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舞台刀剣乱舞 天伝 出陣前の一期一振のモノローグが泣けた理由。

見事だったなと思うのは、秀吉様への思慕という「人として」の感情から、歴史を守る使命という「物として」の存在意義へと、台詞も表情も移り変わるグラデーションなんです。
『かつて豊臣の刀であった私は、歴史を守る刀となったのですから』
この一つの台詞だけでそれを表現する本田礼生氏、ハンパないですね。

(キャーキャーかっこいい!顔がいい!とももちろん思ってたけどw)

前に書いた、人として在る自分自身とは決して相容れない無機物的な部分。
それが彼らの本質であり、だけれども、感情を持つ人としての彼らも間違いなく存在して、その二つは苦悩とともに共存しているのがわかるから、涙が溢れるわけです…。

本能とか使命とかって言葉、特にいまの平和な世の中を享受している人の身からすれば「いやそこまで?好きな人(元の主)を滅ぼしてでも守らなきゃいけないものなのかい?」ってピンと来ないところもあるけれども、視座を「物として」の彼らに置けば、そりゃそうだよな…って思う。だって人に作られた「物」は何かに使われるために存在しているのであって、その役割がなくなることは存在の意義すら危うくしてしまう、根幹なわけだから。

一方で、「どこに行っても家畜のように扱われた」黒人奴隷だった弥助からすれば、「人として扱われる」ことに、これまた当たり前に人として在ることができる今の私たちには想像もできないような重い重い意義がある。だから、結果として朧になってしまうほどに、誰よりも「人」たらんとした。刀剣男士の「本能」を理不尽だと叫ぶのもまた、そうだよな…ってなる。

あなたたちは歴史の奴隷。
そうかもしれない。
でも、そうであるから存在できる、のかもしれない。

こんなにも「信じよう」と思われている審神者よ…歴史を守るという大義を、ゆめゆめ疑ってはならない。迷ってはならないのだ。


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