高速道路が好きだ。昔、ドカタ仕事をしていた時にトラックの助手席に乗って走ったなと思い出す

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