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頭の上の小さな宇宙

雨の帰り道。坂道を下って家路へ急ぐ。雨に濡れないように上着を着込み、両手でしっかりと握った傘で顔まで隠して早足に。見えるのは交互に動く私の靴。みぎひだり。同じ靴でも、靴紐のゆがみや足先の汚れやべろの形が少し違う。水を蹴飛ばしてしずくが跳ねる。

一瞬ぱっと足元が照らされた。それは轟音と水しぶきを残して走り去る。照らされたそのとき、青い空が地面に映し出された。傘を越しに空を見る。何もない。真っ暗な雨の曇り空。

靴の先とズボンを濡らしながらまた歩く。時々頭の上から光が振ってくる。見える青。光の下でもう一度見上げてみた。まるで星を散らしたような傘の白い水玉模様。下には広がる小さな星空。

私は私だけの小さな宇宙の中をぽつりぽつりと進んでいった。

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雨の日をたのしく

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