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『平和への架け箸』予約販売から1年。今のヤマチクの想いと、今後の支援について

こんにちは。「竹の、箸だけ。」に、こだわり続けてきた、熊本のお箸メーカー「ヤマチク」です。純国産の天然竹を人の手で一本一本刈り取り、削り、「竹の箸」を作り続けてきました。

2022年2月28日、ヤマチクはお箸の売上をウクライナへ寄付するため『平和への架け箸』の製造・販売をスタートさせました。あれから1年、ロシアのウクライナへの侵攻は止まりません。この先どんな世界になるのか、不安を抱え続けている人もいるのではないでしょうか。

この箸の製造は、今も続いています。作ることを止めるのは、ウクライナが復興したとき。ただ、今すぐに侵攻が止まったとしても、長い道のりになるでしょう。熊本では、2020年7月に起こった熊本豪雨の爪痕がまだ残っているくらいです。

今回は、『平和への架け橋』を始めたきっかけ、1年経って思うことを振り返ります。寄付のあり方を改めて考えながら、未来を見据える機会にできたらと思います。

この一年の『平和への架け箸』

『平和への架け箸』を作りはじめたのは、2022年2月24日(木)に、ロシアがウクライナ侵攻を始めたことで、平和が脅かされているという怖さを感じたと同時に、何か自分にできることはないのか、と考えたのがきっかけです。すぐにヤマチク社員全員の賛同を得て、2月28日から、価格は1000円、全額を寄付することを前提に、150膳の予約販売をはじめました。

ご予約はあっという間に埋まり、その後、6回の追加予約受付と再販を重ね、イベントに出店した際にも販売するようになりました。これまでご購入いただいたお箸の数は、自社のオンラインショップだけでも2000膳弱。毎月買い求めてくださる方がいて、2023年の2月にも20膳ご購入いただいています。

ウクライナへの支援には、販売したお箸1膳につき1000円を寄付しています。この1年で200万円近く寄付をしてきました。

これまでのことを振り返ると、ニュース速報が流れて以降の、やり場のない不安や、何かしなければ! という気持ちを抱えていた方がたくさんいらっしゃったのだと、思います。その方たちの想いを、お箸でつなぐことができたのであれば、やる意味があったのだと改めて感じます。

お客様からの再販オーダーと社員の声が継続の後押しに

予約販売の再開を決めたのは、最初の150膳があっという間に締め切ってしまったからでした。再販オーダーも1500〜1600件いただいていました。ヤマチクのお箸を通してウクライナを支援したいと考える方がこれだけいる。それなら、ちゃんと継続しよう、と考えたのです。

ただし、予約販売を再開するには、どうしても価格を変更する必要がありました。『平和への架け箸』を始めたのは、やらずにはいられない、という感情からでした。でもお箸を作る以上、竹の切子さんから仕入れた材料、社員の技術と時間、発送にまつわるあれこれが発生します。

このままの価格で、ヤマチクとして続けていくには、なかなか難しい……。悩みながらも、再販オーダーをいただいていたことと、社内からも、再販しよう、という声があがったことが後押しになりました。

そこで、寄付額1000円は変更せずに、2022年3月の予約販売再開からは、支援を継続するため、価格改定へのご理解をいただきました。

以降、ご購入いただいているお客様には、ヤマチクの経営についてもご承知いただきながら、想いにも賛同いただいていると思います。本当にありがたいことです。

この1年で、もう一つの変更がありました。寄付先の変更です。これは、支援の対象を明確にするためと、お客様からお預かりした寄付金をしっかりと有効活用してもらうためでした。

ヤマチクがウクライナの支援を決めたのは、侵攻が始まってから4日目。当時、確実に支援につなげてもらえる窓口の判断が難しい状況でした。いろいろと思案した結果、一番確実に送金でき、支援に直結すると考えられる、在日ウクライナ大使館の口座に振り込むことにしたのです。

その後からは引き続き大使館の口座に振り込んでいましたが、実は、大使館も口座からさらに、どこかへ送金されるわけだから、二度手間になっている・・・という考えも頭のすみにありました。そこで、2022年10月の再入荷のタイミングで寄付金を変えることにしました。

変更先は、日本ユニセフ協会です。ウクライナの子どもの命を守るための寄付と明言していること、名が通っている団体ということが、その理由でした。

寄付先を選ぶにあたって、子どもに焦点を当てたのは、子育てしている社員がヤマチクに多いことからでした。今回の戦争報道に、他人ごとではないと思っている社員も少なくありません。

また、名が通っている団体ということは、多くの人や団体からお金が集まるだろうと推測しました。ヤマチクから、1膳あたり1000円を寄付するといっても、そもそもそんなにたくさんの数を作れるわけではありません。数万円の寄付の月もあります。

お客様の志で集まったお金といえど、その金額でできることにも限界がある。そのため、母体がしっかりとしていて、そこに集まっているであろう大きなお金と合わせることで、有効活用してもらえると考えたのです。

ウクライナから「支援は不要」と言われるまで

ヤマチクでは、2020年7月の熊本豪雨のときにも、寄付つきのお箸『相合箸』を発売しています。こちらは、一膳につき400円を、復旧支援に尽力されている「BRIDGE KUMAMOTO®」に寄付しています。

熊本豪雨は、もう3年前のことです。県外の人には「ニュースでも見ないし、もう大丈夫なんでしょ?」と言われますが、そんなことはありません。自宅が壊れてしまったままの人もまだいて、復興したのだと言い切ることができるまでは、まだまだ長い道のりだと感じています。

復興までの道のりが長いのは、ウクライナも同じだと思います。ましてや、侵攻されているという状況では、影響もより広範囲に、より段階的にあるはずです。

復興は、建物やインフラを整備するだけではありません。被害に遭われた方たちの心身のケアや子どもたちの教育を支援したり、雇用が戻ったりしないと、人々の生活は戻ってこないのです。

熊本豪雨の経験から、復興と支援の存続の重みは知っているつもりです。『平和への架け箸』が終わるのは、ウクライナから「もう大丈夫、支援は不要です」と言われるとき。最後まで見届けます。

食卓は笑顔があふれる場所でいてほしい

『平和への架け箸』を始めた当初は、偽善ではないか、といったようなことを言われたこともありました。寄付自体が、日本人にはなかなか馴染みがないとも言われます。

でも、寄付はそんなに大仰なものでなくてよいと思います。転んだ人がいたら気遣う、機械の操作がわからない人がいたら教えてあげる、といった、困っている人に手を差し伸べる、さり気ない気持ちでよいのだと考えています。

この1年、多くのことが起きました。いくつもの社会的に大きなニュースもありましたし、個人的な出来事もたくさんあったはずです。身の回りでウクライナの話をすることも少なくなり、人の関心の移り変わりが早いことを実感してきました。

だからこそ、お箸が手元に残り、思い出すきっかけになる形でできたことは、とても大事なことだったと再認識しています。お箸を買っていただいたお客様は、食卓に並べるたびにウクライナに思いを馳せているかもしれない。そのこと自体が、尊いことであると感じます。

食卓は笑顔があふれる場所でいてほしいから、平和を大切にしたい。その思いは、今も続いています。

語り手/山崎彰悟 聞き手・書き手/松本麻美

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