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思い出のムック本「ワタシズム宣言」

「ワタシズム宣言」という本があった。

もっと自分にわがままになれ、という、当時の若い女たちを励ます内容だった。タイトルは刺激的で、表紙もおしゃれだった。ムック本と呼ばれる作りで、雑誌のように、色々な内容があり、くすぐられた。

自立を促していたのか、我慢は美徳ではないと言っていたのか、それとも、ただ、自分の欲望に忠実になれと励ましていただけなのかは忘れた。若い人みんなに向けてではなく、女性読者が対象だった。自分らしくしていいと、こんなふうに堂々と言っていること自体に、元気づけられた。うちの親の世代にとっては、私たちは、もう十分現代っ子で、わがままだったのだろうけど。

本の内容で、タイトル以外に、いつまでも記憶に残ったことは一つしかない。編集にたずわっている人の一人が、この宣言を実行している人の例として紹介されていたこと。若い女の人の写真があり、その人は、フリーの編集者と書かれていた。


きのう、観世(かんぜ)バタコさんの、音声記事を聞いて、この本のことを思い出した。

聴きながら、自分にも覚えのある、「リミッターを外す」難しさや、親に対していい子であろうとする思いについて、考えさせられた。


わがままかもしれないとか、いい子でいたいと、無意識に思ってしまうところのあったわたしは、実際に、わがままであったし、いつもいい子ではなかった。それでも、リミッターをはずすことに、いつも、かなりの労力を要した。したいことを、すぐしてしまわず、逡巡した。かならず、親や周りの大人の気持ちや事情を考えていた。

自分のしたいこと。なかなか行動に移せなかったこと。それでも、若いわたしは、何度も、この本のタイトルのように、殻を破ろうと、バタコさんの言う、リミッターをはずそうと、してきた。ワタシズム宣言を実践しようとしてきた。(これも、うちの親に言わせたら、何度どころか、いつでも、なのかもしれないが。)

ワタシズム宣言。

若い世代の女性を励まそうとする出版物。それをつくった、前行く大人たち。その頃には、かなりインパクトのあったタイトル。正規勤務でない、社会人の女性。フェミニズムという言葉がまだ一般的には広まっていなかった頃。この本に、少なくとも題名に、意識している以上に、わたしは、助けられてきた気がする。


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