見出し画像

(掌編小説)ポーションと母親

4〜5歳頃の記憶。

これは育ての親である『母親』と呼べる存在との数少ない思い出の一端にすぎない。

「おかぁさぁん・・・」

「何かしら?」

「今日も教えて。」

小さな腕で抱えるように僕は、ひとつの魔道具を持ってきた。

ポーション作りに用いるものである。

「あなたは完璧に作れてるわ。」

「おかぁさぁんみたいに、作りたいの。」

小動物で、ポーションの作用を比較した事がある。

即効性や効力。

同じものでも、劣るところがいくつかあったのが不満だった。

「それはもう技術の問題ではないの。」

「えぇ、わからないよ!?」

「焦らないで、単純なのよ。私はあなたの怪我を治したくて作ったの。あなたは?」

真似ただけである。

「まずは誰にでも優しくなりなさい。その思いやりが、あなたをもっと成長させるから。」

「・・・うん。」

いまひとつ飲み込めなかった、この言葉。

まずは母親の為にと考え、その全ての行動を模倣するところから始めた。

そして翌年。

薬草を取りに外出し、帰宅するとそこには誰もいない部屋。

「どこに行ったの、おかぁさぁん?」

声だけが響く。

いつもの食料調達だと思った。

その日は時間を忘れてポーション作りに夢中になる。

しかし日が沈みまた登りきっても帰ってこない。

きっとどこかで怪我をして僕を待っているんだ。

僕は食料調達に良く向かうエリア、森林区間へポーションをバックに詰め込んで出立する。

金髪青眼の少し耳長い特徴の親を探しに・・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?