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伝説のバイカラーストックの話。

下山は今でも苦手だが、登山を始めた頃はもっと苦手だった。滑りそうになる地面を気にしながら歩くのは緊張して疲れるし、ずっと下を見ているので首も凝る。
そんな大変な下山を少し救ってくれた存在が「ストック」だった。※杖のような棒状のもので、体を支える点を増やして足への負担を少なくするために使う登山道具

両手に持っている杖のようなものが“ストック“

神奈川県の大山に行った時に、その存在のありがたさを知った。
その日は、登りも下りもロープウェイを使わなかった。最後に男坂から下ったのだが、これまでの登山による疲労と、段差の高い階段を下りることへの緊張感とで、かなり参っていた。そんな私を見かねて、一緒に行っていたメンバーがストックを貸してくれた。おかげで一気に歩きやすくなり、本当に助けられた。おそらくうまく使いこなせていなかっただろうが、それでもストックがあるとないとでは大きな違いなのだと痛感した。その翌週には、ストックを買いに登山道具のメッカと言われる神保町へ行っていた。

 
ストックもたくさん種類があった。なるべく荷物は軽くしたいと思っていたから、軽さを重視して何店舗か見ながら吟味した。
最後に入ったお店で、明るい光を放ったストックが目に入った。それは爽やかなレモンイエローのカラーが可愛らしく、これまで見てきたものたちとは放つ空気感が違った。色違いの赤がサンプルとして出ていたので試しに使ってみると、めちゃくちゃ軽い。これだ!と即決した。

ウキウキとレジに持っていくと、店員さんが「使い方わかりますか?今からご説明しましょうか?」と言ってくれたが、事前にサンプルで試していたので、その申し出はお断りした。
一緒に買い物についてきてくれた友人にも「黄色似合うもんね!早く使って欲しい!」と言われ、ほくほくした気持ちで家路についた。

これが手に入れたレモンイエローストック

家に帰って早速ストックを伸ばして広げたのだが、レモンイエローのその子は予想外の姿で登場した。レモンイエローなのは上部だけで、長さを調節する、使わないときは収納されている部分はライム色だった。伸ばした状態の色の配分で言えば、ライムの範囲の方が広いことになる。一気に“ライムのこの子“に寝返った。サンプルにでていた赤はバイカラーではなかったので、信じがたかった。店員さんのフリがここで回収されようとは、誰が予想できただろうか。
こうして、ひょんなエピソード付きのライムちゃんは、私と山を登り始めた。

実際に使うとライムストック

このひょんさが相まって、周囲にもライムちゃんは可愛がられた。もちろんストックとしての機能は問題ないし、徐々に愛着が湧いていった。
そんな大事なライムちゃんの片方を、那須岳で落としてしまったことがあった。泣きそうになりながらロープウェイの駅員さんに、手元に残っていた片方を見せつつ「これと同じ黄色のストックが落とし物に届いていませんか?」と問い合わせた。すぐにスタッフ間で連絡を取ってくれた。
 
ほどなくして、「青いストックでしたら届いているようなのですが、違いますよね?」と返答があった。「いやいや、これと同じレモンイエローに見せかけたライムですよ、青なんてどこにも入ってませんよ!」と被せ気味につっこみたい気持ちを抑えて「違いますね。」と冷静に答え、もし見つかったら連絡を入れてもらうようお願いし、その場を離れた。

なくしてからすぐに問い合わせたのに見つからないなんて、半ば諦めながら帰路に着いたが、幸運にも見つかったという連絡が届いた。確認用に送ってもらった写真には、ばっちりレモンイエローが光っていた。その見慣れたカラーに、よくぞ戻ってきてくれたと安堵した。
こうして、まさかのバイカラー発覚から、色違いで間違われそうになるという2つの伝説を残したストックは、今でも元気に私の相棒をしている。

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