見出し画像

妹への懺悔

三つ下の妹がいる。姉の私が言うのもなんだが、見た目も美人で健気で、努力家でいい子である。妹とは大人になった今、仲良く愚痴を言い合ったり、一緒にでかけたりする関係であるが、子供の頃はけんかばかりしていた。
 あれは高校生の頃だったか。どういう経緯ででかけたのかもう覚えていないのだが、二人でショッピングモールに出かけた日のことだった。お昼時。どのお店も混んでいて、お昼ご飯はどうしようと悩んでた。なぜそのときイライラしていたのか、何にそんなに腹を立てていたのか全く覚えていないのだが、とにかく私は機嫌が悪くぶすっとしながらすぐに入れそうな店を探して歩いていた。遅れて着いてきていた妹は、私の態度の変化に戸惑っていたようだった。当時の私はそんなことはお構いなしに、妹を置いてすたすた歩いた。
 たまたま列が短かったミスドに並んで、妹にお盆を持たせ自分が食べる分だけを取り、先に席に座った。しばらく経って会計を済ませた妹のお盆の上には飲み物の紙コップが二つ。
「飲み物いるかなって」
 それを聞いた瞬間に、私の中の何かが解けた。イライラしていた気持ちがどこかに消えた。その後は嘘みたいにいつも通りの自分に戻って食事をした。あの後、何を買ったのかどんなお店に行ったのかもう全く覚えていない。でも、このお昼のことだけは忘れることができないでいる。
 妹の戸惑いや自分の態度の理不尽さを思い出しては、なんであんなことをしてしまったのだろうと今でも罪悪感と後悔の念にさいなまれる。妹よ、あなたはきっとこの日のことを忘れていると思うけれど、あのときは本当にごめん。そして私のことを考えてくれて、思いやってくれてありがとう。飲み物をどんな気持ちで選んでくれたんだろう。本当にごめん、私はこの日のことをずっと覚えていくよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?