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「なんで漢字を覚えないといけないの?」への私なりの答え

塾講師だったころの思い出を細々とつづっています。

中学受験のクラスでは、どの学年にも漢字テストがあった。毎週範囲が決められ、授業内でテスト。その場で答え合わせをして、間違い直しが宿題。月末になるとその月行った漢字テストから必ずいくつか出題されて、そこでも点数がつけられる。
暗記が得意な子であれば、漢字は得点源なので喜んで書くのだが、必ず苦手な生徒もいる。算数の計算をするのや戦国武将を覚えるのは好きだけど漢字をただ覚えるのは嫌い。めんどくさがりで何度も漢字練習したくない。字が汚いからそもそも書くのが嫌だ。そんな生徒も少なくなかった。

時々そんな漢字アレルギーの子どもたちから尋ねられる。「なんで漢字を覚えないといけないの?」と。

私は、あくまでも”進学塾のセンセイ”で、生徒たちを志望校に合格させることが仕事であり使命だったから答えはただ一つ。
だれでも覚えるだけで点数を取れるから。それが答えだった。

国語の入試問題というのは、中学受験・高校受験・大学受験どれも大きく変わることはない。文章問題と漢字・文法。変わるのは文章の難易度だけ。漢字や文法は知っていれば誰でも点数が取れるところなのだ。
文章問題は、私も頭をひねってできるだけ解き方をかみ砕いて、どんな問題でも解けるような解法の一般化を図るが、それでも例外は出てくるし、文章との相性もある。なかなか点数を安定して取るのは難しい。

しかし、漢字はそうではない。どれだけ苦手意識があろうと、何度も何度も書いて読んで出会っていれば頭のどこかに残る。それをテストで書くだけで1点や2点になる。受験では小さな点でも積み重ねれば合格につながる。ただ一文字覚えただけで、もしかしたら憧れていたあの学校に入れるかもしれない。そう考えたら頑張って覚えようと思えるのではないか。

そんな話を真剣に、本気で話すと、子どもたちは受け取ってくれる。
あの頃必死で漢字を覚えていた生徒たちの頭の中に、今でもあのたくさんの漢字たちがどこかに残っていてくれるといいなと思う。

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