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ペット誘拐パート2(980字の小説)

噂で聞いたのだが、ペットを誘拐して身代金を
要求する事件があったらしい。
上手い事を考えたものだ。
ペットを誘拐しても、それ程の罪にはならないのかも知れない。
人間と違って犯人の顔も伝える事はできない。

その男は、ワニを誘拐して喰われたらしい。
馬鹿な奴だ。ワニ何て危険な動物を誘拐するなんて、どうにかしてるぜ。

俺ならもっと可愛いペットを誘拐する。
問題は、標的になる人物と、架空名義の口座だ。

そして努力の結果、ターゲットを見つけた。
ターゲットの名前は、西園寺静香。
如何にも良家の子女と言った感じだ。
名前に優しさを感じる。

彼女のペットは、ペルシャ猫。
俺は難なくペットを誘拐する。
貴賓を感じさせる、ペットだ。
これなら彼女は金に糸目は付けずに、俺の言いなりだろうと
たかを括っていた。

「貴女の大事なペットを誘拐した。返して欲しければ、この口座に
五百万円振り込め。貴女の入金を確認できた時、ペットの所在を教える。
振り込みを確認するまではペットに餌を与え無い」
と、メールを送信し返事を待つ。

だが、待てど暮らせど返信は来ない。
俺は言った通り、餌はやらない。
悲しそうに僕を見つめるペルシャ猫。
「待ってろ、もう直ぐお前の飼い主から連絡が来るから」
と、ペルシャ猫を励ます、俺。
再度のメールを送って待っていると、
西園寺静香からの返信メールが届く。

「よかったわ、誘拐してくれって。私はその猫に飽きていたところなの。
煮るなり、焼くなり好きにして」
と、書いてある。

何て薄情な女。
女の顔が見てみたい!
怒りの込み上げる中、僕は猫を見つめる。

哀れなペルシャ猫
その表情は、一部始終を知っているかの様な悲しげな顔。

僕は、泣いてしまった。
「お前も親に捨てられたんだね。僕もだよ。これから一緒に暮らそう」

僕はペルシャ猫に、僕が食べ残した餌を与えてたが食べない。
見向きもしない。

「贅沢な猫だな!腹が減って無いのか?お前、何が食べたいんだ?」
と、聞いたら買って来たばかりの刺身を見詰めている。

「これか?」と刺身を見せたら嬉しそうに頷く
「贅沢な奴め、昔飼っていた犬は、何でも食べたぞ」
と、説教しても知らぬ顔。

その為に僕の毎月の食事代が倍になる。

ペットを誘拐する時は、考えなければいけない。
僕は、前の男みたいに喰われ無かったが、
誘拐したペットに餌代を喰われた。

でも、このペルシャ猫、本当に可愛い😍
一人暮らしが明るくなった。

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