見出し画像

トレランのひとほとんどアシタカ

私のトレランデビューは、
プロトレイルランナー奥宮俊祐さんのイベントであった。

最初に事務所に遊びに行ったときに、
「今度10㎞のセミナーがあるから参加してみたら」「初心者向きだよ」
と誘ってくれたのである。

しかしこちとらランニングを始めて半年、
普通の道を5㎞が限界の40代だ。
初心者向きといっても10㎞て。最高記録の倍やん。
それも、山やん。

そんな懸念を口にしたところ、奥宮選手ことおっくんはとびっきりの笑顔で
「ぜーんぜん大丈夫だよ」と言った。

私は、
へえ、大丈夫なんだ!

と思った。


結論から言うと、だいじょばなかった。

山道の登りってアナタ、大変なものですよ。
私すーーーっかりそのこと忘れてたから。
子どものころ以来、山なんて入ったことなかったから。

息も絶え絶え、一歩一歩の足を上げるのが必至の苦行。

ところがほかの参加者は、もうほとんど、アシタカ。

ひょいひょいひょいひょい、軽々と談笑しながら登って行っちゃう。
下りだって、サンのピンチに駆けつけるアシタカみたいに下りてっちゃう。

知ってる? 駿はね、山を駆け下りるアシタカを作画する際、
「前傾で」って言ったのよ。下ってるのに、前のめり。
テレビのドキュメンタリーで見たんだから、本当ですよ。

そんな勢いで、集団で駆け下る大人たち、
この目で見るまで信じられない光景ですよ。

今考えれば、そんなにみなさんスピード出していなかったと思う。
でも私からみたら「うそだーっ」という衝撃映像だった。
昔山で天狗を見たっていう人、それトレイルランナーだったんじゃないの?と思った。

※ちなみに山の中は歩きの登山客優先なので、人が見えたら手前で走るのをやめて歩くのがルール。安全に先に通ってもらうようにしています。
おっくんの大事な教え※


登り方のコツを教えてくれるおっくん


そんなアシタカもしくは天狗についていけない一般市民である私は、
もう足ガックガクの事態となっていた。

それでも、ものすごく楽しかった。
山の中を走り回るって、こんなに気持ちがいいんだ!

翌日からすごい筋肉痛で、生まれたての小鹿もかくやというムーブを数日繰り出したけれど、それでも「次の週末も行きたい……!」と唸りだすほど楽しかった。


私はヒジョーに短絡的に思いついたらやらずにおれん人間で、
もう思っちゃったもんだからそわそわそわそわ、

夫に
「ネットでトレランシューズ買いなよ。ザックも。
そしたら週末に間に合う? 一緒に行ける?」
とぐいぐい迫り、

幸い夫も「いいよー」と買ってくれたので
もうセミナーの翌週にはふたりでトレラン的なものを開始していた。

夫はロードバイクで山道を走るのが趣味なので、山に詳しかったのが幸い。
ロードとトレイルで道は違うけれど、接するところもあって土地勘があるのだ。

そこからはもー、毎週末が山の中。

以前書いたように
走るというよりよたよたしているだけなのだが、

新しい世界を教えてくれたおっくんと
地図を得意とし同行してくれる夫には感謝しかない。

美しい木漏れ日、
澄んだ空気、
爽やかな葉擦れ、
枯れ葉を踏む音、
小川のせせらぎ、
小鳥のさえずり、
春には舞う花びらに、
驚くほどいろいろな色彩を見せてくれる紅葉のころ。

そんななかを跳んだり走ったり、
時折叫び出したくなるような喜びに見舞われる。

本当にまあ、輝くように素晴らしい世界なんですよ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?