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『Le Fils 息子』

岡本健一と岡本圭人の親子共演。
岡本圭人くんのことはほとんど知らなかった。
アイドルは男女問わずグループ名は覚えられないし、名前と顔がわかっていても誰と誰が同じグループかもわからないし、あまり興味がなかった。
しいて言うならこの舞台では伊勢佳世さんを見てみたいなぁと思ってた。
フランスで話題の作品だということと、それを岡本健一が「息子とやるならこれ」と言って決めたというエピソードをどこかで見た。
岡本健一の出演作は何度か見たことがある。そのイメージから彼の作品選びになんとなく期待をした。
最終的に決め手となったのは友人に誘われたこと。
友人は若村麻由美を見たかったんだそうだ。
いろいろあって能登演劇堂には母と行った。
いつもの食事処で昼食を済ませ(いつもの通りおいしかった)、それから劇場に向う。

セットはシンプルですごく良かった。
使われているパネルは白一色。パネルを動かすことで場所が変わる。場所によって調度品も変わる。真っ白な空間に調度品の色がよく映える。

ニコラ(岡本圭人)はなぜ母・アンヌ(若村麻由美)との生活より父・ピエール(岡本健一)との生活を選んだんだろう。
ピエールと生活することで、彼の症状はどんどんひどくなっていった。
この父と息子は一緒にいてはいけない二人だった。
演ずる岡本健一は見た目がスマートだし、息子のために妻のソフィア(伊勢佳代)を説得するし、ニコラに寄り添おうと努力はするので、一見いい父のように見える。
だけど、実際はニコラに寄り添うことができていない。
息子の言葉を聞いていない。息子に自分の理想を押し付けているがそれに気づいていない。
ニコラは父に自分をわかってほしい、丸ごと認められたいと思っているように見えたが、寄り添えない父にはそれが見えていない。

ソフィアは時折ニコラに寄り添う様子を見せるが、どこか距離を置いていて、どっちつかずだ。
誰でもいいからニコラの味方になってくれる人が現れてほしい。それは肉親である必要はないと思っていたので、私はソフィアに期待をしていた。ニコラを救ってくれるのではないかと。
でも彼女の最優先は自身と自分の子どもだった。それはごく当たり前のことだししょうがない。
ニコラも自分自身を最優先にできたらいいのに。

アンヌも、母である自分ではなく父を選んだ息子を理解できないためだろうか、やはりニコラと距離がある。
いい母親であろうとする気概のようなものは見えるが、うまくいかなくて自信がなくなっているのだろうか。

自分を傷つけたニコラは病院に入院した。
ホッとした。専門機関に繋がることができた。これでニコラは救われる。
そう思ったのも束の間だった。
病院内のつらさを訴え家に帰りたいというニコラ。
病状の一つだという医師の説明もむなしく、良い父良い母でありたい二人はニコラを家に連れ帰る。
とうとうだれもニコラと向き合う人が現れなかった。
外からどう見えるかを気にする両親のもとではそれは望めなかった。
救えたかも知れなのに、その一歩手前まで来ていたのに。

岡本圭人の芝居はとてもよかった。
とてもいい芝居だったので調べてみると、2年間アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツで演劇を学んだらしい。
なるほど。アイドルが感性でいい芝居をしたという感じではなかったのは基礎をしっかり学んでいるからか。

会場には岡本圭人くんファンがかなりいた。能登演劇堂は地元の会員が多い。高齢化が進んでいる能登地区なので会員はまあそういう年齢層だ。
そこに明らかに20歳代だと思われる女性がいるととても目立つ。
かなり交通の便が悪いところなので、みんなよく頑張ったねと見かけるたびにひそかに褒め称えていた。


『Le Fils 息子』

作:フロリアン・ゼレール
翻訳:齋藤敦子
演出:ラディスラス・ショラー
出演:岡本圭人 若村麻由美 伊勢佳世 浜田信也 木山廉彬 岡本健一


2021年8月30日(月)~9月12日(日)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス

2021年9月17日(金)~19日(日)
福岡県 北九州芸術劇場 中劇場

2021年9月22日(水)・23日(木・祝)
高知県 高知市文化プラザかるぽーと 大ホール

2021年9月26日(日)13時30分開演/18時30分開演 
石川県 能登演劇堂 ※マチネを観劇しました

2021年9月29日(水)・30日(木)
新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

2021年10月3日(日)
宮崎県 メディキット県民文化センター 演劇ホール

2021年10月9日(土)・10日(日)
長野県 まつもと市民芸術館 主ホール

2021年10月14日(木)~17日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール


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