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『形而上学入門』フランシスコ・ペレス

本書はまさに形而上学「入門」である。
一般に「入門」と名のつく書籍は、難解な概念をわかりやすく説明するために多少の曖昧さは許容される向きがあるが、本書にはそういった「妥協」はない。ただ、初学者が全く歯が立たないような内容ではなく、身近な例えを用いながら存在についての問いという「根源的な問い」に正面から迫っていくため、読後はこの本を足がかりにして次のステップへと進むことができるだろう。

本書の内容だが、各々の存在者の中に底通する共通性を見据え、表面に顕れる違いを捉えながら、そこから存在者を浮き彫りにしていく。そして、この現実の世界から出発し、一つ一つ論理的に考察を進めながら、最終的に存在の究極的根拠として神へと到達する。神の存在証明であるこの章は、神を単なる想像の産物と考えている人たちに一度は読んでもらいたい箇所である。

このように存在の究極的根拠(絶対者)として神を置いたあと、絶対者と万物との関係について、有限と無限、善と悪の観点から論じられ、最後に宇宙の秩序に言及した後、「むすび」へと繋がっていく。ここまでで恐らく形而上学という学の奥深さと魅力が読み手にしっかりと伝わってくるのではないだろうか。

読了後にもう一度読み返して理解を深めるのも良いだろうし、プラトンやアリストテレス、ボエティウスやトマスの著作に進むのも良いかも知れない。出会えて良かったと思える一冊だった。

本書は背表紙には何も書かれておらず、大学の図書館で偶然手に取って借りてきた本。市販本ではないのか出版社ではなく大学名の記載で、出版年は1979年。著者ご本人からの寄贈とのこと。絶賛しておきながら市販していないという結末で申し訳ありません。

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