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日本のオルタナティブな音楽

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国内外の多くの人にもっと知ってもらいたい日本のオルタナティブな音楽について紹介していきます。
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日本のオルタナティブな名盤 (2) WONK「Sphere」2016年

日本のオルタナティブな名盤 (2) WONK「Sphere」2016年

2012年にロバート・グラスパー「Black Radio」がリリースされ、ジャズと呼ばれるジャンルで表現される音楽が劇的に拡大し、その境界線も曖昧となった。
ジャズがR&Bやヒップホップと融合することは異端ではなくなり、ありとあらゆるジャンルをジャズと融合させる音楽実験も世界各地で盛んに繰り広げられるようになった。
それまで停滞していたかに見えていたジャズの世界が目に見えて動き出した瞬間である。

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日本のオルタナティブな名盤 (1) 青葉市子「アダンの風」2020年

日本のオルタナティブな名盤 (1) 青葉市子「アダンの風」2020年

…架空の島に生まれ育った予知力を持つ娘が言葉のない島『アダンの島』へ送られ、そこで『クリーチャー』という謎めいた存在に出会う…

謎めいたプロットを元に「架空の映画のためのサウンドトラック」というコンセプトで創作された2020年リリースの作品。

青葉市子自身が沖縄や奄美の島を訪れた体験が作品の源になっているが、沖縄の音楽をモチーフにした作品ということではなく(琉球音階を取り入れた曲はあるが)、音

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MONDO GROSSO「BIG WORLD」が凄すぎた

MONDO GROSSO「BIG WORLD」が凄すぎた

“変わってしまった世界、さらに変わっていく世界の中で、心の在処を探し続ける音楽の旅“ というコンセプトで2022年2月8日リリースされた、MONDO GROSSO『BIG WORLD』。

この2年間、世界中の人々が思いもよらない脅威に少なからず巻き込まれました。当たり前が当たり前でなくなり、様々な喪失を目の当たりにし、感情の荒波に飲まれたり、悩み考えるうちに人生観が覆ってみたり。

この未曾有の

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cero「e o」〜ポストパンデミックの都市音楽〜

cero「e o」〜ポストパンデミックの都市音楽〜

ceroの新譜「e o」は不思議な音楽だ。

2023年5月に配信開始となって以降、気づけば延々と聴き続けている。

朝も、夜も、家でも、外出先でも、どんな場面でも、飽きることなく。

まるで清涼飲料水のように身体に染み渡っていくこの感覚は一体何なのだろう。

元々ceroは特定のジャンルに依存しない独自性の高い音楽を作り続けているが、本作は正にノンジャンル、説明の難しい音楽だ。電子音楽の範疇では

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もっと知ってもらいたい日本のオルタナティブな音楽 〜序文〜

もっと知ってもらいたい日本のオルタナティブな音楽 〜序文〜

私は日頃から世界各国の音楽をあれこれ聴いていますが、海外の音楽を聴くときには自然とその国の独自性を音楽の中に探しているような気がします。ブラジルの音楽にはブラジル音楽らしさを、アルゼンチンの音楽にはアルゼンチン音楽らしさを、キューバの音楽にはキューバ音楽らしさを、といった具合に。

そのような土着の要素が様々なジャンルの要素と絶妙にミックスし熟成されることで、他には無い風味が醸し出され独自性の高い

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