平凡な暮らしに潜む影
さゆりの自宅のお隣さんは、窓も網戸もガラガラっ、ピシャん!と閉めている。度々さゆりはこの老婆はどうして扉をそっと閉めることが出来ないのだろうかと思っている。老婆はいつも、紫色のよれたワンピースの裾から破れたシミーズをはみ出している。太めの身体に長靴を履いてドスっドスっと土を踏む音を立てながら、あーーーキツイ、あーーキツいと大きな声を出して庭の生い茂った雑草をむしりとっている。まだ越したばかりの頃に引っ越しのあいさつは済ませたが、それ以上に関わることは出来るだけしたくない。ある