鈴木涼美「YUKARI」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHDN138/
　全編７章が手紙で構成されている。こんな文体は、太宰治「駆込み訴へ」以来である。歌舞伎町でホステスを務めていた30歳の女性が、結婚に先立って、かつて浮き名を流した男の数々に出した書簡。マリッジブルーの衝動が、筆を走らせる。学校の先生、親の大きな病院を継いだ医者、売れっ子ホスト、ダンサー、パイロット。ところどころに刃も覗く文面。貰った方もドッキリだろう。後ろめたいところがない男はいない。女は常に演
技している。そんな中にも、火のないところに煙は立たない。慶應大学在学中にキャバ嬢経由でAVデビュー(だから見目麗しい)。卒業後には、日経新聞に入って辞めて、芥川賞候補作家になった女流作家。現代の源氏物語を、したたかかつ奔放に紡いでくれる。