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あの日のあの光景

お盆やすみに故郷の瀬戸内海の島へ帰ってきました。

そのときに台風明けだったので海などには行けず
2021年10月にオープンした神戸の都市型水族館アトアを訪れました。

神戸は私が7才から17才まで育った町で訪れた水族館のあるその場所は神戸の港、

かつて故郷の淡路島行きの船がたくさんでていた港で

私にとってはなつかしい思い出のある場所でした。

幼少の頃、港から元町まで母親とよく手をつないで歩きました。

子供にとってはながい道のりで私は母親に何度も

「 つかれた  もうつかれた〜 」

と言ってオンブやジュースをせがんでいました。

せっかちで気の短い父親はいつもはるかずっと遠くのほうを先へ先へと歩いていました。

母親はいつも叱らずに何度も立ち止まってくれながらも
きっととても困っていたことと思います。

港駅にはさびれた喫茶店や定食屋があって
ちょっとほこりがかかったようなクリームソーダの食品サンプル、焼きそばやスパゲティナポリタンが子供の目にはおいしそうで

ごくたまにお店に入らせてくれるときがあってそのときにはとびきりにうれしかったことなど

最新の水族館を訪れてすっかり変わり果てた港と
すっきりと晴れた空と海とをながめるやいなや

その頃の光景があざやかに思い出されました。

そして最もクリアな記憶として思い出され

最も切ない記憶として胸いっぱいの思いを抱かせられたのは

やっぱり母親と手をつないだときの手のひらの感触

やわらかくておおきくてだけど

子供心にもなぜかどことなくはかなさを思い抱かせた母親の手のぬくもりでした。

少し忘れかけたみたいに思っていたけれど

今でもちゃんと思い出せるんだ

お母さん

私はいつかの日の誓いを今も忘れないで

今もそんなふうにしっかりと生きているよ

びっくりするくらい明るく生きるって

誓ったとおりに

がんばるって言葉がどんなにすたれても

びっくりするくらい明るく楽しく

がんばって生きていく

今は涙はもう出ない。だけど

負けない

って言葉がいのちから浮かんだその瞬間には

いつも今でも無意識に母親のことを思い出しています。

お盆明けのまぶしい炎天下の夏の光のなかに

あざやかな母親の姿がくっきりと思い出されました。

お読みくださってありがとうございます。

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夏の思い出

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