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笑いのカイブツ

ネタつくり(?)に全力を尽くしたツチヤタカユキの自伝的な私小説が原作の人間ドラマ。

ツチヤタカユキという名前に覚えは無かったのだけれど、ケータイ大喜利のレジェンドと言われて、もしかしてと思い出すことができた。
当時、私も何度かガラケーからケータイ大喜利に投稿したことがあったから、レジェンドの作品はいつも切れ味鋭く刺さる言葉があって見ていてとても気持ちよかったのを覚えている。

しかし、レジェンドを目指すのに「5秒に1ボケ」という練習に行き着くのはやはり天才なのかと思う。そんなスプリンターみたいなボケで笑えるんかと普通は思ってしまうところだと思う。

人間関係不得意

本作のテーマとも言える「人間関係不得意」というワードは、ツチヤタカユキが西寺(仲野太賀)とのメッセージの最後に使われていた。

この時もそうだが、酔い潰れて川へダイブしたり、ごみ収集場所に酔い潰れたり、ホストの体験入店で酔っ払って大暴れしたり、何度も「ここで死んじゃうんじゃないか」というシチュエーションが繰り返される。それでもツチヤは生きている。

まさに「この地獄で生きろや」が効いてくる。

西寺(仲野太賀)

お笑いをテーマに仲野太賀が芸人やるならマクベスかなと思ったらそこは違った。

本作では水木(板橋駿谷)とのコンビで本番一発撮りの漫才を見せてくれる。
一瞬、「今、噛んだ?」と思わせるところがあったがそこはなんとか耐えたか、ライブ感を活かしてそのままオッケーとなったのかは不明ですが。

ピンク(菅田将暉)

大阪サイドでは、菅田将暉演じるピンクが、酔い潰れたツチヤを救うわけでもなく、突き放すわけでも無い距離感で仕事を斡旋したりしている。

ピンクは言わば、半グレのような人間であるが、ツチヤのような不器用に生きてる人間を観察するような気持ちで構ってしまうのだろう。

ピンク「この地獄で生きろや」
ツチヤタカユキ「…承知」

この「おもろいなー自分。知らんけど」くらいの適当感を出しつつ、強烈に世の厳しさが現れていると思う。

まとめ

器用に生きれない、不器用ながらこれしかできない。しかし突き詰めて、極めていくことの難しさや厳しさ。

才能にスキルを全振りした人生はこんなにも生きづらく、輝くのだとマザマザと見せつけられた傑作です。

才能に乏しく、おもんないと思われてる元芸人でも、器用に立ち振る舞い、上手いことやってる人が多い中、こんな生き方ができるってカッコいいじゃないですか。

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