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【詩】 選んで記憶にしたこと

殺人重ねる少女のお話
文芸クラブのノートに書いた
6年女子の40ページ
「お話作りはもうやめたら」と母が言う
「やすこにお話し書いてほしゅうねえわあ」

再放送の「巨人の星」で
いっしょに 飛雄馬に夢中になったヒロが
飛雄馬のお嫁さんになりたいと言う
飛雄馬が好きだから伴宙太になりたいと言う私に
「大きいことして」とヒロが言う

中学の同級生のエッパが
私をほめる
「あんたは 頭がいいと思うけど
頭のいいのが 顔に出ない」と
「あたしとでも 誰とでも 話せる」と

高校1年進路指導
行きたい大学を言えというので
「岡山大学医学部」と言ってみる
職員室で大笑いする
数学のヤマカワ先生

親もまわりも期待しない
女の子の私に
「医者になれば」と兄が言う
自分の夢は、「オマエに金を稼ぐ仕事をさせて
左うちわで暮らすことだ」と

ボロボロのアポートの4畳半の部屋で
哲学科のグラカンさんが言う
「キミは言葉を使うのがうまいな」と
「今はやりの、コピーライターとか
できるんじゃないか」と

「アキヤマはまだ ここらにおるんか」
高校の時の担任のカタヤマ先生が言ったって
「ここにおったらおえん
アキヤマは出て行かんとおえん
街に行かんとおえん」と

詩の朗読で
ラジオに声が流れ
新聞に載った私に
母が言う
「あんた かんちがいしとるんじゃ あるめえな」

英語のチューターのバイトをしているカリームが
相手の人に言ったんだと
「ヤスコは あんなまちがいだらけの英語でも
堂々と話すから 通じるんだ」と
「聞けという勢いで話すからだ」

自信も自尊心もボロボロの
私にハディジャがかける言葉
「私たち どうしてここにいると思う?
私がいたいからよ
あなたがいたいからよ」

言葉が
だれかの言葉が
私を動かし
私を止めた
私を励まし
私をおびえさせた
私に自分は誰なのかおしえてくれ
自分が何者でもないとおしえてくれた

それでも
私の記憶の言葉は
私がつくった思い出箱
入れたものもあるし
入れなかったものもある

私が自分で
私が影響を受けることを選んで
私をつくるために ためた言葉たち

忘れていたけど 長い間
そして もう その全部が 今は
ほんとうの ただの記憶でしかないけれど

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