「反撃能力」とは(読売新聞記事の書き方、読み方)

2022年12月02日の読売新聞に「反撃能力」に関する記事が2本。
 1本は政府見解をまとめてというもの、
 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20221201-OYT1T50391/
 もう1本は公明党がそれを大筋で認めたという記事
 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20221201-OYT1T50400/
 この2本の記事に書いてないことを、私は偶然、12月03日のNHKのスペイン語ニュースで聞いた。
 https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/es/news/399596/
 そこには、読売新聞が書いていないことが報道されていた。(他紙も書いているかもしれない。)
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Legisladores coincidieron en que los “contrataques” japoneses estarían limitados a la autodefensa y que jamás se utilizarían de forma preventiva. Por el contrario, para ponerlo en marcha, tendría que haberse iniciado una agresión armada contra Japón o su aliado, Estados Unidos. El “contrataque” tendría únicamente objetivos militares y se utilizaría la mínima fuerza necesaria para neutralizar la amenaza.
(議員たちは、日本の「反撃」は自衛に限られ、決して先制攻撃はしないことで合意した。その代わり、日本や同盟国である米国に対する武力攻撃が開始されることが条件となる。「反撃」は軍事的な目的のみを持ち、脅威を無力化するために必要最小限の武力を使用する。)(翻訳はDeepL)
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 「反撃」について、「日本や同盟国である米国に対する武力攻撃が開始されることが条件」と書いてある。日本が(先制)攻撃されたときだけではなく、アメリカが攻撃されたとき(アメリカが先制するか、相手国が先制するかは問題にされていない)、日本は「反撃」できる。これは、アメリカと戦っている国から見れば、日本の「反撃」ではなくて、日本の「先制攻撃」である。
 そして、それは先に書いたように、ある国がアメリカを先制攻撃するかどうかは問題ではない。アメリカがたとえば北朝鮮に「先制攻撃する」。当然、北朝鮮はアメリカに反撃する、つまり攻撃するだろう。そのとき日本は、そのアメリカに対する攻撃を理由に、アメリカと戦っている国に対して「反撃」するのだが、これはその国にとっては「日本の先制攻撃」である。つまり、日本はいつでもアメリカに同調して「先制攻撃」できるのだ。
 ここからさらに、以前に私が書いたことを繰り返そう。
 日本の「防衛システム」は日本を守るためにあるのではない。アメリカを守るためにあるのだ。北朝鮮がアメリカを攻撃する。その攻撃に対してアメリカの領土から反撃するのは時間的にも労力的にもむだが多い。日本から攻撃すれば時間も短いし、大陸間弾道弾をつかわなくてもできる。500発導入するというトマホークを活用できる。
 日本はすでに、グアムやハワイ攻撃を目指した北朝鮮のミサイルを、秋田、山口に設置した「防衛ミサイル」で撃墜する計画を取りやめた。北朝鮮のミサイルが直接アメリカ大陸を射程に収めた以上、暢気に(?)グアムやハワイを攻撃などしないだろうからだ。北朝鮮のICBM基地をできる限り早く攻撃しないといけない。そのための日本の軍備増強である。
 これが岸田の(そして、安倍の目指していた)「反撃能力」であり、「集団的自衛権」なのだ。
 これをLegisladores(議員たち)は了承したのだ。NHKがそう報じているのは、実際に、その問題が「議論」されたからだろう。しかし、読売新聞の記事は、そのことを一言も書いていない。読売新聞の「解説記事(作文記事)」の多くは政権側からのリーク情報によって書かれている。すでに何度も書いてきた。今度の記事にNHKが書いているようなことが書かれていないのは、政府側がそれをリークしなかったか、これは書いてくれるなと指示したからだろう。
 どんなニュースも、ことばの細部にこだわって読む必要があるし、ときには他のメディアとの「表現」を比較してみないといけない。私はテレビを見ない(NHKニュースを見ない)し、貧乏なので他紙も講読していないので、ほとんどニュース表現の比較をできないのだが、今回はたまたま聞いたニュースで気がついた。
 読売新聞が、どんなふうに政権に利用されているかもよくわかった。
 (NHKが国内向けのニュースでも、同じことを報道していたかどうか、私は知らない。)

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