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ゲレンデで起きた11分の1の話。

私はウィンタースポーツビギナーなのだが、何を血迷ったか、スキースノボ合宿に参加することになった。
総勢11名のうち本格的な初心者は私だけで、去年スキーを始めたちょいビギナー1名、残りはみんなガンガン滑れるというラインナップだった。
で、このちょいビギナーさんは、2023年の顔として私の心に爪痕を残した人物、しょうまくんだ。➡️詳しくはこちらを読んでほしい
そんなメンバーだったので食事時間以外は、ガシガシ滑るチームと、私+生贄先生チームに別れて行動した。

1日目、スノーボードを初めて手にした。思っていたよりも重くて、「スノーボードって、サーフボードより重いんだね。」と口にしていた。
我ながらおしゃれな表現だと満足していたら、「サーフィンは1回しかしてないし、泳げないよね!?」と一蹴された。海に憧れることしかできない湘南人なのだから、それくらい大目に見てほしい。

サーフボードよりも重いスノーボードをゲレンデまで運んだあとは、左足だけ板にとりつけるように言われたので、見様見真似でとりつけた。この状態でリフトに乗るため、板を引きずりながら乗り場まで移動するよう指示されたのだが、これがめちゃめちゃ難しい。立つだけで精一杯だった。進もうとすると板が滑り出して、こける。とんでもないことをしようとしているのではないか、と震えた。
それでもなんとか板に乗れて移動もでき、リフトで標高を上げ、コノハなるもので降り始めた。転んでは立ち上がり、の繰り返しで疲労がすごかった。「センスはゼロじゃないから大丈夫。」という褒められてるんだかよくわからないセリフに希望を見出しながら、なんとか1日目が終了した。

早朝はこんな雰囲気で滑れるそうだ

2日目、普通にゲレンデを滑れるようになることを目標に、ターンの練習に入った。
体重移動をしながら左右へと進みながら降りるのだが、これがまた難しい。昨日以上に転びまくった。しかも、疲労とアザと筋肉痛に反して成長がみられない。
3本滑ったあと、今日はもう終わりたいと密かに思っていたが、一度休憩いれてからラスト1本行こうか、という流れになった。流れを断ち切るほどの強い心はなく、腹をくくるしかないと思っていたのだが、救世主しょうまが現れた。

 
彼はこの日、朝一の滑走中にスマホを落とし、探しに戻っている最中にみんなとはぐれ、そのまま離れ離れのまま滑っていたそうだ。
お昼に11人みんなが合流したとき、「11人で来たのに1人で滑るなんて寂しすぎました。」と、11分の1の孤独を語っていた。もちろん本人の悲壮感に反して、周囲は大爆笑である。

彼は普段、師匠のスキー板を借りて滑っているのだが、スノボの方が向いているかもと、お昼を食べたあとは、ゲレンデでスノーボードをレンタルして挑戦していた。そして、1本滑った後に一人で休憩していた。
我々も同じタイミングで休憩に入ろうとしていたので、そこでしょうまくんと合流した。彼は結局、この日はほぼ11分の1で行動していたようで、「寂しすぎましたよ。」と嘆いていた。どうしてこうなってしまうのか、申し訳ないが笑わずにはいられない。

そんな頃、師匠からしょうまくんに、「俺の板はどこにある?置きっぱにしていないか?」と確認の連絡が入った。ゲレンデにはたくさんの人がいて、使わずに立てかけられている板も数多くある。間違って持って行かれる可能性も否めない。
しょうまくんは、借りた板をなくすことになってはと不安になり、「車に積んできます。戻ったら一緒に滑りましょう。動かないで待っててください!」と、また1人はぐれるのを気にしながら駐車場を目指していった。我々は、しょうまくんが戻ってきたらみんなでラスト滑ろうかと話しながら、彼の帰りを待った。私以外3名がやる気なので、もうついていくしかないと再度腹をくくった。

 
しばらくしてしょうまくんが帰ってきた。目が合うなり、辛そうな顔で「もう僕は戦意喪失しました。これで上がります。」と言った。
何事かと話を聞いていくと、車を停めていた駐車場がわからなくなり、板を担いだまま歩き回っていて、しかもとうとう見つけられず諦めて帰ってきたということだ。「バカってつらいです。。」と一言もらした。
こうして戦意喪失したしょうまくんを盾に、私も意気揚々と離脱組として温泉へと向かった。バカ万歳!感謝を込めて高々と宣言させてもらいたい。わざわざレンタルした板を一本滑っただけで返すことになるなんて、相変わらずの愉快さも愛おしいではないか。バカ万歳!

蒸しエビをパックご飯に載せたしょうま‘s ディナー
※宿のオーナーに「これはなんですか?」と聞かれた代もの

最終日、私は筋肉痛とアザで全身が痛かった。さらに天気も悪く、視界は白かった。今日ばっかりは最初から遠慮しようと、一人で白馬の町中に出てカフェに行くことにした。
読書しながらのんびりとした時間を過ごして、みんなが滑り終わる頃、ゲレンデに戻る予定だ。

2時間ほど経った頃、青空が広がり始め雪を積んだ山々が見えた。青と白に山々、それはそれは圧巻の姿で、みんなはこれを一緒に見ながら楽しく滑っているのかと思うと、一気に寂しさが込み上げた。これが11分の1の孤独か。あんなに笑わせてもらったが、当事者には想像以上に切ないものがあった。晴れたね!と、一緒に美しい景色を味わいたい。みんなの明るい笑い声が恋しかった。
それでも昨日のしょうまくんのように11分の1を経験したというエピソードは、笑いをとれるのではないかと気持ちを入れかえ、みんなの待つゲレンデに戻った。

しかも、この日の雪は3日間で最高の状況だったようだ…もふもふ…

ところが私が到着した頃、すでにみんなは解散しており、残っていたのは同じ車で帰る2人だけだった。本来であれば11分の10の笑いも11分の2に収縮し、ただただ切ない気持ちがくすぶった。
この合宿で最も爆笑を誘った11分の1は、私が人知れずひっそりと回収して幕を閉じた。

次は集合写真に写れるように、スノボスキルを磨いておきたい(切実)

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