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今からでもやりたいデジタルミレニアム法。日本版SoundExchangeでネットラジオ局解禁を!

ミュージックビジネスワールドワイドにこんな記事がありました。


ネットラジオ局を定義して、推進した米国市場の成功

  ”米国の演奏使用権団体SoundExchangeは、2023年第2四半期に2億6900万米ドルのデジタル使用料をクリエイターに分配した”というニュースです。
 今の為替だと約400億円。四半期ですから、年間だと1600億円ということになりますね。”2023年上半期の分配金は4億9800万ドルとなり、2022年上半期の4億6490万ドルから7.1%増加した”ということで上昇基調のようですね。
 SoundExchangeは20年前に設立されたNPOです。デジタルミレニアム法に則って、原盤権利者と実演家に対していわゆるネットラジオ局(ウエブキャスティング系サービス)から使用料を徴収して分配します。
 ユーザーが聴きたい楽曲を再生する仕組みを持たずに、あくまでステーション側が編成した楽曲を再生するというのが基本です。4曲連続して同じアーティストの楽曲を再生しない、一定時間内に同じアルバムから再生しないなどの細かなルールが定められているそうです。

日本でネットラジオ局がやれない理由

 日本との比較は対照的です。一つの音源には3つの権利が存在しています。(知らなかった人は今日覚えてください(^_-))
 楽曲の権利=著作権は、JASRACやNexToneと包括的に契約することでクリアできます。一方で、原盤権や実演家の著作隣接権は、個別の許諾が必要で、ラジオ的な事業をやるときには、非常に不便です。
 日本で成立しているのは、ダンスミュージックに特化したblockFMくらいでしょうか。代表がDJでもある、m-floの☆Taku Takahashi君で、ジャンルが絞られていて音楽家同士が信頼関係があるというレアな例ですね。

プロ直伝!職業作曲家への道』(リットーミュージック刊)より

 日本で実質的に認められているのは、許認可を受けた放送局が、放送番組を同時にネットに流す「同時再送信」だけと言えるでしょう。業界団体と話 し合いを持って、放送に準ずる形で許諾されている状態です。
 
 日本の権利者団体や、総務省は「放送と通信の融合」というテーマを掲げて20年近くになりますが、海外ではそもそも、この言葉の意味がわからないでしょう。電波を通しているのか、ネット経由なのかは、ユーザーにとってもどうでも良いことです。コンテンツに興味があり、自分が消費するツールが、パソコンか、テレビか、スマホかは気にするにしてもね。
 「日本ではネットラジオ局が実質できない。商業的にリリースされている楽曲のほとんどを、ユーザーは自由に発信できない」というのは、機会損失甚だしくて、書いていても気が遠くなります。
 そしてアメリカでは、ネットラジオ局をやれるルールを作ったことで、日本のデジタル音楽市場全体よりも大きい収益が音楽家側に分配されているのです。
 テクノロジーを積極的に活用することが、市場拡大、産業活性化につながるというわかりやすい事例だなと改めて思いました。

今からでも日本版SoundExchangeをつくろう!

 そして、今からでも、日本版SoundExchangeをつくって、誰でも「ネットラジオ局」を解説できるようにしたいですね。
 ちなみに、SoundExchangeが徴収した収益の分配は、下記のとおりです。日本流に置き換えれば、原盤権利者(レコーディングの費用を出した人)が1/2で、音楽家(歌唱演奏した人)が1/2、そして音楽家はフィーチャードアーテイスト(その人の名前で作品がリリースされている人)とサポートミュージシャンが9対1となっています。
 音楽がCDからデジタル配信になり、デジタルサービスが出てきたことで、どんな分配率がフェアなのかという議論が重要になってきていますが、さすがアメリカは合理的な料率だなと思います。今後のデジタルサービス上での音楽消費の分配はこれがモデルケースになると僕は思っています。

関連記事紹介

5年前の記事ですが、弁護士の方が書いたこの記事が細かく解説されていました。著作隣接権は、楽曲の著作権と比較しても、国ごとに法律の建付けが違って複雑なんですよね。デジタル化が進む中で、分配ルールについては収斂していく方向だと思いますけれど。

逆に言うと、ラジオ局は「同時再送信」ルールをもっと積極的に活用してほしいですね。crosssFMに期待します。

権利者団体と分配については、こんな視点もあります。

SoundExchangeを日本には、2015年の書籍にも書いています。日本は歩みが遅いなとため息がでますね。自分の力不足も感じています。


モチベーションあがります(^_-)