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香納諒一「砂時計 警視庁強行犯係捜査日記」

香納諒一「砂時計 警視庁強行犯係捜査日記」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CLRL3P3F/
 犯罪には欲得だったり、怨恨であったり、必ず何かの人間関係が根っ子にある。そして必ず加害者と被害者と周りに関係者がいる。動機のない殺人はない。真犯人を挙げることは警察の最も大事な仕事。しかし本当の事件の解決は、捜査以外の配慮にあったりもする。犯罪の後には、大なり小なり関わった人々に、深い悔恨と苦悩が残る。そこに刑事自身の経験と人間力の働きが問われる。事件の余韻を彫り深く描く香納諒一の筆の冴え。
1️⃣ 砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌
・マンションの一室で死んでいた38歳の美女。睡眠薬自殺かと思いきや不審な点が次々と。捜査から浮かんだ被害者の重い過去と、周囲で蠢く悪意と偽装の渦。事件解決後に、大河内茂雄部長刑事が語った「砂時計」の例えが心に響く。
2️⃣日和見係長の休日
・凡庸たる小林豊刑事の浅草の休日。そこで出会った食堂寮長だった老婆・相良直美。彼女から「元警官の沢野謙一の死は自殺ではない」と再捜査を頼まれる。軽く調べて閃いた小林は、事件担当だった正木和美と共に真相に深入りしてゆく。
3️⃣夢去りし街角
・中目黒の廃ビルで死んでいた若い女性・菅野容子。被害者は職場と学生時代のバンド仲間との花見をかけ持ちしていた。音楽への夢、花開く恋。卒業後の別れ道と忘れ得ない過去。多くの刑事たちの捜査が、若者たちの蹉跌を明らかにする。


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