ブロックチェーンの時代に私的録音補償金の話をしている違和感

<今週のpick up>
●スマホやPC本体に「著作権料上乗せを」国際組織が決議




 正直を言うと、15年前の記事かと思いました。日本には私的録音補償金という制度があります。これは、録音機器を使って、個人が自分で楽しむ(私的録音)は、基本的には自由なのだけれど、デジタル機器は劣化がアナログ機器と比べて著しく低いので、権利者について、機器の販売価格から一定の金額を支払い(補償)しましょうという法律で、MDやDATでハードとメディアの両方に課金されていました。iPodが出てきた時に、まさにこの制度のど真ん中の対象商品だった筈なのに、補償金が権利者に払われることが無いまま、今に至っています。法律の立て付けが、文化庁長官が対象を指定するとなっていて、文化庁が指定しなかったからです。論理的には破綻していて、そもそもの法律の存在意義が否定されている状態が長年続いています。

 指定されなかった理由としては、Apple社が対象なので、アメリカ側からプレッシャーがあったとか、家電業界の団体であるJAITA(電子情報技術産業協会)が管轄官庁である経産省経由で、文化庁に圧力が掛かったとか、様々な噂があります。理由はわかりませんし、僕はこの件には関わってなかったので、内情をしらないのですが、文化庁に対して心の底からがっかりしたことはよく覚えています。音楽業界としては恥ずかしい話だと思っています。

 この時に、私的録音補償金制度の立法の趣旨に則って、iPodやmp3ウォークマンに課金されていれば、iPhoneなど、携帯電話からも音楽権利者側が徴収できた可能性があります。デジタルへの過渡期の落ち込みには、有効な対策になったはずです。そんなことができずに、デジタルサービスの普及には後ろ向きでいた日本の音楽業界(この件は文化庁の弱腰が一番の問題ですが)は、ちぐはぐだったと思います。

 なので、今年になって、世界の著作権団体でこんなこと言っても、「なんだかな?」と言う気持ちが拭えません。2019年の権利者団体がやるべきことは、来るべきブロックチェーン技術が標準化される社会の中で、透明性、即時性のある権利分配の仕組みを率先してつくっていくことです。ブロックチェーンを活用して作られるだろう権利分配の仕組みはこれまでの仕組みを根本から覆す可能性が非常に高く、その未来と、これまでやってきた方法論をどうすり合わせるのか、ソフトランディングに向けての知恵を出すべきじきだと言えます。多くの音楽家にとってフェアで、ユーザーが納得でき、事業者が理解を示して、協力するスキームについての議論にエネルギーは使いたいものですね

 幸いなことに昨年の春頃から日本の音楽業界もデジタルに対するネガティブな空気は一掃されました。欧米のレコード会社はストリーミングサービスで復活し、スマートスピーカーなどの次世代サービスでガンガン稼ぐ!と強気の予測を出しています。
 ITサービス全盛の時代において、音楽の才能に公平な分配がされることが極めて重要ということには誰も異論は無いでしょう。

 そんな中、こんなニュースもありました。
●Sony Music to deliver 'Real Time' royalty data to artists, and enable monthly cash withdrawals 

 海外のソニー・ミュージックが、今年秋にも”リアルタイム”のロイヤリティレポートと、毎月の印税支払いを可能にするとアーティスト、マネジメントに連絡したと記事です。テクノロジーの進化は早く、世界は急速に動いています。
 透明で、公正で、即時性の高い権利分配への取り組みを牽引するのはスタートアップのサービスになる可能性も高いです。ルールや仕組みが作らえる時に、日本が遅れて損することの無い様に取組んでいきたいですね。

モチベーションあがります(^_-)