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シカゴ Belmont Avenue の思い出(1/4)

3月も終わりというのに、シカゴは氷点下。風の強い街で知られているだけに、寒さはひとしおでした。仕事が終わり、ふと久しぶりにミシガン湖沿いをドライブしてみようと思い立ち、高層ビル街を北へと抜けます。やがて、右手に風に煽られて慌ただしく波立つ湖畔が広がります。湖といっても、五大湖の一つ。大きくて向こう岸は見えません。陽は少しずつ傾き、家路に急ぐ車も増え始めていました。

しばらく走ると、Belmont Avenue への出口の標識が目にはいります。ふと懐かしさがこみ上げます。その昔、書籍のセールスマンをしていた頃、その通りにあった戸栗商店 Toguri Merchandise というお店に立ち寄っていたことを思い出したのです。久しぶりにとそのまま Belmont Avenue へとハンドルをきりました。

80年代、そこに行くと、日本に昔あったような雑貨屋さん、あるいは万屋 (よろずや) さんの香りが店内に漂い、日本の食品やお線香、さらには日本の食器や生花の道具まで、様々なものが売られていました。私は、Toguri に日本を紹介する英語の書籍を販売しに行っていたのです。

当時、シカゴにはこうした店は殆どなく、Toguri は日系人や駐在員だけではなく、アジアの文化に興味をもつ人々も集っていました。しかし、ここが太平洋戦争と戦後が深く関わった場所だと知っている人はどれだけいたでしょうか。あの有名な物語を知っているアメリカ人はいても、まさかここがと、殆どの人が思っていたのではないでしょうか。

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